立ち去った中井さんを追い、

ドアを開けるとそこにいたのは彼だけだった。

 

 

え?あれ?支社長は?

 

 

彼の隣にある私のデスクに歩みながら問いかけた。

 

 

 

今入れ違いで出ていきましたよ。

とりあえず簡単に事情報告だけしときましたけど。

 

 

あぁ、そう。

 

 

椅子に深く腰掛けると、

ようやく一息ついた気がした。

 

 

 

ちょっと怒ってましたよ。

 

 

驚いて隣を見やった。

 

 

なんでびっくり

 

 

うちの桜井を使いやがって。

と。

 

 

なんだ(笑)

私に怒ってんのかと思った。

 

 

 

度々前の支社との絡みが出てきてわかりにくいので、

今後私たちが前いた支社をA支社、今私と中井さんがいるのをB支社としますね。

 

A支社とB支社は同じビルの中にある姉妹店のような感じですが、

それぞれに支社長がいて、独立しているので業績も別々。

 

支社長としては、自分の所の部下を使われると面白くない。

 

ただ、姉妹店なので協力はお互いに必須なことも否めないため、

大きな声で文句は言えないっていう(笑)

 

 

でも、恩着せておくに越したことはないでしょキョロキョロ

 

 

わかってるけど、

気に入らないんですよ。

支社長の気持ちも分からないでもないですし。

 

 

彼の珍しくかわいい一言に、

口元が緩んだニヤリ

 

 

ちゃんと帰ってきましたよニヤリ

本籍地に笑

 

 

そういうと、彼は軽く失笑しながら、

 

 

はい。

おかえりなさい。

お疲れ様でした。

 

 

と言った。

 

 

 

ただいま。

疲れましたタラー

 

 

 

 

そう言った私の目を、

ゆっくりと頬杖を突きながらじっと見た。

 

 

 

おっさんと女子だけじゃなくて、

後輩男子もオールラウンドですか。

 

 

厳密には同い年、少し年上の男性には力及ばずなんで、

オールラウンドでは、ないね笑タラー

 

 

惚れるなんて言われて調子乗ってません?

 

 

かわいいな、とは思うよ。

 

 

桜井さんは、庇護欲が強めなんだよな。

 

 

確かに、なんとかしてあげないととは

思うタイプなのかもしれないと最近思ってる笑い泣き

やだな。やっかいだわ。

 

 

疲れそう。

 

 

ね!

だからほんとはそういう性質いらない。

 

 

 

なんだそれ(笑)

 

 

してあげなきゃ、と思って動くんだけど、

どっと疲れるんだよね。

だからさー・・・。

 

 

 

だから?

 

 

 

一瞬口に出すか迷ったけれど、

結局は口から滑り出た。

 

 

 

や、うん。

わたしはあなたといる時は、

ノーストレスですごく楽です。

 

 

 

面食らったような顔を一瞬した。