報告はいつするんですか?

 

 

安定期入ってからかな。

 

 

じゃあまだしばらく先ですね。

 

 

そうだね。

 

 

もうお酒飲めないじゃないですかニヤリ

 

 

 

揶揄うような目でちらりと覗き込まれる。

 

 

そうなの。

禁煙禁酒ニヤリ

 

 

 

 

 

 

安定期まで報告しないと言うのは、

思ったよりきつかった。

 

 

営業で接客中、つわりが辛くて何度も吐きそうになったし、

多少の重いものを運ぶのも、お腹が張って苦しい気がした。

 

 

身体に負担がかからないようにと極力色々コントロールしてみたけれど、

ひと段落して椅子に座ると、お腹が張っているのが分かった。

でも言いたくなかったキョロキョロ

甘えてると言われるのが嫌だったし、

気を遣ってもらって感謝をすることに、気を遣う真顔

 

 

 

ある時、

上司と検討していた案件で過去の資料の確認が必要になった。

資料室へ行き、該当書類の量を見て怯んだガーン

 

 

わー・・・。

まじかー・・・ガーンガーン

 

 

これでもかとぎっしりtとファイルがつめられた段ボール4箱。

 

 

台車使うか・・・ガーン

 

ところが資料室内にいつも置いてある箇所に、

台車がないえーん

 

 

誰が使ってるのーえーん

1箱ずつ、持っていくしかないか・・・えーん

いけるかな?

いける?ほんとに?

 

 

不安に思いながらも、

上段に乗っている段ボールに手をかけた。

 

 

ズシリと腕に重みがかかった。

 

 

ガーン

思ったより重い笑い泣き

 

 

なるべくお腹に力を入れず、

腕だけの力で・・・・。

 

そうっと取り出そうとしたとき、

 

 

後ろから両手が伸びてきて、

すっと重みがなくなった。

 

 

バカなんですか真顔

 

 

声に振り向くと、

中井さんが後ろから段ボールを支えてくれていた。

 

 

ちょっと・・・バカって泣

 

 

え。バカですよね。

何してんですか。

こんなの一人で持てるわけないでしょ。

 

 

 

大丈夫だよ。

といつもなら言うところ、

 

 

・・・ありがと。

 

 

と素直にお願いした。

 

 

中井さんは持っていた段ボールを床に降ろすと、

 

 

・・・あまりの馬鹿さ加減に、

こんな低俗な言葉しか出てきません。

人にバカなんてそうそう言う機会ないですよ・・・?

 

 

はは・・・。

 

苦笑いをした私に、

 

 

意地張んのはあなたの性質だからどうしようもないとはいえ、

自分のことだけ考えてんのはもうだめですよ。

 

 

と強めの口調で苦言を呈した。

 

 

わかってるけど。

 

 

わかってません。

無理をするな、と言ってるんです。

 

 

うん、わかってるよ。

 

 

 

そもそも前から思ってましたけど、

人の流儀に口出しするのも、と思って黙ってましたけど、

これって桜井さんの仕事じゃないでしょ。

なんで後輩に振らないんですか?

 

 

えー・・・・。

 

 

本音は、「信用できないから」。

自分で触ったものしか、信用できない。

 

 

坂本さん(上司)は桜井さんに資料を持って来いって言ったんじゃないですよね。

当然、後輩に頼むと思ってるはず。

 

 

営業に出る前の研修生がいるのだけれど、

代々いわずもがなで雑用係となっている。

 

 

後輩にこういう雑用振れないなら、

安定期前でも上に報告した方がいい。

 

 

と更に厳しい口調で続けた。

 

 

 

・・・。

おっしゃる通りです・・・。

 

 

大体、そんな身体じゃなかったとしても、

一人でこれは無理でしょ。

誰か呼べばいいだけの話でしょ。

なんでそんなに頼るの嫌がるんですか。

 

 

・・・借りを作りたくないの。

それ位やれよって思われるのが嫌。

 

 

わたしがそう言うと、薄目で怪訝な顔をした。

 

 

ほんと・・・呆れるくらい意地っ張りすね。

 

 

 

知ってる。

でも。

上の子の妊娠の時に、

当時の上司が気を回してくれて、

周りの人たちが重いものを持たせないようにしてくれたのね。

 

 

当然でしょうけど。

 

 

そういうのはね。

男性の方がより優しいの。

逆に女性は厳しい。

特にすでに出産経験のある人は。

 

 

普通逆じゃないですか?

 

 

私の時にはそんなことしてもらえてなかった。

って感覚なんだと思うけど。

「妊娠は病気ではないですからね。」

ってボソリと呟かれたことが忘れらんない。

 

 

うー・・わー・・・。

誰か聞いても?

 

 

田中さん。

 

 

節度ある女性なら言わないのかもしれないけれど、

わたしは田中さんが大嫌いだから、

あっさりと名前を口にした。

 

 

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懐かしいな。

 

 

あー・・・。

あのひとか。

 

 

納得顔の彼はその後ぷっと噴き出した。

 

 

なに?

 

 

や、だって、

田中さんと桜井さん、

絶対めちゃくちゃ相性悪そうだなって(笑)

やっかまれそー。

しかも桜井さんも煽りそう(笑)

 

 

煽った気はないけど、

相当相性悪かったのは確かね。

 

 

開き直って暴露した。

 

 

今のうちの支社には、

桜井さんにそんなこと言う人いないでしょ。

田中さんも桜井さんを敵に回して後悔してますよ、きっと。

 

 

どうだろう真顔

 

 

っていうかですね。

そもそも桜井さん、めちゃくちゃ非力でしょ。

そのほっそい腕で何が持てるってんですか。

無理する意味、ゼロです。

 

 

スパンと言い切る彼にわざと顔をしかめた。

 

 

それを見て中井さんは笑い、

 

 

あとこれとこれ?すか?

 

 

と次々と必要な書類の箱を取り出し、

細身の体に似合わず軽々と持ってみせた。

そういえば前にもそう思ったことがある気がするな。

 

 

中井さんて、

細いけど意外と力あるのねー。

 

 

と感心して言うと、

 

 

ドヤ顔で、

 

まー、桜井さんよりはニヤリ

 

と笑った。

 

 

けど、本当に。

桜井さんの無理は怖いです。

私はいつでもフォローできますけど、

それこそ甘えてると思われるの、嫌でしょキョロキョロ

 

 

うん・・・。

 

 

なら、ちゃんと自分で管理してくださいえー

なんかあったらどうするんですか。

もうあなたの傷つく顔見るのは、ごめんですよ。

 

 

 

ん。

 

 

彼といると子ども扱いされてほっとする。

子供のように甘えても全然へっちゃらでコントロールしてくれる。

怒られても、

窘められても全然平気。

 

多分、器が大きいのだ。

それか相性がすごくいい。