悶え死んでいるわたしを見て、

ふっと笑う。

 

女とか正直めんどいって思ってたんだけど、

そんな悪くないな。

 

清田が軽く発したその一言に、

それはもう嬉しくて嬉しくて、

”悪くない”ということは付き合ったことを後悔してないってことで。

あまりの嬉しさに胸がギュっとなったオーナメント

 

 

ところで、

パーソナルエリアのワードが出たからついでに言っとくけど。

 

 

なに?

 

 

サクラは距離取ってるつもりかもしれんけど、

知らない間に近づかれてるよ。

 

 

え??いつ?

 

 

わりとよく。

 

 

え、やだ。

清田にそんな風に思われたくないんだけどえーん

誰に?

 

 

あー・・・。

 

 

一瞬答えるのを迷うそぶりを見せたけれど、

 

 

んー。

サトル。

 

 

とあっさりと答えた。

 

 

え。

・・・ガーン

 

 

沈黙と気まずい雰囲気。

 

 

や、でももうサトルとは普通に友達な感じでアセアセ

あっちも全然そんな雰囲気ないし、

清田の勘違いじゃなくてアセアセ

 

 

・・・。

あー・・・。

なんかちょっと。

イラっとすんな真顔

 

 

滝汗!?

ごめん!

勘違いって言葉おかしいねアセアセ

 

 

慌てて言葉を取り消した。

 

 

違う。

そうじゃなくて。

”サトル”。

 

 

はっハッ!!

名前!?

名前か!!!!アセアセ

 

 

あー・・・・。

っと・・・。

えー・・・。

 

 

さっきまで半分冗談で言ってたけど、

気になりだしたら、

ほんとに気になるようになってしまったわ。

 

 

そう言うと、

清田は私にじっと視線を合わせてきたキョロキョロ

 

 

お前の彼氏は誰や。

 

 

心臓が大きくはねた。

 

 

・・・もー・・・この人は・・・笑い泣き

顔を枕に埋めて叫びだしたいくらいだった。

どんだけ私を胸キュンさせるんだ・・・ふんわり風船星乙女のトキメキ

 

 

元々の清田は言葉が荒い。

小学生のころまで海の方の育ちなので、

海の方言がある。

学校にいる時はそんなでもないけれど、

当時の地元の友達と電話しているときは、

かなり荒い言葉を使う。

最近は時々、わたしにもポロリとこぼすようになっていた。

 

ただし、言葉使いが荒いだけで、

表情や口調は全然荒くない。

淡々と方言を使っている。そんな感じ。

 

 

「清田だよ。」

と言いたいけれど、名字呼びはできないから、

そっと人差し指で清田の腕に触れた左差し

 

 

そうや。

名前で呼べよ。

 

 

リュ・・・リュウ・・・アセアセ

 

 

聞こえん。

 

 

ワントーンボリュームを上げて、

もう一度呼んだ。

 

 

リュウ・・・。

 

 

そうや。

サトルはまだお前のことが好きやぞ。

この前、思わずって感じでお前の後ろ髪触ってた。

触るってほどでもなくて、触れたって感じやな。

 

 

嘘、さすがに気づくよアセアセ

 

 

気づいてなかった。

サクラは無意識の無防備が多すぎやぞタラー

 

 

そんな自分でも気づかない所で・・・

バリア張れないよえーん

 

 

違うわ。

そもそも、

髪に触れられるような距離を許すなって言ってんの。

サクラはな、パーソナルエリア過敏やけど、

サトルとはえらい近いぞ。自覚ある?

 

 

えぇ・・・そうかなアセアセ

 

 

確かにサトルにはかなり無防備かもしれない。

信頼してるし、安心してる。

私自身が男として見ていないから、尚更かもしれない。

 

 

そうや。

そら、あの距離感許してりゃぁ、

サトルも困惑するわタラー

 

 

そうか・・・。

気を付ける・・・ショボーン

 

 

苦言を呈されたことにシュンとすると、

ポンポンと私の頭に触れた。

 

 

お前は素直なところもかわいーな。

別に怒ってないよ。

元々サトルと仲いいのは知ってるし。

ただ自覚を持ってた方がいいな。

 

 

うん。

 

 

嫉妬を、少しでもしてくれたのかと思った。

けど、別に怒ってないと言うし、

実際に何とも思ってはいなさそうだった。

 

 

寂しいなと思ったショボーン

 

 

リュウ・・・。

 

 

ニヤッと笑った清田は、

 

 

おぅ。

ようやく普通に呼んだなーニヤリ

 

と答えた。

 

 

リュウ、好き。

ほんと、好き。

・・・好き。

 

 

寂しさをかき消すように、

いつになったらこの人は私の事を恋愛対象に見てくれるのか、

不安をかき消すように、

呟いたショボーン

 

 

するとリュウは私の心中を知ってか知らずか、

そっと私の手を引き自分の傍に引き寄せた。

 

手に触れられるだけで、

心臓が熱くなる。

もっと近くに行きたい。

わたしにもっと欲張って欲しいショボーン

 

 

ん。

ほんまにお前は素直でかわいいのぅ。

 

 

「俺もだ」とは言ってくれないリュウに、

不満は何も言えなかった。

それでいいと言ったのは他でもない私なのだから。