何の涙ですか・・・?

 

強引な行為とは反対に、

問いかけはひどく優しかった。

 

罪悪感。

自分の低俗さ。

でもそんな低俗な部分があることを、

本心では別にいいやと思っている軽薄さ。

 

口には出せず、しばらく黙っていた。

 

そんなわたしの感覚を恐らく中井さんは知っている。

彼も低俗で軽薄だから。

そしてそんな彼をわたしは嫌いじゃない。

 

桜井さんは、

岡田といても苦しくなるだけですよ。

きっとこれからどんどん苦しくなる。

 

 

 

中井さんの腕に囲まれたまま、

問いかけた。というか、呟いた。

 

 

なんで、こんなことするの。

 

 

 

少し顔を離すと、

 

なんでか?

そうですね。

ちょっと岡田の事、甘く見てたからですかね。

 

と答えた。

 

 

桜井さん、岡田に結構ふらついてるでしょ。

 

 

前から好意はあるって言ってたはずだけど。

 

 

そんなんじゃなくて、

浅野さんと上手くいってないでしょ。

 

 

・・・。

そんなことないよ。

 

 

気づかれるはずはない。

私とコウが一緒にいるところは見られたことはないし、

誰かにコウの話を振られても至って普通に返していた。

 

 

でもそれ以外考えられないんだけどな。

前は岡田の事は好きだと言いながらも、

絶対的に浅野さん以外余地はなかった。

今は違うでしょ。

 

 

違わないよ。

前と同じ。

 

 

空気感、違いますよ。

あんなに浅野さんだけだった人が隙できてるなんて、

うまくいってないとしか考えられないな。

 

 

前と変わらない。

同じだよ。

 

 

前に割り切って付き合うには、

岡田とは合わないって言いましたよね?

 

 

コクリと頷いた。

私もそう思っていたから、よく覚えている。

 

 

割り切って付き合うのは岡田は無理だって思ったから、

ほっといてもその内終わるだろうって思ってました。

でも、割り切らないのなら、

私にとって岡田は手強い。

だから、です。

 

 

え?

 

 

強引に行かないと、

攫ってかれる、と思ってるから。

自覚してます?

桜井さん弱ってますよ、それも多分結構。

 

 

自覚、十分してるよ。

 

とも言えず、黙った。

 

 

・・・。

 

 

 

判断が鈍ってます。

仮に今ここで岡田を選んだからって、

一生岡田の事、好きでいられます?

 

 

はっとした。

 

永遠の私の命題。

ずっと同じ人を好きでいられないこと。