前回の乳管のつまり、白斑などのお話に引き続き、今回はそれがひどくなったケース、乳腺炎についてお話します。
乳腺炎はふつうは良性の自然治癒する感染症で授乳中の赤ちゃんにもほとんど影響がないものとして知られています。
産褥期の乳腺炎の最初の症状としてよくみられるのは疲れや倦怠感、限局性の硬結(一部が硬くなっている状態)、頭痛、インフルエンザにかかったときのような筋肉痛です。さらに、熱、頻脈、硬結部分が赤くなり熱をもつといった症状が続きます。乳腺炎はふつうは片側の乳房の一部、よく外側上部にできやすいと言われています。なぜならそこにほとんどの乳房組織が集まっているからです。しかし他の部分にできることもありますし、一度に数箇所に起こったり、乳房の大部分を占める大きな硬結ができることもあります。
乳腺炎は出産後4~5ヶ月によく起こりやすいですが、長く母乳をあげているお母さんの約3分の1は赤ちゃんが6ヶ月を過ぎたあとにも経験したことがあるようです。乳腺炎のリスクは過去に母乳育児をしたことがある人、特に前回も乳腺炎を起こしたことがある人に高めのようです。
上に述べた症状は約2~5日ほど続きます。また乳房の痛みや赤みは2,3日をピークにその後5日目までには元にもどる傾向にあります。
原因は以下のことが考えられます。
*ストレスや疲れ:これは乳腺炎を引き起こす大きな原因です。普段の疲れを通り越した疲労困憊といえる状況や普通の育児ストレスを逸脱した状況(例えば家族や季節のイベント事の前後、睡眠時間の減少など)が考えられます。
*乳首の亀裂、痛み:傷口から感染が起こり乳腺炎を起こすケースは出産後数週間にみられるようです。(しかし乳首表皮の傷が乳腺炎の前提条件とは必ずしも言い切れませんが。)
*乳管のつまり、白斑(第3回の項でお話しました)
*母乳の産生が過多、授乳回数が少なくなった:乳管がつまりやすく、乳腺炎を経験した人が多いようです。
*母乳のうっ滞、硬結:頻回に授乳していた人が急に授乳回数が減った場合、母乳が長時間乳房に溜まった状態になるためそれが乳腺炎につながる
ることが考えられます。母乳には通常バクテリア、細菌が含まれていますが、乳腺炎を起こした場合は黄色ブドウ球菌の存在が医学的にあきらかになっています。
乳腺炎歴のないお母さんが一日6回以下しか授乳をしなかった場合、10回もしくはそれ以上一日に授乳するお母さんに比べて乳腺炎になるリスクが5倍であったという報告があります。
*その他:乳房の外傷、きついブラジャーや寝るときのポジション、搾乳機、お母さんの栄養不足、激しい運動などが乳腺炎を起こす要因とも言われています。
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<乳腺炎になったときの対処法>
乳腺炎の治療法は、基本は授乳を続けることです。乳腺炎中は母乳の成分が変化するため味の変化で赤ちゃんが受け付けないことも時々ありますが飲ませて全く問題ありません、というよりは治癒のために積極的に飲ませてください。一日少なくとも8~12回ほど授乳をしましょう。
また温湿布(お湯でぬらしたタオル)を患部から乳首に当てるとよいといわれています。
熱、痛みは対しては解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)を使ってよいです。
そしてベッドでよく休みましょう。
再発を繰り返す、症状が長く続く場合は医師の訪ね適切な抗生物質を処方してもらいましょう。
<乳腺炎の予防法>
疲れのサインは目に見えないものだからこそ見逃されがちですよね。
家事などは完璧にこなすのではなく、優先順位を決めて気楽に行いましょう。またできるだけ家族やヘルパーなどの手を借りましょう。生まれたての赤ちゃんを見に訪問客がたくさん訪れる時期ですが、日にち時間を決めて来てもらうなどストレスにならないように調整しましょう。
休養がしっかりとれるよう電話はボイスメールを使う、Eメールは無視する、招待はことわるくらいで!笑。また日中は赤ちゃんと一緒に休むようこころがけましょう。また水分をしっかりとってから休んでください。
乳房が緊満したり、授乳が何らかの要因でスキップされた場合は手絞り、搾乳機などで搾乳を行い、長く母乳が乳房内に残らないよう努力しましょう。
ブラジャーはアンダワイヤーがなく締め付けないものを着用しましょう。
白斑、詰まった部分がまだ真新しい時期は授乳中に乳房の硬い部分を優しくマッサージすると改善することがあります。
また、乳房に硬い部分ができたり白斑や出口が詰まった場合はほったらかしにせずに頻回授乳によって対処しましょう。