ここが学校の構内だということを一瞬にして消し去る大音量。
人垣が分厚い壁となって、コンサート会場を形成していた。
厚い壁の中央はぽっかり空いていて、そこから溢れんばかりの光が放たれていた。
仁菜はその光景とサウンドに鼓動が激しくなるのを覚えた。
「きゃあ。何、何?ゲリラライブ??」
真衣は飛び上がって仁菜の腕をひっぱると、その人垣めがけて走り出す。
仁菜は腕を引かれるまま、桜の絨毯を走った。引っ張られるままに人垣を抜けて前へ前へと進んでいく。
「ちょ、ちょっと真衣ちゃん、腕が痛い」
仁奈の言葉がかき消されるくらいの大音量と、興奮している生徒たち。その空気に感染していくように人が増えていく。
「うっわ!見て見て、ニーナ!かっこいい!」
「えー?!」
こんなに近くにいてももはや大声を出さなければ声も聞き取れない。溢れんばかりの人波に押されながら何とか前を向く。
「…」
とっさには声が出なかった。真衣が音に乗るように体を動かしている。目の前にはギターやベースをかき鳴らしたり、ドラムを力強く叩いている男子生徒。そして一際目立つ中央にマイクスタンドを持って歌っている人物。
「歌うまーい!演奏はまあまあかな。ねえ、私もここに入りたい!」
真衣が何かを言っているけど、ドラムの振動が胸を突いてうまく言葉にならない。
「ようこそ!県立M高校へ!よかったら、楽しんでって!!
次、MADONNAのcelabration!」
中央のすらっとした容姿のアッシュグレーの髪をした男が叫ぶ。
Beatles、U2、COLDPLAY、時にはEXILE、ケツメイシ。
ジャンルも邦楽も洋楽もめちゃくちゃだが楽しそうに歌う彼らにつられて仁菜も体が自然と踊りだす。
人を惹きつける圧倒的な存在感とカリスマ性。
それに歌の合間、人を乗せるのがうまい。
すでに後ろは人垣の地平線がわからないほどの人数になっていた。
「やべーーー!楽しすぎ!!!」ギターの男が飛ぶ。
仁菜も真衣も声にならない声で叫んでいた。
盛り上がりが最高潮に達したとき、
「じゃ、最後にの曲になったけどー」
言いながら、ボーカルがギターにウィンクした。
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