小説3の2
彼は売れることに抵抗があった。大好きなミュージックが商業、産業的になって行くのが嫌だった。売れるために流行りに迎向し、誰もが模倣した音楽しか作らなくなった。
カナリアや猿や犬のように芸を模倣させ、躾られていく音楽シーン。それが憎かった。
彼は、流行に流されず、自分らしい音楽を作っていった。そして産業や商業的な音楽を売っていたミュージシャン達を批判していた。
彼の音楽性は最初否定され、悪魔というレッテルを貼られていた。蔑視されたこともあった。
しかし人気が上がっていくと、皮肉にも、彼はカリスマとして持ち上げられ祭り上げられていく。
彼は自然に新たな曲を作ることに興奮しなくなり、愛着がなくなっていった。そして、このライブでは、その愛着さえもてなくなった曲を歌っている。ファンが熱狂し興奮している。
ファンを騙している。裏切っている。その思いだけを強くしている。
そして、また歌っている。
カナリアや猿や犬のように芸を模倣させ、躾られていく音楽シーン。それが憎かった。
彼は、流行に流されず、自分らしい音楽を作っていった。そして産業や商業的な音楽を売っていたミュージシャン達を批判していた。
彼の音楽性は最初否定され、悪魔というレッテルを貼られていた。蔑視されたこともあった。
しかし人気が上がっていくと、皮肉にも、彼はカリスマとして持ち上げられ祭り上げられていく。
彼は自然に新たな曲を作ることに興奮しなくなり、愛着がなくなっていった。そして、このライブでは、その愛着さえもてなくなった曲を歌っている。ファンが熱狂し興奮している。
ファンを騙している。裏切っている。その思いだけを強くしている。
そして、また歌っている。
小説3の1
光を浴びている。
喝采を浴びている。
それは、自分の功績を、惜しみ無い賞賛だった。
悲鳴にも似た歓声はとどまることもない。舞台から彼はファンを見下ろしている。この光景は、多くのロックンローラーがロックというミュージックに魅せられ、求める光景だろう。多くのロックンローラーの夢を実現した彼は、感極まることはなかった。達成感もない。
虚無感が胸の中で広がる。宇宙に点在する星の気持ちだった。
孤独感。
そして苛立ちと申し訳ない気持ちだった。
「サンキュー」
彼は、ファンに向けて感謝を込めた。ヒロという彼がつくりあげた化け物の仮面を剥ぎ、素の表情に戻っていた。
歓声が膨らみ、一人一人の声が一つになり大きな声があがる。
ヒローというファンの声が、あちらこちらからこだまする。
葛藤がある。ファンが求める音楽ばかりを作り、それとともに彼が求める音楽性から程遠いところに来ている。知らずうちに、ここまでのファンが増えた。ファンの興奮が膨らむにつれ、罪悪感だけが強くなる。
五年前は、一番後ろにいるファン一人一人の顔を判別出来たし、互いに距離がなく、とても近い関係だった。
喝采を浴びている。
それは、自分の功績を、惜しみ無い賞賛だった。
悲鳴にも似た歓声はとどまることもない。舞台から彼はファンを見下ろしている。この光景は、多くのロックンローラーがロックというミュージックに魅せられ、求める光景だろう。多くのロックンローラーの夢を実現した彼は、感極まることはなかった。達成感もない。
虚無感が胸の中で広がる。宇宙に点在する星の気持ちだった。
孤独感。
そして苛立ちと申し訳ない気持ちだった。
「サンキュー」
彼は、ファンに向けて感謝を込めた。ヒロという彼がつくりあげた化け物の仮面を剥ぎ、素の表情に戻っていた。
歓声が膨らみ、一人一人の声が一つになり大きな声があがる。
ヒローというファンの声が、あちらこちらからこだまする。
葛藤がある。ファンが求める音楽ばかりを作り、それとともに彼が求める音楽性から程遠いところに来ている。知らずうちに、ここまでのファンが増えた。ファンの興奮が膨らむにつれ、罪悪感だけが強くなる。
五年前は、一番後ろにいるファン一人一人の顔を判別出来たし、互いに距離がなく、とても近い関係だった。
小説2の5
警察官は、小さく微笑んだ。
「結局。日頃、自分から歩み寄ろうっているつもりだけど、一線引いてるということを発見させてくれたんだ。そしたら、楽になったんだよ。そっから大ファンさ」
「そうなんですか」
桐森は苦笑していた。時計を見たら、三十分経っていた。大学を遅れることに、桐森は何の抵抗もないが、些か寒くなってきた。警察官は熱を持ち、熱くなってきている。
「本心に従いたいよ。本音は皆と仲良くなりたい。でも、なかなか、本心に忠実にって難しい。気味も、もっと、本心に忠実になったほうがいいよ」そこで、思い出したように、「名前と学校と電話番号と住所教えて」
素直に教えると、「最近、警察官を装った空き巣が多いから気をつけて。まあ、それは、どうでもいいんだ」
これは長くなりそうだという予感があった。警察官はなおもヒロの話をしたいと思っているに違いない。困っていると、警察官は急に硬直した。
片頬をひきつかせて痙攣させている。ひっひっひっという声を漏らしている。何事かと足元を見ると、猫が警察官の右足に頬擦りをしていた。
桐森は怪訝に思った。
そして、一つの答えを導き出した。閃いたように瞳を大きくした。警察官は、察したのか、「助けて」と声を震わせ、泣き声を出す。
ただ、猫の表情は幸せそうで、どうしても追っ払おうという気持ちにならない。また桐森は閃いた。
「そうなんだ」と思わず声を出した。
結局、警察官を助けたくないのは、関わりたくない。逃げたいという気持ちがあるからだという本心がわかり、忠実に本心に従うことにした。
「結局。日頃、自分から歩み寄ろうっているつもりだけど、一線引いてるということを発見させてくれたんだ。そしたら、楽になったんだよ。そっから大ファンさ」
「そうなんですか」
桐森は苦笑していた。時計を見たら、三十分経っていた。大学を遅れることに、桐森は何の抵抗もないが、些か寒くなってきた。警察官は熱を持ち、熱くなってきている。
「本心に従いたいよ。本音は皆と仲良くなりたい。でも、なかなか、本心に忠実にって難しい。気味も、もっと、本心に忠実になったほうがいいよ」そこで、思い出したように、「名前と学校と電話番号と住所教えて」
素直に教えると、「最近、警察官を装った空き巣が多いから気をつけて。まあ、それは、どうでもいいんだ」
これは長くなりそうだという予感があった。警察官はなおもヒロの話をしたいと思っているに違いない。困っていると、警察官は急に硬直した。
片頬をひきつかせて痙攣させている。ひっひっひっという声を漏らしている。何事かと足元を見ると、猫が警察官の右足に頬擦りをしていた。
桐森は怪訝に思った。
そして、一つの答えを導き出した。閃いたように瞳を大きくした。警察官は、察したのか、「助けて」と声を震わせ、泣き声を出す。
ただ、猫の表情は幸せそうで、どうしても追っ払おうという気持ちにならない。また桐森は閃いた。
「そうなんだ」と思わず声を出した。
結局、警察官を助けたくないのは、関わりたくない。逃げたいという気持ちがあるからだという本心がわかり、忠実に本心に従うことにした。
