私がレジ係から会長秘書に上がった時から、私は会長の愛人では無いのか?と噂が流れていた様です(私は噂を全く気付きませんでした)

そして店舗を出して貰った事が決定打になりました。


秘書の時、お仕事先の、どんなに立場が偉い方でも私に接する態度に何か違和感を感じていました。

どなたも私には凄く丁寧なんです。


そして不思議な事に私は会長婦人に顔が良く似ていました。

外部の方が間違える時もありました。


私には全く見に覚えの無い事ですが噂は勝手に独り歩きして世間に早歩きして行きました。


私は息子の母親である事が第一で、その為に必死で働いていたので私が女として見られるのが凄く嫌でした。


だからなのか?

系列店のママ達からの風当たりも強くて辛い時期でした。

系列店で顔を合わせて私からご挨拶しても返事が無かったり、いきなり怒鳴られたり、そんな事も多々ありました。


女性特有の嫉妬心でした。

最初は辛かったのですが慣れると平気になりました。

相手にしない方が勝ちなんです。


私は不動産会社の社長さんと待ち合わせをした場所に行きました。


パークホテルのイタリアンレストランで食事をしながら最初は世間話をしていました。


コース料理が終わりデザートが出た時に社長さんが本題を話しました。


「実は第4グリーンビルにクラブを経営している」

「そこのママになってくれませんか?」


そうです。

引き抜きの、お話しでした。


私は正直、驚きました。


お酒を飲めない私がクラブのママにはなれないと思ったからと、私の為に高額の費用を投資して店舗を作って下さり取締役にまで、してくれた会長を裏切る事になるからです。


そのクラブはススキノでは名の通ったお店でした。


多分ススキノで働く様になり一番、悩んだのが、この時だと思います。


クラブにはホステスさんが27名くらい在席していると話していました。


社長さんの条件は

「報酬は月に300万円。新しい着物を10着、作ります。契約金は報酬と同額を用意します。だから是非ママになって私の店に来て下さい」


凄い条件を提示されました。


私は返答に困り

「先ずは、お店を見せて下さい。お返事は、それから」


とお答えしました。


数日後の土曜日に私は少しだけ早く帰らせてもらい、その足で社長さんが待つクラブに行きました。


ドアを開けると左と右に部屋がわかれていて、左はボックス席、右はカウンターとボックス席。


豪華なシャンデリアが天井から下がり歴史を感じるシックな店内を照らしていました。


私は店内が一番、見渡せる席に座りました。


土曜日だからか、お客様は、さほど多くなくて静かな時間が流れました。


ホステスさんを見たりボーイさんを見たり来店されているお客様の客層を見たりしていました。


1時間くらい社長さんと、お話をして私は帰りました。


翌日に母に全ての話を相談しました。


母は義理は確かに大切だけれど、貴女が本当に、やりたい事、貴女を本当に求めている場所で働くのが良いのでは。そして報酬の額に驚いていました。


更に母は、こう言いました。

「ススキノには数え切れない数のホステスさんがいるけれどママになれるのは小指の爪に砂が乗るくらいよ」

と。


そして私は決めました。


−話は続きます−