父も母も人の面倒見の、それは良い人でした。


ある時は家族以上に他人の面倒を見る。

そんな両親でした。


父はヤクザと言う事もあり

義理を大切にして

頼られると断れない性格でした。

しかし、人の良さが時には裏切られて。

それでも頼られると断れない父でした。


母は母で

「姐さん、助けて下さい」

と言われると手を差し伸べる人でした。


家の中にお金が無い時には父に買って貰った大切な着物や高価な宝石を質入れしてまで人の為に金策をしてあげていました。


その血は確実に一人娘の私に引き継がれました。


私も頼まれると断れない性格です。


もう30年以上前に私には好きな人がいました。

特にイケメンでは無く

神戸育ちの彼は関西の独特な色彩感覚でお洒落な人でした。

着ているシャツは、

いつもベルサーチの高級品でした。

時計や身に着けている物はブランド品。

彼が居るだけでその場の雰囲気が明るく穏やかになる、そんな人でした。



遠距離恋愛でしたから彼が仕事で札幌に来た時だけデートが出来ました。

後は電話。

携帯電話の無い時代ですから

好きな時に電話で話す事は出来ません。


逢えない程、逢いたい気持ちが募る恋心


その彼が突然、逮捕されました。

函館市で土地売買の話をしていたのを相手が録音していて。


罪名は詐欺罪です。


私は函館の裁判所にも出向き裁判を傍聴していましたが

何か、良くわからない内容の裁判でした。


しかし判決は実刑。


彼は函館刑務所に収監されてしまいました。


彼は不動産売買を仕事にしていました。

主にパチンコ店を新規で出す時の土地を探し買い取る仕事です。

雇い主はパチンコ屋さんの社長ですから、お金は、うなるほどあります。


今でも彼が犯罪を犯したのか?

私には、わからないままです。


後に彼が釈放されて私に会いに来た時、彼は仕事で一緒にいた人をかばったと話していました。

一緒にいた人は私も良く知る人で、事件当時、結婚して子供が産まれたばかりだから自分一人で刑務所に行ったと話していました。

真相は今でも謎のままです。


裁判所には神戸から彼の彼女だと一目でわかる女性が来ていました。

それを見て私は彼とのお付き合いを止める事にしました。


彼の父親が山口組の英(はなぶさ)一家の創業初代親分。

彼はヤクザではありません。

父親が有名なヤクザの親分。

そんな理由から函館刑務所では刑期満了まで独居房だったそうです。


その時に彼をお世話していたのがS君。


彼からは何通も手紙が届いていましたから中の様子が良くわかりました。

でも裁判所で彼女が居る事を知った私は時々は返事を書きましたが既に恋愛感情は無くなっていたので、覚えているのは

スポーツ新聞を入れて欲しい

との頼みだけは叶えてあげた事くらいです。


その彼から刑務所で世話になったS君が出所するので何かあれば面倒をみて欲しいと

手紙に書いてありました。

既に私の連絡先は話してあると。


−話は続きます−