さすが母は腹が座った人でした。
若い時からヤクザの女房として父に君臨してきただけの技量がありました。
何が起きてもビクともしない。
私にもヤクザの父の血が半分は入っています。
同じ年頃の女性が経験した事の無い世界を幼少期から見て育ちましたから、母には及びませんが何かあっても動じる事は少なかったと思います。
それにしても父は何処にいるのか?
毎日、毎日、考えても私は父の知り合いの連絡先は聞かされていませんから連絡を取る事も出来ません。
朝、会社に行き仕事をする。
会社の仲良しに誘われても
大好きなディスコにも行かず小さな女の子が待つ自宅に戻りお世話をする。
小さな女の子の母親は夕方にススキノの風俗店に働きに行き深夜に戻る。
新しく購入したマンション。
母と二人だけの新生活のはずが何故か知らない女性と女の子との同居生活に変わり。
母に訪ねました
「いつまで二人を置いておくの?」
母は
「小さな女の子が可哀想でしょう?彼女一人なら、とうに出て行ってもらったわ」
と。
面倒をみると決めた強い気持ちと父を一番良く知る母でしたから父が何故その彼女の元を何も言わずに去った気持ちが、わかっていたかの様な母でした。
彼女は母を姐さんと呼び
どれだけ父に惚れていたかを毎日、話ていました。
愛しているでは無くて惚れているのです。
彼女が父に尽くした話から何から何まで聞きたくない事も話していました。
彼女の話をいつも黙って聞いていた母でした。
既に父と離婚して何年も経ち父とは娘の父親と言うだけの関係。
母の感情にはヤキモチや嫉妬は全く無いのです。
そんな生活が何週間か続いたある日。
私は、もしかしたらと
あの人(愛人)に電話をしました。
あの人は私は大嫌いでしたから話もしたくありません。
しかし、背に腹は代えられないのです。
「もしもし〇〇です。パパはいますか?」
と私。
「はい、お待ち下さい」
とあの人。
えーーーっ!
其処にいるのーーーっ!?
札幌にいたのーーーっ!?
父が電話に出る僅かな時間の間
私の頭の中は
えーーーっ!
の感情で一杯になりました。
そして
「〇〇パパだけど」
と父の声が受話器から聞こえた瞬間。
私は腹が立って怒りが収まりません。
いるなら、いると連絡せんかい!(連絡下さい)
何故、デメェの女を我が家で面倒見なきゃならないんだよー
(何故、パパの愛人の面倒を我が家でみなくてはならないのですか?)
テメェの好き勝手にして来た落とし前はテメェでつけろやーっ!
(パパのした事で私達が非常に迷惑してるので何とかして下さい)
頭の中では汚い言葉が次から次と出て来て収まりません。
もちろん父には、そんな言葉を言えるはずは、ありません。
受話器の向こうで父が一言話したのは
「パパはあの人が嫌なんだ」
でした。
なにーーーっ!
そんな事、こっちは知らねぇよーーーっ!
何、何だと!
嫌だと!
冗談じゃないぜー!
そんな簡単な理由で
テメェだけ何も言わずに勝手に女を捨てて出てきやがってー!
あの人(愛人)の元に戻りやがってーーっ!
我が家で、その女性と子供まで面倒をみてることを
テメェは知ってるのかーーっ!
ちゃっかり、あの人の元にいるだとーーーっ!
テメェは、それでも人間かー!
腹が立ち感情が最高値に達した私の頭の中の声。
父には聞こえない声。
「パパとにかく一度会いましょう」
冷静を装い私は電話を切りました。
−話は続きます−