95点。「宿命」とは――命を宿すこと。それは、生まれて来たということ。生きて行くということ。

 

ひとりの老人(緒形拳)が何者かに殺害され、ふたりの刑事(丹波哲郎、森田健作)が事件を
担当し、日本中をかけめぐる。やがて、その事件の影に若き天才作曲家・和賀英良(加藤剛)の
存在が浮かび上がっていく。そして和賀は、交響曲『宿命』を作曲し、自らの指揮・ピアノ演奏で
それを披露しようとしていた…。

 

松本清張の同名ミステリ小説を原作に、松竹の巨匠・野村芳太郎監督が壮大なスケールで映画化した
ヒューマン社会派サスペンス巨編。ドラマの後半は交響曲『宿命』と日本の四季折々の風景をバック
に、事件の謎解きとともに、父と子の逃れられない宿命の絆が浮き彫りにされていき、これでもかと
言わんばかりに観客の涙腺を刺激する。豪華キャストもそれぞれ柄に合った好演をみせてくれている
が、特に丹波哲郎の貫禄に満ちた名演は忘れ難い。日本映画が、日本映画だからこそなしえた、日本
映画ならではの奇跡のような大傑作。
(Amazonより)

 

本作は、ハンセン病(らい病)に対する、科学的根拠の全く無い差別をベースとして描かれた、
父子の「宿命」を題材とした作品である。
 
私が無知だったことは大変申し訳ないが、ハンセン病とは実に長い間、差別の対象となっていた
ようだ。それは、皮膚感染病に類するこの病が、患者の外見を著しく変貌させる上、遺伝疾患
または重度の感染病と考えられてきたことに起因する。日本を含め世界的に隔離政策が行われた
ことも、この悲しい歴史を創造した一因となっている。戦前はもちろん、2001年までも一部
政策は継続され、違憲判決も出ている。

 

しかしあくまでも、本作の主題は「宿命」であると論じたい。彼が父子にとって最大の恩人だった
人を殺害してしまったのも、彼が子を宿すことを極端に恐れたのも「宿命」と呼ぶのが最も相応しい
と思う。

 

本作を至上の作品足ら占めているのは、豪華キャスト陣である。
丹波哲郎、加藤剛、森田健作、島田陽子、山口果林、加藤嘉、緒形拳、佐分利信、渥美清、他。
今では考えることの出来ない、実に豪華な面々と言えよう。

 

私の涙腺が堪え切れなくなったのは、逮捕状を請求するための捜査会議のシーンである。
「かめだ」という東北弁、これだけを手掛かりとして、執念の末に辿り着いた犯人像。必死の捜査で
判明した犯人の壮絶な半生。これを訥々と語る刑事。彼はその悲劇についに堪え切れず、涙する。
(迫真の演技だった。演技では無かったのかも知れない。)
捜査報告の間、皮肉にも鮮やかに彩られる日本の四季、そして重厚に奏でられる交響曲「宿命」