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95点。一言で言えば、アメリカの人種差別問題をテーマにした映画。

とある家庭の長男として育った青年デレクは、ある事件を機にネオナチ思想を掲げる集団に加わる。
そんな中、兄デレクは自宅の車の車上荒らしをしていた黒人集団を射殺。投獄される。
一方、弟ダニーは兄を盲信し、ネオナチ思想に傾倒していく。
それは、読書感想文の課題にヒトラー「我が闘争」を選び、白人至上主義の優越性を唱えるほどに。
そんなダニーに危機感を感じた校長は、彼に特別課題を与える。
与えられた課題は、
「兄について。また、彼に与えた影響と彼が与えた影響をアメリカの社会問題の観点から考察せよ」。
しかし、ダニーは全くやる気がしない。
兄の出所。ダニーは嬉々として兄を迎えるが、兄の様子は変わってしまっていた。
兄の独白を聞きながら、ダニーは先日与えられた課題について考察していく。

理路整然と批評出来そうにないので、思いつくままに列挙します。



1.
まずは弟の変貌ぶり。兄はともかく、弟は話を聞いただけで180度価値観を変えられるものか~?

2.
兄デレク。スキンヘッドだったから全く気付かなかったけど、[ファイトクラブ]の俳優だったんですね~。
彼の演技力の凄さも本作の見どころです!

3.
ネオナチのポスターやタスペトリーを徐に取り外していく兄弟。そこに一切の言葉は無く。
う~ん。象徴的なシーンですね~。

4.
弟ダニーのモノローグをベースに物語は進んでいきますが、
その中では彼らを狂気に駆り立てた元凶、社会・文化などにも焦点が当たります。
…が、要らないエピソードや描写が多々あるんですよね。

5.
兄は刑務所の中で自分の考えを改めます。
しかしそれは自分が妄執していた思想が無意味であったことに気付いたのではなく、
自分が傾倒していた集団もまた、薄汚れて腐っていたということを思い知らされたからです。
…それで良いのか?より危険な破壊願望に発展しそうな気がしたけど。。。

5.
リンカーンが黒人差別問題にメスを入れ、擁護運動が高まり、130年がたった今。
「黒人たちは被害者」。という意識が根付き。今度は逆に、その庇護の下、白人たちが虐げられている。
――と考える白人たちが増え始め、今度は「白人たちが被害者」という思想が生まれ始めている。
お互いが被害者ヅラし、お互いを憎悪の対象と考えている。これが、今のアメリカの人種問題。

……衝撃的だった。
KKKの存在を始め、「黒人たちが今もなお虐げられていること」がアメリカの人種問題だと思っていたからだ。
問題は、根深く、複雑で、今や解けそうにない状態に陥っている。
しかし、これを解決するのは、実に単純な問題提起だった。

6.
秀才な兄弟。彼らは頭が良い。だからこそ様々な知識・事例を有し、それを根拠として持論の正当性を
正当な論理で展開していく。狂気を抱えながらも冷静な思考が、本作をただのバイオレンス映画と
一線を画す質へと仕上げている。

7.
「憎しみはお前を幸せにしたか?」
実に単純な問題提起。人種問題とか貧困問題とか、社会学としての大層な表題を口にする必要は無い。
これこそが本作の最大の主題だと思う。本作を観賞した人は是非この言葉を噛み締めて欲しい。

8.
ラストシーン。
気付いた兄と賛同した弟。立ち向かうのは凶悪で強大な壁。
でも、傷つきながらも、事態は好転していくだろうという予感。
そんな中、1発の銃弾が視聴者の期待を全てをブチ壊す。
視聴者を放り投げるようにして終わる物語。
憎しみは誰も幸せにしない。非情にもその事実を叩きつけ、本作は終わるのだ。



難癖を付けたくなる部分は多々あるのですが、それ以上に本作の衝撃は大きい。
是非、一度見てみて下さい。