大阪にある専念寺というお寺のネコ坊主こと藪本住職は

お寺の行事などを知らせる掲示板に、毎日心にしみる”言葉”を書いています。

仏教の教えに基づいた一言は、何気なく、けれど強く響いてくるものです。

 

 

今回の言葉は

 

「嫌いな人のことは嫌いでいい」

 

 

「それ以上考えないように」ということです。

 

これは単純でとても大事なことです。

 

 

仏教では おんぞうえ-く【怨憎会苦】

 

怨うらみ憎む者にも会わなければならない苦しみのことだそうです。

 

 

仏教で説く、人間界の八つの苦しみの一つで、

これは「嫌いな人は自分の思い通りにならないということ」だといいます。

 

ちなみに八つの苦しみとは、

まず四苦とは、

①    生苦(しょうく)

②    老苦(ろうく)

③    病苦(びょうく)

④    死苦(しく)

 

 

生まれてきた時点で人は苦を背負っており、

老いや病や死という「苦」と付き合いながら生きていくということです。

 

ここでいう「苦」とは「思い通りにならないこと」を示します。

思い通りにならないことを思い通りにしようとすると摩擦が生じます。

そのように思い通りにしようとする自我を捨てよというのが仏教のエッセンスです。

 

 

⑤    愛別離苦(あいべつりく)

失恋、別離、死などによって愛する人と別れる苦しみのことです。

  

⑥    怨憎会苦(おんぞうえく)

  憎く思っている相手と会わなくてはいけない苦しみ。

会いたくなくても顔を合わせなければいけない相手はどの時代にもいるのです。

 

⑦    求不得苦(ぐふとくく)

  欲しいものがあるのにそれを手に入れられない苦しみです。

 

⑧    五陰盛苦(ごおんじょうく)

  人間の「色(しき)」「受(しゅ)」「想(そう)」「行(ぎょう)」「識(しき)」の

  5つに執着するために起きる苦しみを指します。

 

 

籔本住職によると、お寺に寄せられている相談の中で

一番多いのが人間関係の悩みだそう。

 

だからこそ、少しでもその悩みを多くの人に解消してもらいたいとつづった言葉だといいます。

 

 

「コミュニケーションが苦手な人は、嫌いな人、好きな人を分けてしまいがちです。

 

そこで嫌いな人の事をどう扱ったらいいか、どういうふうに自分で処理をしたらいいか

分からない人が多いようです。

 

 

だから、その人たちに向けて「嫌いな人は嫌いでいい」のだと、

自分でまず認めて、そして考えないようにすることで

心がスッキリするのではという思いだそうです。

 

 

毎日「お寺の掲示板」の言葉を考える籔本住職ですが、

 

仏教からの教えから外れないことが大前提で、

難しくなく分かりやすい、そして共感できる言葉を選んでいるとのこと。

 

 

掲示板は17年ほど前に始められ、「ネコ坊主」と名乗るようになったのは最近だとか。

 

 

なぜ「ネコ(猫)」なのかというと、

「ネコは日本の仏教を手助けした生き物だとか。

 

 

中国から日本に経典を運ぶ時に、船にはどうしてもネズミが紛れ込みます。

大事な書物をかじられないようにネコを一緒に輸入したそう。

 

 

それ以降、経典を安置する蔵にネコが描かれる事があるようです。

専念寺の蔵もネコが描かれています。

 

 

そんな仏教を助けてくれた生き物を

サッ処分(殺処分)から守りたいという思いがあり、

「ねこ坊主」と名乗ることにしたそうです。

 

 

「一向 専念寺」は、大阪市平野区喜連瓜破にある慶長2年(1597)に創建された豊臣家ゆかりの寺です。

お近くに行かれたらぜひ訪ねてみてください。