千年鬼 著者:西條奈加 出版社:徳間書店 出版年:2012年6月14日 評価:☆☆☆☆ 完了日:2015年6月19日 ラベル:時代劇+ファンタジー

 

 

 

 

 

 

 

「何が幸せで何が不幸か、歳を経なければ気づけぬことがあるものだ・・・・」

 

 

 

徳間書店ならマンガ雑誌『コミック リュウ』にてマンガ化してほしい作品(読んだ当時の感想。2018年からはweb媒体へ移行)。

 

 

短編連作。

 

【収録作品】

三粒の豆

鬼姫さま

忘れの呪文

隻腕の鬼

小鬼と民

千年の罪

最後の鬼の芽

 

 

「鬼姫さま」

織里姫(おりひめ)が払いのけた菓子が庭先に落ちてしまった。

 

そこへどこからともなく3人の子どもが現れ、その菓子をくれと言う。

落ちて汚いのにいいのかと訊くと、「それでもいい」と答える子どもたち。

 

お礼として過去を見せてあげると言う。

織里姫は過去へと飛び、愛しい人が何者かによって殺されたのか、真相を突き止めようとする。

 

 

 

織里姫はかなりドSな姫様であった。

 

毎話、表紙・裏表紙にいる赤鬼の少年と黒鬼が登場する。どうやら、二人の旅はここから始まった様子。

彼らの目的は一体何なのだろう・・・・?

 

 

 

「隻腕の鬼」

天候不順により、作物が取れなくなった村があった。

 

その村人の一人である駒三は憤っていた。

 

一揆を起こそうと、寄り合いで提案するも誰も賛同してくれない。

それどころか、耳を疑うようなことを聞かされるのだった。

 

鬼神神社にやって来た駒三は、そこで3人の子どもに出会う。

 

 

 

凄惨な場面が続く。

なぜ何十年、何百年経っても、世の中は憎しみあい、奪い合い、滅ぼさんとするのか。

全ては人の心に宿らんとする「鬼の芽」のせいだと、3人の子どもは言う。

 

駒三の強い覚悟に涙が出る。

そこまでしてしまうほど、追い詰められている者たちの悲哀や憤りに息を飲まずにはいられない。

 

 

 

「小鬼と民」

己の姿が見えるという少女・民と出会った小鬼。

聞けば民は、三日前から行方不明になってしまったという赤ん坊の弟を捜し歩いているという。

 

小鬼は弟探しを手伝ってやることに。

 

 

 

赤鬼の少年と黒鬼の過去が明らかになる回。

黒鬼はよっぽどのたらしでした(笑)

 

 

なんてみるも残酷な話なんだ。

憎しみはあまりにも度が過ぎると、人の心の内に闇をはびこらせ、人格さえも変えてしまう。

 

その闇が他人へと向けられた時、惨劇は起きる。

 

 

 

「千年の罪」

罪を犯した者の魂はどうなるのか----?

 

輪廻転生、生々流転。

この理(ことわり)を破ってしまったがために、千年の罪を負うべき者が誕生してしまう。

 

それを清めんがために、赤鬼の少年と黒鬼の永きに渡る旅が始まった。

果たして、小鬼の悲痛な思いは届くのか。

 

 

 

小鬼の人間に対する献身的な姿に心がキュっとなる。

そこまでして救おうとするのは、小鬼にとってそれだけ大切だということなのだろう。

 

その人は、小鬼に初めての思いをいろいろと抱かせてくれた。それほどの人物なのだ。

たとえ、己の命が削られることになろうとも。

 

それにしても、天上人のやっていることのあくどさよ。

 

 

 

「最後の鬼の芽」

運命は繰り返す。何度も、何度でも----。

 

人間の愚かさが招いた運命が動き出す。

あの人の魂は、あるいは小鬼の命はどうなってしまうのか。

 

絶望のあとには希望が来る。

それらを繰り返しながら紡がれる、より深いものへとなっていく彼らの絆に涙を流さずにはいられない。

 

 

 

ドラマチックすぎる。

最後がほんともう、ドラマチックな展開なんだよ。

流れるように進んでいく。その様は、美しくも物悲しい。

 

天上人が悪だとは言わない。

けれども、もうちょっとなんとかならなかったのかと思う。バカヤロー!

千年の代償があれだけなんて、そんなのあんまりだ。

 

とにかく文章がまろやかで優しい。

書いてある内容自体は胸を咎める事柄ばかりだけれど、それでも、文章の行間に含まれるものがたっぷりあって、想像力を掻き立てられる。