リライト 著者:法条 遥 出版社:早川書房 出版年:2012年4月20日 評価:☆☆ 完了日:2015年3月9日 ラベル:SF
これは過去をやり直すための物語
※後半部分に若干のネタバレが入っています。
2002年。24歳になった石田美雪。
7月21日、運命の日。今日は10年前の美雪がやって来る。用意しておいたストレート型の携帯電話をベランダに置き、時が過ぎるのを待つ。10年前の美雪はこれを持ち帰るのだ。
だが、10年前の美雪がやって来た時間を大幅に過ぎても、携帯電話は依然としてそこにあった。なぜ?なぜ来ないの?
このままでは彼を救えない。
美雪の初恋の人、園田保彦を―――。
筒井康隆『時をかける少女』のオマージュともいえる作品。タイムリープ、ラベンダーの香り、未来人。『時かけ』を知ってる人ならニヤリとすること間違いなしだね。
物語は現在の2002年と10年前の1992年とが交互に進んでいく。一体、10年前の美雪に何があったのか。美雪は調査を進める。
登場人物たちのセリフが理知的で論理的で読んでいて小気味よい。
あれ?これって・・・・?何かがおかしい。違和感が拭えない。
不自然な感覚。合わない辻褄。巧妙に仕組まれたトリック。
違う。違う。そうじゃない。
これは・・・・同一人物じゃない!
いつからそいつが主人公だと錯覚していた?
美雪だけが「何か」を知らされていない世界。ここはどこなのだ?どの時間軸なのだ?
おかしい・・・・。
やり直す。やり直す。何度だってやり直す。
Reシリーズ4部作の第1作目らしい。が、早川書房から出てるからと言ってラノベ止まりの本作だから、続編はきっと読まないと思う。
だからSFって苦手なんだよね。まともなの全然ないわ!どこかに自分を唸らせるようなSF作品はないのか。このままでは自分の中でのSFの最高峰は藤子・F・不二雄先生どまりだぞ。いや、F先生は同郷の人でそれはそれで喜ばしいことだけど。
~~~~ここからネタバレ~~~~
真実をすべて知ったいま。なんか、頭がこんがらがってくるな。どうして保彦は最初の一人目が物語を書かないことを知りえたのか。
保彦は小説の一部の描写から推察して美雪がいるこの時代・この街にやって来た。彼の目的は小説の続きを読むことと、小説の内容を追体験すること。
彼は未来に帰れなかった。パラドックスが起きてしまったから。タイムリープできるのは、彼が転校してきた1992年7月1日~7月21日の終業式の間だけ。
だったら、なぜ保彦は10年後の未来において本が出版されないことを知りえたんだ?
それを知りえなければこの物語は成立しない。同じ物語をクラス全員に体験させるというまどろっこしいことをすることができない。
この作品における問題点をめっちゃ突きてぇ~。やっぱSFって、うまいこと考えたつもりでも穴だらけだよね。誰もその問題点に気づかなかったのか?作者も、担当者も。
石田透『続・時をかける少女』のケン・ソゴルも本作の保彦も、未来人というのはどうしてこうも人の気持ちを踏みにじるような奴らばかりなのだろうか。本人たちは無自覚なのだろうけど。無自覚野郎が一番たち悪い。
~~~~ネタバレ終わり~~~~
SF作品だったはずなのに、ラストはホラーになった。なんだ、これ?もう異常をきたして訳わからん!
卵が先かニワトリが先か、理論。