ハロワ! 著者:久保寺健彦 出版社:集英社 出版年:2011年10月5日 評価:☆☆ 完了日:2014年12月27日 ラベル:現代
無職になったら、すぐハロワ~♪
知っているようでよく知らない職業安定所。通称ハローワーク。そんなハロワの舞台裏をのぞき見ることができる職業小説だよ。
沢田信(しん)は4月からハローワーク宮台の嘱託に就いたばかりの28歳。主な仕事は、求職者の相談に乗り、彼らが就職できるようサポートすること。
沢田のバカ真面目で丁寧な態度を気に入ってか、沢田を指名する人が後を絶たない。が、求職者のいずれもおかしな人たちばかり。いわゆるDQNですな。
ハローワーク職員にも成績がつけられる。いかに短い期間でいかに多くの人たちを就職させられたか、その達成率を見られるのだ。沢田を指名するおかしな求職者たちは、就活期間が長引く傾向にある。よって、沢田の成績も下がっちゃうというわけ。うっわー。めんどくせぇヤツらだなぁ。
求職者の一人が沢田にこう言った。
「いや~。あんたもたいへんだねぇ。ややこしいのに見込まれちゃったんだって?」
おっさん、お前が言うなっての!その最たるものがお前やっちゅーのに。
働くってなんだろね?作中によれば、人生の1/5は仕事をしている計算になるらしい。仕事にやりがいとか楽しさを求めてはいけないのだろうか。
仕事は苦役なのか?うつむいて暗い顔をしながら会社の建物に吸い込まれていく人々。仕事の生産性・効率性を上げることよりも、社員同士で足を引っ張り合ってばかりの人々。まったくもって理解できない。
本書はただ単に、沢田vs.おかしな求職者たちの様子を描いている訳ではない。
沢田のプライベートな面についても描かれている。同じ職場に勤める女性・上條奈美との恋愛とも思慕ともつかない不思議な関係だったり。でも、バカ真面目な沢田だから、一線を超えられない。いや、超えちゃいけないんだけどさ。だって、彼女は既婚者だから。
仕事は選ばなければいくらでもあるって言うけどさ、じゃあ、こんなのに行き当たったらどうするの?
就職した会社がブラックで、残業代は出ないどころか基本給も低く抑えられていてノルマはきつく、上司・同僚からの罵詈雑言は当たり前っていう場合。それで精神病んだり、体壊したりして己の人生ダメになるっていう。
こんなことにならないためにも、選ぶって大切なことだと思うけどな。
本音と建前の国・日本。企業側にも本音と建前が存在する。なかには「えっ!?そんな理由で?」と面接を受けに来た求職者を落とすことがあるらしい。表向きには当社とは縁がなかったとかなんとか、体のいい理由を出しておきながら。
本音としてのそんな理由で?というのは「ほくろの位置が気に入らなった」とか「歯がないから」とかが挙げられていた。
んなアホな。企業側は本気で人を採るつもりがあるのか?ほくろの位置が気に入らなかった求職者が企業にとって必要な能力を備えた人だったらどうするんや。会社大きくしたくないんかいな。その人の能力よりもほくろの位置が重要って・・・・(-_-;)
(営業とか接客業とかの場合、歯の有無が大事なのは分かるが)
最終章。なんや、これ?みんな不幸になってるだけじゃないか。こんなん見たら、生きてくことに希望なんか持てない。不幸だーーーー!
結局、バカ真面目にやっていける奴が一番強いってことか?
沢田がハロワに勤めてから1年後にやってきた新人の大橋沙織が、もっと何かやらかしてくれる雰囲気を持っていたのに不発だった。何だったんだ?何がしたかったんだ、と首を傾げざるを得ない。もったいない。著者よ、これではキャラを殺してしまってるぞ。