はだしのゲン 公開年:1983年7月 制作:日本 評価:☆☆☆☆☆ 完了日:2017年8月6日 ラベル:近代
原作は中沢啓治の同名マンガより。
広島に原爆が投下された8月6日にCS放送のファミリー劇場にて視聴。このことは、当日の朝にTwitterのホットワード上位に挙がってきていたことで知った。
知っていたにも関わらず、うっかり裏番組を観ちまってたもんだから、開始時間の約1時間後になってから本作を観始める。だから冒頭部分は知らんねん(すまんな)。
原作未読。映画も今回初めて観る。だけど、なんとなく知っている。
観たのは、原爆が落ちた後から。
中岡元(ゲン)は小学1年生。広島市に住んでいる。
焼け野原となった街で、一人のおじさんが歩いていた。その様子がどうやらおかしい。ゲンがそれを指摘してやる。実はおじさんは尻から血を垂れ流し、頭にはいくつかのハゲが出来ていた。
その途端、おじさんは急に血を吐き倒れたではないか。ゲンは急いでおじさんを救護所に連れていってやるものの、すでに遅かった。
おじさんを診てやった医者はいう。これは、なにもかもあのピカのせいだ、と。
広島に投下された原爆は、その様子から「ピカ」と生き残った人びとから呼ばれていた。
ゲンは、それにショックを受ける。
直接原爆を身に受けた訳でもないのに、数日後(あるいは数年後)に人が死ぬ。人間の目には見えない放射能が、いつの間にか身体を蝕んでいく。知識も何もない人にとっては、理不尽としか言い様のないことだろう。
ピカのせいで、ゲンの家族である父親、姉、弟が家の下敷きとなり、助けることもできないまま、業火に焼かれて死んだ。
生き残ったのは、ゲンと母親とお腹の中にいた赤ん坊だけ。その後、赤ん坊が生まれ、友子と名付けられた。
しかし、終戦を迎えたとは言え、世の中全体が貧しく、食糧難な時代。お乳があまり出ず、赤ん坊に満足な量を与えることもできない。
そんな折り、夕食を食べようとしていたゲン家族の家に何者かが忍び込む。ひっつかまえてみると、それは子どもで、亡くなったゲンの弟にそっくりだった。
子どもは戦災孤児で、お腹が空いていたのだという。
これも何かの縁。ゲン家族は、その子ども(隆太)を引き取ることにした。
友子のミルク代を稼ぐため、ゲンと隆太は仕事なら何でも引き受ける「何でも屋」を始めるのだった。
ここでも、原爆による後遺症で苦しむ人がいる。身体に蛆が沸き、他人の手を借りないと生きられない男性。
だけど、人びとは忌み嫌って誰も近寄ろうともしない。親族ですらも邪魔者扱いする。好きでこんな身体になったわけではないのに。
ようやくお金を稼いでたくさんのミルクを購入できたゲンたちだったが・・・。
もう知ってた。その後の展開なんて。
母親が静かに涙をツーっと流す様が、心震わせる。
それまでのゲンたちのセリフが食いぎみなぐらいなほどに、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていたのに、その瞬間、静かになるのだ。ハッとさせられるものがある。
不謹慎だが、その時の母親が美しいと思ってしまった。
誰かが言った。原爆投下された広島と長崎は、その後70年は草木も生えないだろう、と。
そうだろうか。
すると、どうだろう。地面に麦の芽が生えているのをゲンたちは発見する。
ゲンは生前、父親が言っていた言葉を思い出すのだった。
戦争に限らず、争いは人びとの目を盲(めしい)にする。国家単位で捉えると、規模が大きすぎて判らなくなる。
戦時中の「鬼畜米英」とのスローガンで対峙することも、現代の某国による「反日」を掲げることも物事の本質が見えにくくなる。
目の前にいる人が本当にそれらを体現しているだろうか?
自分の目で確かめたものでなく、誰かに吹聴されたもの、耳障りのいい言葉だけを信じるのには危険がある。
原爆投下も、アメリカ側では戦争を早く終わらせるのに寄与したと教えているそうな。それだけを信じれば、原爆によってその後、人びとがどのような損害を被り、苦しみや辱しめを受けてきたか見えなくなってしまう。
科学技術は、戦争によって飛躍的に発展するという皮肉がある。カーナビやインターネットはその産物。
戦争への風潮が高まって来たとき、忘れてはならないのは、それによって儲けようとする輩が必ずいるということ(死の商人)。適当な理由をつけて、世論をその方向性へ扇動しようとする輩がいるということだ。大義名分を得て、世論形成さえしてしまえば、後はどうにでも出来るのだ。そいつらは、絶対歴史の表には出てこない。
みんなが言ってることだから、新聞やテレビなどのマスコミが言ってることだからと信じて、己の頭で考えることをせずに流されるのはマズイ。非常にマズイ。
今一度、考えてみてほしい。戦争に限らず、これは本当だろうか、これはどういうことだろうかと考えてみてほしい。
(2017年8月13日追記)
当記事が映画ジャンルでの人気記事に挙がったようだ(最高67位)。
↑証拠写真
・・・こんなの、初めて(/-\*)ポッ