三軒茶屋星座館 著者:柴崎竜人 出版社:講談社 出版年:2013年12月5日 評価:☆☆☆ 完了日:2014年7月1日 ラベル:現代
ここには、僕に話を聞いてもらいたい人たちがやって来る
ほら、今日もまたーーーー
本書は星座(星空)モチーフの素敵装丁。青色が好きな自分としては、青系装丁の本にあらがえないのです。
連作短編集
【収録作品】
第一章 オリオン座
第二章 おおいぬ座
第三章 山羊座
第四章 水瓶座
第五章 うお座
「第一章 オリオン座」
星座を探すなら、オリオン座が一番分かりやすい。他の星座を探してみても、それなりの知識がないと全然わからない。
三軒茶屋駅の裏手にある古びた繁華街。そこに軒を連ねる十階建てのおんぼろビルにその星座館はある。
「三軒茶屋星座館」
大坪和真(かずま、33歳)はそこのオーナーだ。
星座館と名乗っているものの、プラネタリウムを目当てに来る客はごくわずか。バーだと勘違いしてやって来る客、終電を逃して仮眠室代わりにする客。そんなのばっかりだ。
ある人物が店を訪ねてくる。和真の弟、創馬(そうま)だった。彼は8歳になる娘の月子を引き連れて、和真の元でしばらく厄介になると突然言ってきた。
住む場所が見つかるまでの間だけと言っていた和真だったが・・・。
和真は月子にプラネタリウムを見せながら、星座にちなんだ神話を話してやる。そこに登場する神々のセリフに和真なりのアレンジが効いていて、なんとも現代人ちっく。そんな言い方するはずがない!とツッコミたくなるw
和真の恰好は金髪にバーテンダー服。となると、ラノベ『デュラララ!!』の某バーテンさんを思い出しますな。
和真のもとには、様々な問題が持ち込まれてくる。話したくて仕方がないとウズウズしている彼らに対して、和真は決まってこう言うのだ。
「オーケイ。気持ちよく、僕にしゃべっちまいなよ」
積極的に問題を解決しようというわけではない。神話を話して聞かせることで、間接的に問題解決に寄与している。一見すると金髪で怖そうに見えるけど、さりげに優しさを発揮するいい人なのだ。人は見た目で判断してはいけないということですよ。
「第二章 山羊座」
山本有紀乃(ゆきの)という高級イタリアンのオーナーが和真の店を訪れてきた。今度デリバリーサービスを開始することにしたから、この店で取り扱わないかという営業だった。
数日後、有紀乃の娘・藍が店にやって来る。なにやら悩みがある様子。いつものセリフを口にして話を聞き出そうとする和真だったが・・・。
すれ違い、その根底にあるのはコミュニケーション不足だな。親子といえども以心伝心できるわけじゃない。話すことは大事。
「第四章 うお座」
創馬父子の秘密が明らかになる最終話。偶然その秘密を知り、ショックを受けた月子が行方不明に。みんなで探し回るのだが・・・。
たとえ、そうであったとしても、相手を思いやる心さえあれば本物以上になれるよ。
作中の季節は秋から冬に設定されており、そこで紹介されている星座も秋から冬のものだ。続編が出るならば、今度は春から夏の星座を紹介してほしいな。
と思っていたら、続編がすでに出ていた。第4巻で完結とのこと。
本シリーズの特設サイトもバックに流れ星がちらちらと流れていく素敵サイトになってるぜ。