$縮まらない『何か』を僕らは知っている
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。/te' (2010)

ヘッドフォン決断は無限の扉を開くのでは無く無限の誤謬に『終止符』を打つ。

01. 決断は無限の扉を開くのでは無く無限の誤謬に『終止符』を打つ。
02. 天涯万里、必然を起こすは人に在り、偶然を成すは『天』に在り。
03. 秤を伴わない剣は暴走を、剣を伴わない秤は『無力』を意味する。
04. 夜光の珠も闇に置けば光彩を放つが白日に曝せば『魅力』を失う。
05. 勝望美景を愛し、酒食音律の享楽を添え、画に写し『世』に喩え。
06. 性は危険と遊戯を、つまり異性を最も危険な『玩具』として欲す。
07. 人々が個を偉人と称する時が来れば彼は既に『傀儡』へと変わる。
08. 闇に残る遅咲きは、艶やかな初花より愛らしく『夢』と共になり。
09. 逆さまにゆかぬ年月、幸福に最も近い消耗がまた『明日』も来る。
10. 自由と孤立と己とに充ちた現代に生きた犠牲として訪れる『未来』
11. 瞼の裏に夜明けの眠りが、閉じた瞳と思い出に『目覚め』を求む。
12. 『参弐零参壱壱壱弐伍壱九参壱伍九伍弐壱七伍伍伍四壱四壱六四』



◆RO69(アールオーロック):邦楽 - ディスクレビュー
te' 「敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。」

初めての方こそ、聴いてほしい

4作目となるこのアルバムで、te'は自身のレーベル残響レコードから、メジャーに移籍。アグレッシブでむき出しのインスト・サウンドで、新たなフィールドへ闘いを挑む。手加減やら、はじめましての人への手心なんてものは、無論、皆無。この4人のハードコアな部分を全開に、轟音を、灼熱のまま飛ばしている。以前、te'と他のインスト・バンドとの違いは何かと問うたところ、「焼き肉に譬えるなら、他のバンドが肉、野菜、肉、野菜みたいに展開するんだろうけど、このバンドは肉、肉、肉、肉だ」と豪快に笑い飛ばしていたが、そのこってりとした超肉食なサウンド展開も、エネルギー過多な音も、作品を重ねる毎に増していくのだから、恐れ入る。もちろん、アンサンブルは巧みだし、ドシャメシャな爆音バンド/キワモノ的バンドなんかじゃ決してない。ただ、感情の底から天井へというレンジや、心の機微、湧きあがり渦巻くエネルギーといったものを音へと変え、生身の人間同士がせめぎ合うように奏でる圧倒的なサウンドは、たとえそこに言葉がのらなくともロックの本質そのものだと言うほかない。(吉羽さおり)



$縮まらない『何か』を僕らは知っている-te'



夜のビルは廃墟の様に静まり返っている。
労働者の居ない建造物は、意味の上ではもう廃墟なのかも知れない。
大人達の脅迫的な快活さを失った建物は、
死が近い老人の様にも見えた。闇の中、林立する白い外壁が、
不自然に白く濁った病人の肌を思わせた。


屋上の淵に立ち耳を澄ますと街の喧騒が遠くに聞こえた。
普段なら煩わしいだけの騒音も、
一寸先は闇の今の状況では耳に優しく残る。
靴裏の地面の感触すら今の僕には有り難いのだ。


音を聞く事や言葉を話す事、それらは僕の中でいつの間にか
個人に属する享楽へと変わっていた。
きっと根源的な意味のそれらは、個人同士が集団だと云う事を
確かめる手段だった筈なのに。
絶望的な状況下に佇んでいる孤独にも、
喧騒は優しく話しかけてくる様に。



人が努力の末、音声に意味を勝ち取った事は、
病人が闘病の末、死を迎える様なものだったのかも知れない。
努力の蓄積が即、勝ち得る事では無い事も、
病気の蓄積が即、死では無い事と良く似ている。


見上げると世界にすっぽりと蓋をする、
日によって密度の違う夜の暗闇。
その蓋に穴を穿って、身をよじるように瞬く小さい光。
それらの光点を従えて、
埃っぽい大気の中で古びた電球みたいな月が滲んでいた。


僕は淵から前に歩を進める。
無限に続けて来た誤謬に終止符を打つ為に。
それは可能性の扉を開く事だ。
病気の蓄積は必ずしも死で終わりはしないのだ。
そろそろ地表が近い。それはきっと始まりだと思う。
理解を望む為に、敢えて。




残響Recordは何故成功しているのか?
5000字超えのロング・インタビュー
ototoy : レーベル特集 「残響 record」


2010年6月2日(水)
4th Album release
「敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。」