「俺、いかが?」――ちょっとありそうなゲイ・カップルの正体は、
「ラストシーン」で共演の石野卓球と七尾旅人。
『KARAOKEJACK』で鮮烈な女装デビューを果たした卓球と、「夜、光る。」以降、ごぶさたしていた旅人。
エンジニアが同じだったり、名前がかわってたりと、何かと縁のあった二人ですが、こんなになっちまうとはね!!
問題の“ラストシーン”は、クラフトワーク“ロボット”を彷彿させるシーケンスに、裏拍重視のスキャット風唱法――エレ・ポップと言うより、オカマちゃんディスコ!! で、『スヌーザー』はカップルで対談を企画したのです。
しかし電気は(メイデイ)とかで海外へ……。なので、すっかり胸毛も生え、新作製作中の旅人(男役)に訊きました。



$縮まらない『何か』を僕らは知っている-ラストシーン
ラストシーン/石野卓球 feat. 七尾旅人 (2001)

1. ラストシーン
2. gimme some high energy
3. ラストシーン -no idea mega mix-
4. ラストシーン -overrocket 1415-


 この気持ち悪い写真は何よ? というわけで、めっきりゲイ・テイストなジャケットで、「石野卓球 feat. 七尾旅人」名義のシングル「ラストシーン」がリリースされる。でもって、お待ちかね。ようやく七尾旅人が水面下の活動から浮上しそうな気配になってきた。で、このシングル、そもそもは、クラブ系のクリエイターとヴォーカリストとのコラボレーションものを集めた企画モノ・コンピ『SOUL SCRAMBLE』用だったのだが、内外からあまりに好評なこともあって、1)オリジナル、2)原曲でもある卓球の“gimme some high energy”(『KARAOKEJACK』収録曲)、3)旅人&奥野裕則によるユニット=ages3&up'sによるリミックス、4)卓球&旅人、共通の友人でもあるエンジニア渡部高士のユニット=オーヴァーロケットによるリミックス、の4曲入りで、改めてリリースされることになった。
 それにしても、ダンスと別れとエクスタシーをモチーフにした、このナンバー、旅人ソロとしても楽しめる仕上がり。電気グルーヴ“エジソン電”の、ハイハットを模した「キックッチッモッモッコッ(菊池桃子)」の向こうを張る、スタッカートを効かせたシャープなヴォーカリゼーションがえらく心地いい。「ツッキッテ、フッタッリッテ(月で2人で)」と、「ミッキッテ、ヒッタッリッテ(右手左手)」が韻を踏む感じは、旅人にしか出来ないし、これまでの旅人スタイルとも違う、新たな舌のマジック。でもって、これまた、前述のセルフ・ミックス 3)が素晴らしすぎる!「no idea mega mix」なんて、とぼけたタイトルがついているが、旅人の最高傑作と言ってもいいのではないか。「オウテカ以降」のエレクトロニカだの、ケルン系テクノだの、音響系だのを軽くポーンと飛び越える、極めてオリジナルで、ダイレクトな音の塊だ。この曲ばっか、ずっと聴いてるよ、俺。
 そんなわけで、いやがおうでも期待が高まる七尾旅人2ndアルバムだが、前述の奥野裕則と共に、目下、鋭意レコーディング中。奥野裕則は、元エレクトリック・グラス・バルーンにして、スギウラムの盟友。バンド脱退後は、セッションやプロデュースをこなしつつ、パンプキンズ武道館公演のオープニング・アクトを務めたバンド=FEEDやリトル・クリーチャーズのメンバー達とも活動してきた。二人のコンビネーションはばっちり、アルバムは2枚組の大作になる予定だそうだ。
 なもんだから、「ここは卓球&旅人対談で、盛り上りまくろうぜ!」と、我々としては3ヶ月以上も前から準備していたにも」かかわらず、卓球のスケジュールが合わず、あえなく挫折。なので今号は、久しぶりの七尾旅人の肉声をお届けすることにしたい。だが、「卓球さんの携帯に電話番号が入ってるミュージシャンは、岡村ちゃんと旅人くんだけなんですよー」と、スタッフが教えてくれるぐらい卓球&旅人はウマがあってもいるので、また近々、この企画は実現させたいと思う。 (SNOOZER#025 田中宗一郎)


インタビューより抜粋
●卓球と一緒にやるっていうこと?
「っていうか、『卓球さんがいる』っていう(笑)。最初はそんなにモチヴェーションはなかったですね。卓球さんのことは、リスナーとして大好きだけど、それはほんとにシンドかった。自信がなかった。『卓球さんに嫌われたらどうしよう』っていうことばっかり考えてて、『自分、今、テンション低いんですけど』と思って。でも、蓋開けたら、力もらいまくって、楽しいだけの状態で三日間が過ぎていって、気がついたら曲が出来てて」

●そんなにサクサク進んだんだ?
「まずBPMを決めて、卓球さんからリズムの、ビートの骨格みたいなののデータが来て。それから自分が新しいパートを出したり、歌を入れてみたりっていうのをして、返して。その時点でスタジオに集合して。三日間のスタジオワークで作っていったっていう。元々の骨格のビートをもらった時点で、家で入れてあった適当に歌ったやつを、言葉に翻訳していくっていうか。韻を踏んで、なるべく分かりやすいように、聴く人が。そんで、普段とはまたちょっと違う風にやろうっていうことで。歌い方一つにしても。歯切れよく(笑)」