局所性ジストニア

近年沢山のミュージシャンを悩ませている病気です。

僕は2016年7月13日に入院7月15日に、「局所性ジストニア」という病気を治すために定位脳手術を受けました。

沢山のミュージシャンがこの病気で活動休止、引退と、とても悩まれていて僕も手術の内容、術後の経過など質問を受ける機会が多く、少しでも役に立てればと思い書きました。

こんな手術です↓


僕の場合は2013年12月くらいから、左手の薬指と小指に違和感があり、その時はライブサポート、レコーディングと仕事も重なりに重なっていたので単純にギターの弾きすぎかなぁ、とそこまで深く気にせずにいたのですが徐々に症状が悪化(*_*)

主な症状はギターを弾くときに薬指と小指が指板の裏に巻き込んで握り込むようになってしまったり、簡単なコードを押さえるときに意図していないのにものすごい力が入ってしまう、音をミュートしたい時に同じタイミングで全ての指を弦から離すことができず薬指と小指が指板に残ってしまうなどの症状が顕著になってきた。

ひどい腱鞘炎かな。と考え少しギター弾くのを少し休んで整形外科や鍼灸師など何件も回りレントゲンや握力チェック、リハビリ治療など、色々と試しましたが一向に治らず。

無理して弾けば弾けたので仕事も色々試しながら弾くが、無理な力が入っているのでそれこそバネ指や腱鞘炎の症状も出てしまって。。。
これは絶対におかしい。。。と怖くなり自分なりにインターネットで調べていたら「ジストニア」という病名にたどりついた。

東京女子医大の平孝臣先生がジストニアの権威で、先生の手術で何人ものプロミュージシャンが現場復帰している。

手術を受けたギタリストの方を友人に紹介してもらい手術のこと術後の経過など色々と相談することができました。

そもそもミュージシャンに多い「局所性ジストニア」とはなんなのか。

ざっくり言うと同じ動作の反復運動をしていくと不随意運動を引き起こす神経回路が勝手に鍛えられてしまう、そうすると正しい動きを自分の意思で制御できなくなるという脳の疾患。

上手く楽器をコントロールするために練習するのに、弾けば弾くほどコントロールができなくなっていくという怖い病気。

入院から手術当日まで、ここから細かく書きます★

この日手術が3件内定位脳手術は2件、通常なら8時から開始のところ僕は7時からスタート。
前日はさすがにねれないだろうとおもって眠剤をもらう。

これでも寝れないかー、、ともやもやしていたら寝たら朝でした。
すっきり笑

細かく体温、血圧検査をしてもらう。
そして6時前に前日もらった手術着のワンピース姿に。
手術当日は1日頭の位置を変えれずなのでベットから動けないとのこと。

いよいよ頭を手術台に固定するフレームを装着。

前頭部、後頭部に4カ所局所麻酔の注射、この麻酔がなかなか痛い!痛みからじわじわしてくる。
それを前二カ所、後ろ二カ所、いよいよフレームを装着します。

平先生チームの堀澤先生がフレームの位置を慎重に決めていく。
場所がきまったらネジを回していく、やはり痛い。
でもこの固定フレームがないと視床を焼いていくときに頭の位置がずれたら非常に危険なのだそう(視床のとなりには足などの運動機能があるそうなので後遺症が出てしまう危険があるとのこと)
麻酔がきくまで二時間程度待つ、この間にMRI、CTなど必要な検査を行うとのこと。

このMRIやCTのおかげで悪さをしているジストニアのポイント(黒い影みたいに見えるそうです)を割り出せる大事な検査。
MRIはまわりの友人からは苦手な人が多いと聞いていたが自分はどうだろう、と思う。

CTは時間にしたら5分程度、とのこと。
MRIは途中で寝ちゃいました。
CTはすぐに終了。

そこから10時、時を待ちいよいよ9:55分頃に手術室へと移動して手術開始。
ぼくはエレキもアコギも弾くので二本持参。
ケースの置き方とか慎重に扱ってくれるのが嬉しい。

アコギも持ってきたのは、エレキよりも弦の張力があるのでジストニアの症状がかなり強くでるから。

手術室の雰囲気に若干ひるみつつ、いよいよあの痛い思いをしてつけた頭のフレームを手術台に固定。
どのくらいの固定度かというと生つばを何度飲み込んでも一切微動だにしないほどです。

頭は一切動かず喉だけが動く感じかな?

僕が手術台に乗り準備が整った頃に自動ドアが開いていよいよ平先生が登場しました。
もの凄い安心感笑。

平先生が「白鳥さん、よろしくね!頑張りましょう!」と声をかけてくれたのが嬉しかった。

平先生がメスで切るポイントを慎重にさがし、そのポイントをバリカンし、髪を洗ってもらう。
平先生はリラックスさせてくれようとしてか、いろいろ話しかけてくれる。

「今までジストニアのギタリストは沢山手術してきたけどベーシストはいなかったかも。ベーシストの人口は少ないの?」
「そんなことないですよ」とか雑談を。

そんな話をしている間にいよいよきました。
まず麻酔をし、、やはり痛い!!!

まずメスで頭皮を少し切る。
痛くないですか?と聞いてくれるが少し痛かったので痛いことを伝えて麻酔の量を増やしてもらった。
局所麻酔なので痛みは消えますがジョリジョリと皮膚を切る感覚はある。

そしていよいよドリルで穴を開けていく。

10〜15秒くらいかな。
痛くはないけど本当に怖かった!

かなりの音だし、ドリルの勢いもけっこうある。
前日の術前説明では、万が一にもドリルが頭蓋骨をつきやぶる可能性はないと聞いていたが、やはり自分の1番大切な部分を守っている骨を破るのは怖い!

音が止まり、いよいよ電極棒みたいなもの?を脳に刺して悪さをしてるポイントを焼いているようだ。

平先生が「そろそろギター弾いてみましょう」とギター渡してもらう。
弾きづらかったフレーズを試しては平先生に伝える。

僕の場合人差し指と中指はコントロールができたのでそのこともフレーズを弾いて先生に伝える。
症状が顕著にでるフレーズを弾く。
そのまましばらく弾いていてください、と言われていたのでしばらく弾きつづけるとふっと力が入らなくなってすんなり指が動くようになる。

手術チームの先生も「見て分かるくらい動いてますね!」と話してました。さらに弾きづらかったフレーズを色々弾いてみる。

アコギに変えてコード弾きなども入念にチェック。

ひきつりや薬指、小指が指板に引っ張られる感覚かきえてる!ここどうかな?と平先生。
「こわばり、つっぱりが消えてます」と伝えた。
手術中には平先生、またチームの方々が小まめにしびれはないですか?ぱぴぶぺぽって言ってみて?などこえをかけてくれるのが嬉しい。
その都度、はい、大丈夫です、ぱぴぷぺぽと伝える。
中指のひっぱりが残っている旨を伝えてトリル的なフレーズをしばらくやっているとしだいに安定してくる。

そのことを伝えると「うん、動いてるね。」と先生たち。

しかし、この後になんと左手と左足の順番にしびれがきた!
「先生!左手左足がしびれてます」と伝える。
しびれは電気風呂に手を入れたときみたいな感覚。
平先生が「ここまでにしましょう、やりすぎはよくないので」と終了。
堀澤先生があたまの穴をセラミックで塞ぎホチキスで縫合する。
ずっとカメラ撮影が入っていて平先生がそのカメラを切るように伝えている。
少しでもジストニアの研究の助けになれば本当に嬉しい。

術後は担架に乗ってMRI(頭の出血があるとマズイので)。

移動中に堀澤先生が「白鳥さん今までで一番手術時間短かったですよ、ポイントすぐ見つけれたよ」と言っていました。

確かに手術トータル1時間半くらいでした。

今回の平先生チーム、平孝臣先生、堀澤先生、岡先生、本当にチームワークが素晴らしかったです。
この人達に命をあずけて良かった。
すごく不安なので一つ一つの行動を丁寧に説明してくれながら進んでいくので嬉しかったです。
 
約2週間入院し退院。

ミュージシャン仲間や友人達が忙しい中お見舞いに来てくれました。

初の入院生活は結構暇でさみしいもので、本当に来てくれて嬉しかったです。

その後も快気祝いなどに連れて行ってもらいました。
本当にありがとうございました。

一時は今後ギタリストとしては厳しいかも、と真剣に悩みましたが、この症状がジストニアという病気だとわかり、手術を受けることができ本当に良かったです。

この手術は術後半年症状が再発しなければ、半永久的に効果は続くそうです。

お世話なっている制作チームやミュージシャンの方々には本当に支えてもらいました。
ジストニアの事を伝えスケジュールなどでご迷惑をおかけした際も、逆に暖かい励ましをいただいたりと、ただただ感謝です。
経過としては1、2週間は指に力が入りづらく違和感が抜けませんでしたが少しずつ感覚が戻ってきました。
1カ月後にはなんとか仕事に復帰してましたしステージにも出演できました。

現在はというと、弾けば弾くほどできることが増えていきます。

これが本当に嬉しいんです。

そして2020年現在、今ではジストニアを発症していたころの感覚も忘れてしまうほど自由に演奏できています。

ジストニアで弾けなくなりつつあって悩んでいた僕を同じ気持ちで励まし、支えてくれた家族や仲間に感謝を忘れずに今後もいい作品、いい音楽を奏でて沢山の人々を感動させれる仕事を妥協なくやりきりたいです。

また2020月8月現在もジストニアの疑いのある方や手術を検討、リハビリをされている方からご連絡をいただきます。

症状も様々ですしお伝えできることは少ないかもしれませんが、わかる範囲でお伝えしています。

遠慮なくご連絡いただければと思います。

この画像は退院後久しぶりに会った愛犬こはると、、、笑