オーダーメイド(オートクチュール)と既製服(プレタポルテ)の違い (前編) | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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 先日の北村悦子さんの記事に書かれている、パリのエスモードの先生方にその技術を披露された垣田幸男先生は僕も何度かHATHOR(ハトホル)という目黒にあったプロのためのパターンメイキングスクールで講習を受けさせていただきました。垣田先生は世間一般に販売されている既製服(プレタポルテ:prêt-à-porter)つまり工場等で先に大量生産してそれを店頭で販売する用の服を作るのではなく、高級仕立て服(オートクチュール:haute couture)、つまり客一人一人の体型に合わせて採寸をして手作業を主に仕立て上げるオーダーメイドのプロフェッショナルで、著名な方々や著名な舞台の衣装などを手がけられています(既製服:プレタポルテが始まる前は全ての服はオーダーメイドで作られており、そのため20世紀前半までは社会的地位の高い人しか洋服は楽しめなかった時代がありました)。ヨーロッパ、特にイタリアやイギリスはオーダーメイドスーツで有名ですが、日本にも多くのオーダーメイドスーツを作られている職人がいらっしゃいます。ただ、“手作業”とか“オーダーメイド”とか“自分だけのために作られた”と聞くと、確かに特別ではあるのですが、だからといって絶対にそれが自分にとって最適で最も美しく見えるシルエットなのだということには残念ながらなりません。最終的には作り手のセンス(あるいは着る方のセンスも)に依るのです。そう言った意味で、シルエットというものは時代とともに変化しますし洋服の裁断・縫製技術も日々進歩していますので、10年前と同じ事を続けていては今の流れに遅れてしまう事になってしまう訳です。職人さんといわれるためには数十年の経験を経て初めて呼ばれるような世界なので、手作業の技術だけにこだわりすぎて世間の流行や新しいシルエット等の研究を怠ってしまうと、せっかく培って来た技術が活かしきれないということになってしまいます。実際街中を歩いているとイタリアでもそう感じてしまう様なオーダーメイドのお店も少なくありません。そんな厳しい世界にあって、垣田先生はまさに常に流行に敏感で美しいシルエットというものを常に研究されている、技術とセンスを併せ持たれた素晴らしい職人です 。先生のジャケットは常に時代の流れとともに更新され洗練され続けてきており、日本やオートクチュールがまだ全盛期だったパリでの経験の後も弛まなく続けられた努力の結果が、パリというファッションの中心にある学校でその技術を披露されることにつながったのは間違いありません。僕は一生徒の立場ではありますが、その様な先生に一度ならず教えていただいたことはとても誇りに思います。


 話は変わって、僕も元々メンズのパタンナーだった事もあってオーダーメードのスーツにはとても興味がありましたし、そのために自分自身は既製服のパタンナーであったにもかかわらず、垣田先生やその他の素晴らしい先生のオーダーメイド制作の講義を受け、知識と若干の経験を積み上げて行きましたが、最終的にオーダーメイドの世界に進むことを選びませんでした。それは、オーダーメイドより型紙(パターン)の各々のパーツの出来が直接的に最終的なシルエットに影響を及ぼす既製服のほうが、型紙(パターン)そのものの可能性があるのではと思い、パタンナーとして型紙の可能性を追求して行く事の方が自分にはあっているのではと思ったからです。既製服とオーダーメイド、分かっているようで分からない分野でもあるので、僕なりの見解でこの違いについて次回に書こうと思います。



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