JR東日本は年内にも、痴漢被害が多い埼京線の一部車両に全国で初めて、防犯カメラを設置する方針を固めた。

 プライバシー保護の観点から犯罪防止に限定し、使用と管理を厳格に運用することで違法性はないと判断した。同社は既に運用規定を策定しており、試験運用を行ったうえ、他路線での導入も検討する。

 鉄道事業者と1都3県の警察が共催した10月の官民会議で、警視庁から防犯カメラの設置が要請されたのを受け、JR東は、防犯対策でのコンビニ店内のカメラ撮影と録画を「違法性はない」とした2005年3月の名古屋高裁判決など、過去の判例を専門家を交えて検討してきた。

 その結果、〈1〉痴漢など防犯対策に限定し、乗客に「録画中」と表示して説明〈2〉一定期間の保存後に削除〈3〉刑事手続き以外での第三者への開示禁止――など、厳格に運用することで問題ないと判断。当面は1~2編成の電車を対象に、ラッシュ時に混雑が激しい一部車両の天井や網棚付近などに複数のカメラを設置予定だ。

 都内の電車内の痴漢被害は、確認されているだけで毎年約2000件。今年1~9月に発生した件数も、強制わいせつ事件を含め計1174件に上る。同庁によると、埼京線の今年9月末現在の被害(146件)は全路線の12・4%。強制わいせつ事件も25%以上で、朝夕のラッシュ時でも20分間隔でしか運行されない通勤快速は混雑が激しい上、停車駅間隔が長い「密室状態」となり、15分以上、片側のドアが開かない区間もあるためだ。インターネット上で「埼京線はやりやすい」などの痴漢サイトの書き込みを見て集団痴漢をした悪質なケースもあった。