闘莉王は鬼の形相と化していた。1―1の凡戦を、あふれる怒りを込めて切り捨てた。「こんな腐った試合、ダメだね。オレらが自分たちで難しくした。個人での打開力とか、すべてにおいて1人1人が考えないと。負け試合だな」。6日のウズベキスタン戦に勝利しW杯出場を決めたのもつかの間、本大会で4強入りを目指すための大事な“初戦”でつまずいた。
長谷部を出場停止、遠藤を右太腿痛で欠く中盤が機能不全に陥った。代役で入った阿部、橋本が相手のプレスに屈し、思うようなパス回しができないため、ロングボールが主体の攻撃に終始した。長谷部は「上から見ていてもシンキングスピードが遅かった」と指摘した。それが苦戦の最大の要因となった。
しかし、それだけではない。W杯出場が決定した安ど感。ウズベキスタンからの移動による疲労や時差ボケ。岡田監督がベンチにいなかったこと。主力の負傷などで先発が入れ替わったこと。さまざまな要因でこれまで張りつめていた緊張感が緩み、いつものサッカーができなかった。「それは影響ないって言いたい」と闘莉王は言ったが、自身の怒りの矛先はそこに向かっていたはずだ。
「皆が1対1で勝負してサポートがない。バラバラだった」。DF中沢は試合後そう嘆いた。守備面でも連係を欠いた。後半8分、中盤の甘いプレスから縦パスを通され、中沢がファウルを取られPKを与えた。連続完封も5試合で止まった。
12日、最終予選最終戦を戦うオーストラリアに向けて旅立つ。危機感を募らせる闘莉王はさらに「オレら一度叩かれた方がいいのかもしれない。このまま簡単にうまくいくと思ったらまた(W杯)予選(1次リーグ)敗退するよ」と警鐘を鳴らした。