【写真で見る】 楽天・中村紀、古巣から勝ち越し打!
一歩も引かない。田中が、中日の“驚砲”ブランコにキバをむいた。安打と四球で迎えた四回無死一、二塁。直前の攻撃で、田中は一死一塁の場面で打席に立っていた。カウント2-1と追い込まれてからのバントは、バットの芯に当ててしまい、痛恨の併殺打。一塁まで全力疾走し、息を整えないまま迎えてしまった大ピンチだった。
ここで崩れないのが、今季の田中だ。初球の150キロが内角をえぐり、三ゴロ併殺打に仕留めた。その後、李炳圭のタイムリーで1点を失ったが、ブランコを打ち取ったから最少失点で済んだともいえる。
ウオーミングアップ中、楽天の選手たちはブランコの打撃練習にくぎ付けになった。異次元の破壊音を残してスタンドに消え続ける打球に、ある中継ぎ左腕は「オレ、左でよかった…」と苦笑まじりにつぶやいたほど。田中自身も「あれヤバいっす」。それでも、「しっかりと狙いを外していけばいい」(橋上ヘッドコーチ)というミーティング通り、二回の第1打席は外角スライダーへ二ゴロに抑えた。
内角直球で併殺打に打ち取った後の、六回無死一塁での第3打席。初球は内角147キロ直球で攻めた後、2球続けた外角スライダーで中飛。ブランコは内角に意識が残った分、バットの先端で打たされてしまった。
好投手vs強打者。これも野球の醍醐(だいご)味だ。この日の田中は、決め球スライダーの制球に苦しんだ。それでもブランコにだけは、コントロールミスしなかった。サムライの心意気を見せつけた夜だった。