「前半のビッグチャンスで決めていればと思うけど、それがサッカー」(遠藤)。高いレベルになればなるほど一瞬の勝負強さが勝敗を分けることは、クラブW杯の決勝でもルーニーが証明して見せた。
ボール支配でG大阪が51%と上回り、さらにシュート数でも5本多い23本を放ちながら、選手たちが実感した手ごたえは橋本が残した「差がありすぎる」に尽きる。
ただ、光明は確実に見いだしたはずだ。特に流れの中で崩し切った橋本による3点目は、「試合のどこかで得点への意識、意欲を感じてほしい」と指揮官が願った通りの強い意図を感じるものだった。山口のインターセプトからダイレクトでつないだ展開は、世界を志向する上で欠かせない形だ。
西野監督の見通し通り、“赤い悪魔”(マンチェスター・ユナイテッドの愛称)は容赦なくアジアの新興クラブを粉々に砕いた。だが同時に、「アグレッシブ性を持ちながら攻撃的に、多少のリスクは負いながらもそういうスタイルを貫いた」ことで、ガンバ大阪は「GAMBA OSAKA」として世界に認知されたのもまだ事実だった。
■日本サッカー界の新たな潮流
現在持てるすべてを出し切った、マンチェスター・ユナイテッドとの準決勝から中2日――。「いい挑戦をしたことを、いろいろ分析する必要がある。その上で、生かすことがなければ、この大会に参戦した意味がない」。3位を勝ち取ったパチューカ戦の試合後に、西野監督はこう大会を振り返ったが、すでに3位決定戦からチームには少なからぬ変化が見え始めていた。
欧州王者を相手に、横浜国際総合競技場内を沸騰させたG大阪の3点目は、ややもするとポゼッション志向が強すぎるきらいのあるチームに、違った価値観をもたらしたのかもしれない。パチューカ戦では「国内ではこれほどボールを持たれることはない」(中澤聡太)展開だったが、G大阪はシンプルに数少ないパスで相手ゴールを脅した。依然、決定力には課題が残るものの、古今東西に共通するサッカー界永遠のテーマがそんなに簡単にクリアになるはずもない。
「今大会はシンプルにつないで前で形を作った方が点を取れていた」(安田理大)。前半29分の山崎雅人のゴールは、橋本を起点に縦へ素早くパスをつないだ形が結実したものだった。
「昨年浦和は、あれ以上スタイルを出せないという戦い方を見せた。僕らも今年は自分たちのスタイルを出したい」(山口)。大舞台での3試合で、G大阪はチームが志向する攻撃サッカーで2勝。世界基準を肌身で感じ取りながら「世界3位」に輝いた。
「このスタイルは間違いない」(遠藤)。G大阪は今後、さらにパスサッカーに磨きをかける作業に取り組むはずだ。
ACLからクラブW杯へ――。2年連続となる日本勢の健闘が、日本サッカー界に新たな潮流を生み出した。「こういう高いステージでチャレンジできたことは、J(リーグ)の宿命」(西野監督)。昨年、宿敵の大健闘にG大阪が刺激を受けたように、すでに来年のACL参戦が決まっている3クラブが、新たなモチベーションを高めているのは言うまでもない。