感染症の抗酸菌・関連菌感染症のお話。
今回は放線菌の説明です。

★[放線菌]ray fungus★
【概念】
《微生物の分類》
 放線菌網Actinomycetesに属する嫌気性病原性のグラム陽性桿菌です。
 放線菌にはActinomyces israelii、A.bouis、A.viscosus、A.naeslundii、A.odontolyticusなどがありますが、主な病原体はA.israeliiです。

●病態生理
慢性化膿性肉芽腫性疾患で、膿瘍、漏孔形成を特徴とします。
近接臓器への浸潤や遠隔臓器への血行性播種もあります。

●疾患・疫学
頸顔部、胸部、腹部放線菌症などに分類されます。
肺放線菌症は口腔内の菌を気道に吸入することで起こり、口腔内が不衛生な場合、発症しやすいといわれています。
ほとんどの症例は15~35歳にみられ、男女比は3:1と男性に多いです。
ヒトからヒトへの感染、動物からヒトへの感染の報告はありません。

●臨床症状所見
発熱、体重減少、咳嗽、喀痰、胸痛などで特異的なものはありません。
血痰や喀血もみられ、慢性肉芽腫性炎症で組織破壊を伴うことから、血管増生が生じ、気管支動脈と肺動脈のシャント形成が、原因となります。
頸顔部放線菌症では、軟部組織の腫脹、膿瘍・腫瘤形成がみられます。
胸部放線菌症の画像上は特徴的な所見はありませんが、腫瘤陰影や肺炎様陰影として認められ、50%以上の症例で、胸膜肥厚、胸水、膿胸がみられます。
腹部放線菌症は、膿瘍や腫瘤として認められます。

●検査・診断
喀痰、膿、組織などの検体から本症に特徴的なイオウ顆粒sulhur granuleを探します。
本症の約半数で見出され、診断的意義が大きいです。

●治療・予後
ペニシリン系抗菌薬の長期投与および排膿、外科的切除が必要です。
適切な治療が行われれば予後は良好です。

●禁忌事項
再燃、再発防止のため、治療は短期間で中断しないこと。

●KEY WORD
《菌の存在様式と宿主の状態》
 ヒトや動物の口腔内や消化管の常在細菌叢を形成、分類上細菌に属します。
 基礎疾患をもたないヒトに発症します。

●分子生物学から
イオウ顆粒は感染が成立してから菌と宿主の相互作用の結果生じるものであり、病理学的には外層にコラーゲン線維や線維芽細胞を含む肉芽腫が形成され、中心部にイオウ顆粒を囲むように好中球を含む膿瘍を形成しています。