通院する病院を探すために検索していたところ、寺町沙也さん(14)が余命6ヶ月で臓器移植をするために渡米する必要があるという記事を見つけた。

「さよちゃんを救う会」というブログも開設されており、2010年2月から渡米のための募金が始まりました。

募金として必要な額は多額となっているが、余命のことを考えると急がなくてはいけない。

経過をブログや各種メディアで追っていたが、2月最終週の現在、募金の予定額を上回る額を得ることができたようだ。

ほっと胸をなでおろしていたところに「ひろゆき日記」というブログを読んだ。

心臓移植の募金をしても助かる命は増えない。
 
ひろゆき氏は、「わが国の患者さんが外国で心臓移植を受けると、その国で順番を待っている患者さんが一人後回しになります。その患者さんが移植を受けられずに亡くなることもあり得ます。ですから断られたり、制限されたりするのはむしろ当然ではないでしょうか。 」と指摘しています。

身近な人間を助けたいというサガに大きなエゴが隠れているのを指摘され「はっ」とした。


■なぜ国内で臓器移植ができなかったのか?

今回の臓器移植手術の経過を追って考えたのは「なぜ日本国内で臓器移植ができなかったのか」ということです。

医師に技術がなかったのでしょうか?
臓器の提供者がいなかったのでしょうか?

ひろゆき氏の記事にあった『循環器病情報サービス』を読み理由がわかりました。

それは、移植手術への誤った認識と法律の問題です。

認識の問題ですが1960年代に行われた心臓移植手術に起因しています。移植手術は失敗し大きな社会問題に発展し臓器移植そのものも2000年前後まで凍結されていました。

しかし、現在では、世界で年間4000例を超えて、5年の生存率は70%くらい、10年生存率は50%くらいになっています。

法律の問題としては臓器移植法により15歳以上で臓器提供の意思を明示する必要があり提供される数が少なくなっています。

外国であれば救われるはずの年間500人、あるいは1000人、肝臓移植を希望する人も加えると、その倍の人たちが毎年わが国のどこかで亡くなっています。


■日本で臓器移植の先進医療を受けられるようになるために

日本国内に臓器移植を行うことができる技術、資金があるにも関わらず、外国人の臓器提供に頼るのは身勝手だと最近は断る国が多くなっているようです。

国内で本格的に臓器移植を行えるようになるにはどうすればいいのでしょうか。

一番効果的な方法は法律を変えることだと言われています。

それは特別な法律ということではなく、国際的に標準の法律に改正することです。

国際的に標準の法律というのは、脳死を人の死と認めるか、脳死であると診断された場合に、家族が臓器提供を承諾すれば、移植手術が実施できるようになることです。

ただ、法律改正の法案が国会で通らなければ、オランダで行われているように、国民のすべてが臓器提供についての意思を市役所などに登録するという方法もあるようです。

厚生労働省の「人口動態統計」によると、国内では年間数百万人の方が亡くなっており、臓器提供の意思さえしていれば相当数のドナーが獲得できることが予想されます。

平成20年 人口動態統計(確定数)の概況


■おわりに

余命半年の14歳の少女が臓器移植をアメリカで受けるために多額の費用を必要とするのが現状です。

韓国では日本の約10倍の心臓移植が行われています。また、費用は全部ではありませんが、健康保険でまかなわれているので、あまり大きな障害にはなっていないようです。

日本国内では医師の技術、健康保険とも十分であり、一日も早い臓器移植へのコンセンサスと法案の通過が待たれます。