Docomo は iPhone を受け入れる/売り出すべきか? | システム開発の見積もりブログ

Docomo は iPhone を受け入れる/売り出すべきか?

株主総会では喧々囂々となったようですが、経営的に iPhone を受け入れるべきかどうかと云えば、結論から言うと「否」です。別に docomo の社長を擁護する訳ではなく、Docomo の会社の収入形態として、iPhone を受け入れる意味はない、ということです。

まずは、docomo ユーザー、docomo 株主の立場から意見を考えてみましょう。敵を知ることは...ってことで、敵情調査は情報戦の基本です。

■docomo ユーザーの言い分

  • 既存の android スマートフォンよりも iPhone のほうが良い。
  • iPhone を使いたい。
  • iPhone が無ければ、 au や softbank に移動する。

ってところです。スマートフォン自体は、docomo から android 機種がいくつも発売されているので、「スマートフォンが選べない」という状態ではありません。ガラケーからスマートフォンに切り替えたいけど、無い、だから他のキャリアに移動するという時期は過ぎ、「iPhone が使いたい」だけが理由です。

確かに、iPhone は既存の Android よりも優れたインターフェースを持っていますが、docomo ユーザーが iPhone を選びたい理由としては、「Apple のブランド性」にあります。あるいは、docomo ユーザーだと、iPhone が使えない、という「ないものねだり」があります。なので、機能面で、iPhone と各種 android を比べてユーザーに薦めるのは無駄です。なにがなんでも iPhone のほうがいい、という心理なのですから。

■docomo 株主の言い分

  • iPhone を入れないから、ユーザーが他社に流れている。ゆえに、通信費の売上が落ちる。

という一点だけです。iPhone を入れれば、ユーザーは docomo 陣営にとどまり、定期的な通信費を確保できる。という論理ですが、一方で、Apple に支払う権利料もろもが考慮されているかどうかは、分かりません...といいますか、株主としては「直近の株価」が下がることが問題なのであって、「直近の株価」が向上すればそれでよいのです。一時的な、株価の上昇で売り抜ければいいのですから。

でも、docomo としては、一時的な売上の上昇を招くだけでは困るのです。長期的な、少なくても現社長が会長として引き下がるまで(オプションを持っているでしょうから)、iPhone/Apple への対応を誤って自社の売り上げを下げてしまっては困るのです。

 

2つの言い分を考え合わせると「先行きの根拠がない」ことがわかります。iPhone は Apple 一社の実力ですから、最初のスタートでの優位性を保つことはできるでしょうが、長期的に「スマートフォン」という分野廃れた時には、iPhone だけに頼るのは困るのです。同時に、android の UI に頼るのも困るのです。

docomo 社長としては i モードを理由に iPhone をはねのけていますが、(まともであれば)内実は違うでしょう。スマートフォンという方式を使えば、i-mode のように専用プロトコル、専用プロトコルを使う必要はないことは、app store を見て分かります。android store や、windows store を考えると、docomo store を立ち上げたほうが、android スマートフォンを売り出して「流通業」に参入するには資金力的に簡単んです。

i-mode 自体は、'96年頃からスタートして、長々と海外戦略を練っていたもので「いまさら捨てられない」という感情的な理由もあるでしょうが、経営的判断から言えば「インフラだけ残して、コストを切り詰めて切り替える」のがベターです。

ですが、docomo にはもっと大きな日本のシェアがあるのです。スマートフォンは、若者の一部 20代から30代ぐらいまでしかありませんが、50代以上の高齢者の場合には、docomo の携帯は i-mode 付きで非常に多く出回っています。高齢者のユーザーは、非常に「優良な顧客」で、

  • 購入してから、同じ機種をずっと使い続けてくれる。
  • 使い続けてくれる間、最初につけた高額な通信費を引き落としで払い続けてくれる。
  • よく分からない(使いもしない)i-mode に登録して、月300円(だったか?)を払い続けてくれる。

という大きなメリットがあります。営業費用もかからない非常に優良なユーザーな訳です。

日本の携帯市場の9割をキープした(現在は少し落ちていますが、結構な割合です)寡占状態ならばこそ、ここの i-mode というブランドは docomo としては外せないわけです。CM で i-mode を宣伝している限り、高齢者は i-mode が入っている docomo を使い続けますからね。

しかし、iPhone を求めて、docomo から au, softbank に流れてしまうのは、ちょっと困るわけですが、iPhone を導入したときのマージンやデメリットを考えると、導入しないほうが現状では良いのです。

なぜならば、先に言う通り、既に docomo としては定額の通信費で身入りがあるのだから、iPhone を売らなかな状態になって、apple にショバ代を払う必要はないわけです。更に云えば、通信料なんて所詮水物ですから、採算が合うように定額を決めていけばいいわけです。○○プランへ切り替わりますとか、適当な期間で宣伝を売っておいて、内部的には定期的な通信料とユーザー数を掛けあわせれば、十分に収入を得られるわけですから、iPhone に手を出す必然性は全くありません。

が、

では、先行きの docomo の戦略はどうなのか?といったところですね。ちょっと考察すると、

  • iPhone の登場(広まる以前)では、アジア圏、欧州圏に i-mode を広めようとした。

という経緯があります。それぞれの国の電話回線のインフラ料金(回線使用料)は、docomo には入りませんが、i-mode にログインするときの定期的な料金は docomo に入ります。なので、携帯電話そのものを得るのは docomo 的には何のメリットもなくて、携帯電話+i-mode というワンセットでないと意味をなさないのです。

しかし、iPhone + App Store の登場で、i-mode の範囲があやしくなり、欧州のフィーチャーフォンも怪しくなってきています(いや、本当は怪しくはなっていないはずなのですが、これは後日)。スマートフォンに切り替わってしまうと、android store が儲かるという仕組みになりますね。あと windows store とか。ここで、i-mode が参入できないのは、結構な docomo の痛手です。

ではどうすればよいのか?結構答えは簡単です。

  • i-mode store

を作ればよいのです。中身のプロトコルは i-mode でも何でもないので、嘘になるのですが、ええ、そんなことはどうでもいいのです。「i-mode」というブランドを引き続き使います。

i-mode java の環境を docomo が提供していたと同じように、android 開発環境を docomo が提供します。提供するといったって、eclipse があればよいので、別にお金は掛かりません。多少のホームページを作って、あたかも i-mode 印を作れば ok です。

そして、app store のように、評価やランキングなどを作る。登録料を開発者から4,000円程度取って運営費に廻す、ってことをすれば簡単ですね。docomo 自体はソフトハウスをいくつも抱えているので、雑多なゲームアプリをガンガン乗っける、あるは既存のアプリをガンガン転載して数を増やしていくだけでよいのです。

google の android market に載せる必要は全くないのですが、そのあたり、何か契約とかあるんですかね?何故、やらないのかちょっと不思議です。