「んっ・・・はぁっ・・・・・」
強く腰を動かすたびに、顔を歪ませ、短く声を上げる。
疲れきっているのは自覚しているはずなのに。
ソレとコレとは、また違う力なのか。
俺の下で相変わらず、表情を歪ませた女を見下ろしながら。
――己の熱を吐き出した。
「うふふ。まさか、今日に限ってヨンファがいるなんて、思わなかった」
乱れた髪を手櫛で整えながら、女が嬉しそうに微笑む。
その言葉の意味はどこにあるのか。
なんて深く考えなくても、わかりきってる。
こんなことさえも、俺たちは誰かのステータスになるのだ。
不意に女が肌に手を這わせ、顔を寄せてきた。
俺はそれを無言でかわすと、ベッドから立ち上がりバスルームへ向かう。
「・・・・・やっぱり噂通りなんだ」
ドアを閉める直前、そんな小さな呟きと、くすくすと笑う声が聞こえた。
―――キュッ。
ノブを捻ると、頭上から熱いシャワーが打ち付ける。
あれから、それこそ取っかえ引っ変え。
毎晩のように女を抱いている俺だけれど。
何故だろう。
キスだけは出来なかった。
キスなんて、ただ唇が重なるだけの行為。
ドラマでも、MVでもやったことがあるのに。
感情を殺してやるのは、得意のはずなのに。
女の顔が近付くたびに、あの人の顔が頭に浮かんで。
自分でも無意識のうちに、顔を背けていた。
もう忘れたはずの。
忘れなきゃいけないあの人が、未だに俺を苦しめるんだ。
―――バタン。
バスルームから出ると、女は変わらずに裸で横になったまま。
「わかってるって。帰るんでしょ?」
目が合うとニッコリ微笑まれ、そう言われた。
既に着替えを終わらせ、あとは上着を羽織るだけのこの格好を見れば、わかってるも何もないと思うが・・・。
そうやって、後腐れのない関係だと、自らアピールしているってことなんだろう。
だったら、わざわざそれを覆すつもりもない。
「・・・じゃあ」
笑顔も見せず、手も挙げず。
短かすぎる挨拶だけを残し、俺は部屋を後にした。
玄関のドアを開けると、ようやく眠気が襲ってきた。
視線を落とせば、夜中と朝方の狭間を時計が刻んでいる。
「二時間・・・は、寝れるか・・・・・」
誰にいうでもなく一人呟くと、そのままキングサイズのベッドに倒れ込んだ。
