物語「電信柱」 2 | スナミちゃんのひとこと

そうさなァ・・・

今のご時世じゃ、

銀座渋谷丸の内と、

ちょいと洒落た街にゃ、

電信柱は影も形も

見かけなくなっちまったかねぇ。

80年も前は、

そいつが文明開化の象徴(シンボル)・・・

証って時代でしたよ。

電信工夫ってのも、

結構イキな仕事で、

金にもなりやしたよ。

そりゃまぁ~仕事はキツイし

危険だしねぇ。

今みてえな安全基準・労働条件なんて

ありゃしねえよ。

次々と電信柱をおっ立てて

電線を張り巡らす。

1日何里、十何里と、

朝から晩まで、夜も寝ずに

突貫工事の連続だァな。

山から切り出した原木を乾かし、

タールでいぶしてさァ。

穴掘っちゃあブッ立てて、

次から次へとねぇ。

碍子に電線(ワイヤー)巻いて

張るだけだから・・・

危ねえのなんの。

何万ボルトの電流が流れている中で

作業するんだもの。

でもさァ・・・村から街へ、

次々と電灯が灯い、

明るい夜がやってくる・・・

人様のお役に立つってのは

楽しいもんよ。

 

 

〈つづく〉