我家では、
父も母もピアノは弾かないが、
母は異様な教育熱心で、
1日1時間はつきっきりで
ヤイノヤイノと練習させられる。
ボクは身長が小さかったので、
当然、親指から小指の幅も短く、
目一杯指を拡げても
一オクターブに届かない。
ゆえに、教習法にはない
変則的な弾き方を編み出す
・・・が、これもビシビシ直される。
どこで聞いてきたのか、
目一杯指を拡げた手の甲の上に
マッチ箱を乗せられ、
弾いててマッチ箱を落とすと
怒られた。まァ・・・
巨人の星の一徹おやじか、
亀田兄弟の父上の如き
ハードトレーニングに、
正直何度も泣かされた。
同級生の女の子に
笑われるのも口惜しいし、
母にビシビシ教育されるのも
辛かったが、一応
訓練に励んだので
ステップアップは早かった。
メトードローズ教則本に始まり、
バイエル、ソナチネへ、
2年間百周で一気にかけ登った。
ソナチネの一番に入った時に、
左手を複雑骨折し、
手術2回、10ヶ月近い入院治療・・・
腕はひん曲がったままだが、
正直・・・ピアノから解放されて
晴れ晴れしていた。
それほどまでに
ピアノが嫌いで、
追い詰められていたと
告白する。
大人になって
ジャズにハマったり、
ポップスのピアノ演奏を聴く度に、
もう一度やろうかなァ・・・
あの時やめなきゃなァ・・・
BARの片隅で
チョロリンと弾いて
ウケを狙えるかもしれない
などと思うが、
今更振り出しから
やる気もなし。
安いCASIOの電子ピアノなどを
買ったりすると、
昔を少しばかり思い出し、
一週間ばかり
鍵盤を叩いたりした時もある。
2番目の質問
「あなたの最も好きな楽器はなんですか?」
の答えは、文句なくピアノである。
〈つづく〉