未来のシナリオ 17 | スナミちゃんのひとこと

何度も場面は一変した。

今度は

得体の知れない大きな会場。

ステージでは大歓声、大拍手の嵐。

輝かしいスポットライトをあびて

両手を高々とあげる俺は

傍にいる彼女の手を取り

誇らしげに紹介する。

照れたように笑う彼女も

少し年を重ねている。

 

次に繰り広げられた場面は

イタリアかスペインか

どこだかはわからぬが

ヨーロッパの山岳地帯の別荘地

ワインを片手に椅子を寄せて

山を見る老女の老人。

この暮らしができるのは

まあまあの晩年だろう。

大きな夕陽が赤く燃えて

山端へ沈んでいく。

その光景を

ぼんやりと見つめるふたり。

どちらも安らかな笑顔を浮かべ

ほとんど記憶を失った世界。

数人の子供たちが

いたずらっぽくふたりに近寄り

椅子を揺するが

応答しないふたり。

子供達が驚いて声をあげる。

多分、孫たちなのだろう。

父母たちが駆けつけ

ふたりのくずれた体を抱き起こし

涙を流す。

ふたりを取り巻くように

一瞬

夕陽の赤い色が大きく輝き・・・

そして消えていく・・・。

 

白いたまごのスクリーンも

猫たちも消えた。

嘘のような静けさと

濡れた大地の風景だけが

そこにあった。

霧も緩やかに流れ去っていく。

 

「こ・・・これって・・・

 私たちのことなの?!」

 

「そうらしい・・・

 人生の終わりまで

 見ちゃったわけだ・・・」

 

確かに、仲々に出来の良い

映画を観ている気分だった。

1800円の入場料を払って

予想外に良かったな・・・

と思う映画が、時々ある。

そんな雰囲気に浸ってしまった。

息もつかせぬ大感動と興奮の連続。

エンドマークが出てからも

座席にぐったり沈み込み

立ち上がれぬほどの

名画ではないが

ヤマなし、オチなし、意味なし

役者は大根、監督・脚本はいまひとつ

途中から席を立ちたくなるほどの

退屈さで「バカヤロー金かえせーっ」

と喚く程の駄作でもない。

 

自分が主演のドラマでありながら

他人事の面白い映画として

観てしまったのである。

彼女と一緒に・・・。

 

 

 

〈つづく〉