第8568回「S.キング初期中短編 その20、生きのびるやつ ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第8568回「S.キング初期中短編 その20、生きのびるやつ ストーリー、ネタバレ」

 第8568回は、「S.キング初期中短編 その20、生きのびるやつ ストーリー、ネタバレ」です。悪徳医師が漂着した先の無人島で記した日記の体裁をとった小説です。この医師は生き残れるのか・・・・、30ページ余の短編です。


「その20、生きのびるやつ」

 作品の冒頭、( )書きで、外傷性ショックについて解説されています。そして、「生きのびるやつ」は、その患者の意志次第であると・・・・。


 日記は、1月26日から書かれています。その日記には、彼が犯してきた数々の医療犯罪と生い立ちが記されていました。そして、遭難に至る過程も・・・・。ですが、彼が何よりも興味を抱いたのは、食料の確保でした。彼は海に食料を求めず、カモメを追い回します。


 一羽目を捕えました。生で無理矢理のどに押込みます・・・・。ですが、食料の確保には苦労しています。彼が客船カラス号から持ち出せたのは、2キロのヘロインとナイフとマッチと筆記用具のみ・・・・。捜索の飛行機とおぼしきものが、島の上空を通り過ぎましたが、彼には気づかなかったようです。


 彼は、その際、穴に足を踏み入れ、くるぶしを複雑骨折しました。砂浜に「HELP」と大書したのは、その後のことです。くるぶしを消毒したものの、壊疽を起こし掛けています。決断を伸ばしましたが、自ら切除手術を行うことにします。


 いまでは医師免許を剥奪されていましたが、元々は外科医だったのですから・・・・。麻酔には困りません、2キロのヘロインがあったからです。まずヘロインを両方の鼻孔から吸い込みます。そして、くるぶしのやや上から切断します。もちろん、切除する前に止血処理をしています。


 オペが終わった後に、切り取った自らのくるぶしが食糧に思えてきました。以下、結末まで書きますので、ネタバレになります。


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 飢えには勝てませんでした、彼はかつて自分の一部であった"物"を食します。自分を喰い続けるという思いつきを決定づけたのは、惜しいところでカモメを逃したことでした。ふたたびオペに挑みます。そして、自らの肉を喰います。時間間隔もあいまいになってきました。ヘロインへの依存も高かったことが原因ですし、オペ後、失神して何日も眠っていたからです。


 悪徳医師の生存への執着には異常なものがありました。そして、指導教官の言葉が蘇ってきます。「生きのびるやつは、その患者の意志次第である」、外傷性ショックなんて「ガッデムっ」、彼にはそう思えます・・・・。もはや、両脚はありませんし、指の多くも喰いつくしていました。


(追記) スティーヴン・キングの初期中短編につきましては、随時ブログに取り上げていく予定です。興味がありましたらお手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に、"キング中短編"と御入力ください。