第6852回「氷の微笑2 マイケル・ケイトン=ジョーンズ 監督 感想、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第6852回「氷の微笑2 マイケル・ケイトン=ジョーンズ 監督 感想、ストーリー、ネタバレ」

新稀少堂日記


 第6852回は、「氷の微笑2 マイケル・ケイトン=ジョーンズ 監督 感想、ストーリー、ネタバレ」(2006年)です。


 第1作は確かに面白いエロティック・サスペンスに仕上がっていました。世界中の多くのお父さんが、ビデオをスローにして見たと言われています・・・・。ですが、何故14年も経って続編が製作されたのでしょうか、同一のヒロインを演じた女優も当然年を取っています。女にとって14年は長すぎます、そして、男にとっても・・・・。


「イントロダクション 第1作あらすじ」("MovieWalker"から引用)

 『 元ロック・スターがある夜ベッドの上で惨殺された。凶器はアイス・ピック。サンフランシスコ市警察殺人課のニック・カラン(マイケル・ダグラス)は相棒のガス(ジョージ・ズンザ)とともに、最後に被害者といるところを目撃された彼の恋人キャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)を訪ねた。


 彼女は数ヵ月前に今回の事件そっくりのミステリー「愛の痛み」を発表しており疑惑は増すが、彼女は警察の尋問を軽くクリア。キャサリンは次回作に、以前捜査中に誤って観光客を射殺してしまい「シューター」(早撃ち)とのあだ名をもつニックをモデルに小説を書くことを告げた。


新稀少堂日記


 捜査はキャサリンに翻弄され難航、ニックの恋人で警察付きの心理学者でもあるベス・ガーナー(ジーン・トリプルホーン)の心配をよそに、ニックは次第にキャサリンの甘い罠に落ちていった。ある日ニックは、事あるごとに衝突していた内務監査局のニールセンと口論となるが、直後に彼が頭を撃ち抜かれたため殺人容疑がかかり、休職を命ぜられるハメとなった。


 さらにニックはキャサリンの同性愛者のロキシーに嫉妬から命を狙われるが、逆にロキシーが事故死。落ち込むキャサリンの言葉をヒントに、ベスがキャサリンと学生時代同性愛関係にあり、別れた夫は謎の死を遂げていたことが判明したが、ベスはキャサリンの罠だと主張した。深まる疑惑の中、最後に刑事が死ぬ「シューター」と名付けられた小説は完成。


 キャサリンはニックに別れを告げる。未だ休職中のニックは、ガスとともにさらなる情報収集のため捜査を続けるが、ガスはエレベーターでアイス・ピックにより惨殺、居あわせたベスはニックの銃弾を浴びた。ベスの部屋からは殺人の物証が続々と発見、事件が解決へ向かう中ニックはキャサリンと再び身体を重ねるが、そのべッドの下にはアイス・ピックが隠されているのであった。 』


 第1作が見事だったのは、キャサリンがアイスピックをまさぐるところで終わっていることです。悪女ぶりを際立たせる演出でした。そして、舞台はロンドンに移ります・・・・。


「プロローグ 不審な交通事故」

 キャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)は、ドラッグでも服用しているのでしょうか、それとも・・・・、ハイになっています。助手席に座っていたフランクスも随分ラリっていました。彼らは、ペッティングを繰り返します。キャサリンの運転していたスポーツカーはついにクラッシュし、川に転落します。


 自動車から脱出できたのは、キャサリンだけでした。彼女は裁判にかけられます・・・・。


「第1章 裁判」

 捜査を担当したのは、ウォッシュバーン刑事(デヴィッド・シューリス)でした。とかく強引な捜査手法で、疑惑をもたれ続けた人物です。そんなウォッシュバーン刑事が、有罪を確定するために精神鑑定医として起用したのが、精神科医のマイケル・グラス博士(デヴィド・モリッシー)です。映画は、彼の視点で進行します・・・・。


 「キャサリン・トラメル被告は、危険に惑溺する傾向が著しい。釈放することは、危険極まりないと思慮される」と法廷で証言します。一方、キャサリンは自信満々でした、検察側の証言・証拠を覆せる根拠を握っていたからです。


 こうして、野獣は野(街)に放たれました・・・・。


「第2章 グラス博士の治療」

 釈放されたキャサリンが向かったのが、マイケル・グラス博士のクリニックでした。診察台(長細いソファ)に横たわったキャサリンは、旧著「シューター」とサンフランシスコの事件について語ります。自分が犯人であると・・・・。ですが、マイケルには、にわかに信じられませんでした。


 20分も診察時間を残して、キャサリンは帰っていきます。ですが、その晩、早速マイケルの開くパーティに現れたのです。客はほとんど医者仲間だけに彼女の存在は目立ちました。キャサリンは、同じ精神科医のミレナ・ガードッシュ博士(シャーロット・ランプリング)と親しく語り合います(ガードッシュ博士は、ラストで重要な役割を果たします)。


 マイケルはキャサリンの誘惑に乗りませんでした。恋人もパーティに来ていたからです。マイケルと恋人は愛し合いますが、マイケルは途中から乱暴になります。昼間のカウンセリングが影響したのかもしれません。恋人を傷つけようとした瞬間、電話が鳴り響きました。


 別れた妻デニースからでした。恋人の新聞記者アダム(ヒュー・ダンシー)が殺されたというのです。マイケルは現場に駆け付けます。デニーズはまだ警察を呼んでいませんでした。ウォッシュバーン刑事が主任として警官隊を引き連れてやってきます。第一容疑者はもちろんデニースです・・・・。


 しかし、マイケルにも被害者に弱みがあったのです。殺されたアダムは、マイケルの過去を洗っていたのです。マイケルが退院させた患者が殺人を犯したことがあったのです・・・・。


「第3章 第2の殺人、被害者はデニース」

 マイケルは次第に壊れていきます。衆人環視のバーで、デニースを問い詰めたのです。しかし、周囲の客に止められますが、第三者を殴ってデニースを追います。デニーズはクラブに入っていきました。そこで、キャサリンに似た女性と一緒にいるのを目撃したのです。


 激したマイケルはデニースの後を追って女子トイレに入りますが・・・・。喉首を掻っ切られていたのです。救命措置を施しますが、警察から見れば極めて容疑は濃厚です。直前にデニースとのいさかいを目撃されているからです。「私が殺したという証拠はないだろう?」、捨て台詞をウォッシュバーン刑事に投げつけ、マイケルは立ち去っていきます。


 その日、二度目の診察を受けたキャサリンとは喧嘩別れの状態になっていました。その時、キャサリンは激しく挑発していました。そんな彼女が執筆していたのが、マイケル・グラスをモデルとした「分析医」でした。


「最終章 犯人は誰だ」

 最も疑わしいのは、キャサリンです。ですが、ウォッシュバーン刑事は、汚職も殺人も厭わない刑事だと目されていました。さらに、マイケル・グラス医師は維新的に崩壊寸前です。誰が犯人であってもおかしくはありません。そんな中、マイケルはクラブで男性と抱き合うキャサリンを目撃します。


 精神分析医の職業倫理としては、守秘義務以外にも、患者と性的関係を持たないことなどがあります。そんな禁忌をマイケルは破ります。ついに一線を越えたのです。以下、結末まで書きますので、ネタバレになります。


―――――――――――――――――――――――――――――――――










 その際、キャサリンは、マイケルに小説「分析医」が収められたCGロムを渡しています。小説に拠れば、ヒロインの次の犠牲者は、ミレナ・ガードッシュ博士だと暗示されていました。マイケルは、ウォッシュバーン刑事に連絡を取ります。「キャサリンの次の目標は、ガードッシュ博士だ。すぐに行ってくれ」


 マイケルが、ミレナ・ガードッシュ博士の家の前で大声で叫びます。電話に出なかったからです。ドアが開かれます、博士は無事でした。「マイケル、あなたは倫理規定を破ったわ。このままでは刑務所行きよ、治療を奨めるわ。もちろん、医師免許は剥奪だけど。医師会の総意よ」


 博士の傍らには、キャサリンが立っていました。激したマイケルは思わず、博士に手を挙げていました。昏倒します・・・・。そんな時に、ウォッシュバーン博士が駆け付けてきたのです。その時、マイケルはキャサリンから渡された拳銃を彼女自身に向けていました。ウォッシュバーン刑事が入って来た時、反射的に刑事を撃っていました。


 虫の息で、ウォッシュバーはマイケルに語ります。「私は誰も殺していない。あの女を殺すんだ」、目覚めたミレナ・ガードッシュ博士とキャサリンが寄り添って立っていました。拳銃を向けますが・・・・。その時、警官隊が乱入したのです。マイケルは取り押さえられます。


「エピローグ 精神病院にて」

 精神病院の回廊式のテラスで、マイケルは腰かけていました。向精神剤の大量投与のためでしょうか、マイケルに精彩はありません。そこにキャサリンが見舞いに来ます。


 「出版したばかりの"分析医"よ。あなたのお蔭で面白くなったわ。犯人はすべてあなただったのよ。新聞記者のアダムを殺したのも、浮気をしてあなたを苦しめたデニースを殺したのもあなたよ。でも上手くやったわね。刑務所ではなく、こんな快適な病院に入れて・・・・。退院したら、逢いに来て」(要旨)


 キャサリンは立ち去ります。背中を見つめるマイケルに、表情が戻って来ます。そして、薄ら笑いも・・・・。


(蛇足) 製作費7千万ドルのうち、20%がシャロン・ストーンのギャラだったそうです。興業的には、失敗だったそうですが、続編にこだわらず、別の俳優による別設定であれば、それなりに面白いサイコ・スリラーになったと思います。映像的には、ロンドンを舞台にしていますので、独特の雰囲気が出ていました。残念です。


 なお、真犯人ついては、観客によって意見が分かれると思います。ですが、人誑(たら)しの天才キャサリンが犯人だと感じた人が多かったのではないでしょうか。私は、リドル・ストーリーとして観ました。どちらが犯人であってもおかしくない、それが演出意図だと感じました。


 シャロン・ストーンは、中途半端な髪の長さになっていました。ショートにしてもロングにしても老いが目立つ、ということでしょうか。女も男も年を取りたくない、というのが実感です。まだしも、男の方が、いい年の取り方ができるのですが・・・・(これは私の偏見かもしれません)。