第5354回「男はつらいよ全集 その46、寅次郎の縁談 葉子:松坂慶子」(第46作) | 新稀少堂日記

第5354回「男はつらいよ全集 その46、寅次郎の縁談 葉子:松坂慶子」(第46作)

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 第5354回は、「男はつらいよ全集 その46、寅次郎の縁談 葉子:松坂慶子」(第46作、1993年)です。この作品には、満男シリーズでのキー・ウーマンである泉ちゃん(後藤久美子さん)は出演していません。満男(吉岡秀隆さん)は、瀬戸内の島で新たな恋をします。そして、伯父のように失恋を体験します・・・・。


 「男はつらいよ」シリースでは、地名の仮称はほとんど行っていないのですが、この映画に登場する琴島は仮名です。ロケは、丸亀沖のふたつの島で行われました。


「プロローグ 那須烏山(栃木県)にて:花嫁行列」

 寅次郎(渥美清さん)は、ポンシュウ(関敬六さん)とバスを待っていました。そこに通りかかったのが、花嫁の一行です。「幸せになんなよ!」と寅が声をかけると、挨拶を求められました。「結婚は、何よりもふたりが愛し合うことが肝心だ。でも、周囲の人びとに支えられてきたことを忘れちゃいけないよ」


 一行は立ち去り、バス停のベンチで、寅とポンシュウは話し合います。「馬鹿いっちゃいけないよ。寅が話すような柄じゃねえよ」、寅はポンシュウを突き飛ばします。ポンシュウは、古女房を捨て若いかあちゃんをもらっていました・・・・。


「第1章 柴又:就職はつらいよ」

 1989年末をピークに、バブルは崩壊します。1993年になりますと、明らかに経済は変調をきたしてきました。この20年以上にわたり、日本のGDPが約500兆円で変らずに推移していることでも分かるように、バブル崩壊の影響は深刻です・・・・。


 そんな経済悪化の影響をもろに受けたのが、満男でした。30数回にわたる面接も、すべて不採用の結果に終わりました。そして、今回も・・・・。ついに満男がキレます。激しく、父親とやりあいます。母親の制止も振りきり乗り込んだのが、寝台特急"瀬戸"でした。


 行き先も決めていません。車掌から終点が四国・高松だと聞き、高松までのチケットを買い求めます・・・・。満男の目には、涙が浮かんでいました。


「第2章 琴島(香川県)にて:満男の島での生活」

 ぶらりと、寅次郎がくるまやに帰ってきます。そこで、知らされたのが満男の家出でした。既に1週間経っていると聞かされます。満男が送ってきた小包から、住所は分かっています。「じゃあ、おいらが満男を連れ戻して来てやるよ」


 寅次郎は、飛行機に乗り高松空港まで行きます。そして、小包に書かれていた琴島を目指します。狭い島のことです。簡単に見つかります。満男は、島の診療所に勤める看護師の亜矢(城山美佳子さん)と一緒に歩いていたのです。「宿はあるかい?」と聞くと、親切なオバサンの家に居候していると答えます。


 ですが、満男は言った途端に自らの過ちに気付きました。空き家を探している時に、寅次郎が会ったのが、そのオバサンでした・・・・。


 寅次郎が琴島を訪れたのは、子どもの使いのためではありません。「訳を言いな」、満男が帰ることを拒んだからです。満男は島での生活に、他者に役立っている自分を感じると話します・・・・。島に残っていたのは、老人だけだったのです。若い満男の労働力は、島民にとっては極めて貴重でした。農業、漁業を問わず、求めに応じてボランティアをしていました。


「第3章 やはり琴島にて:寅次郎と満男、それぞれの恋」

 満男の恋は、自分から求めてのことではありませんでした。積極的だったのは、看護師の亜矢の方でした。手作りのセーターをプレゼントします・・・・。一方、寅次郎の恋は、いつもの病気です。満男の言っていたオバサンとは、葉子(松坂慶子さん)でした。


 葉子は、関西で料亭の女将をしていたのですが、体調を崩し琴島で療養していました。現在住んでいるのは、実の父親(島田正吾さん)の家ですが・・・・。船長であった善右衛門は、各地で愛人をつくり、子どもを生していました。葉子も、そんな愛人の子どものひとりでした・・・・。


 狭い島のことです。寅さんが満男の伯父であることは、またたく間に島中に知れ渡ります。楽しみの少ない島のことです。善右衛門の家で、宴会が開かれます。民謡だった歌は、いつしかタンゴに変わっていました。善右衛門と葉子はタンゴを踊ります・・・・。


 寅次郎はいったんは島を去るつもりだったのですが、連絡船の欠航と葉子への恋情が原因となり、いつしか島にずるずると滞在することになりました。そして、満男と寅次郎に事件が起きます。


「第4章 琴島を出る前夜:寅次郎と満男の恋の行方」

 満男の恋人、泉ちゃんは母親と暮らすために名古屋に帰っています。そんな満男の心の隙間に入ってきたのが、看護師の亜矢でした。亜矢は積極的でした、満男に迫ります・・・・。満男は、伯父がかつて繰り返してきた反応を示します、逃げ出したのです。「ぼく、東京に戻ります」、葉子に告げます・・・・。


 しかし、満男はさらに言葉を告いだのです。「伯父さんは残ると思うよ。オバサンのこと、恋しているから」、葉子の反応は激烈でした。「そんなことは、寅さんの口から直接聞きたいことよ」・・・・。満男は帰って来た寅次郎にそのことを告げ、謝罪します。寅次郎も、島を去る決意をします。寅次郎は葉子に付き合い、観光とショッピングに同行し、いい感じになっていたのですが・・・・。


 翌朝、亜矢が見送りに来ます、連絡船に向って手を振り続けます。再び島に帰ろうとする満男を押しとどめたのは寅次郎でした・・・・。ふたりは高松で別れます。一方、善右衛門は、証券と権利書を葉子に渡していました。葉子が経済的に破綻していたことを寅次郎から聞いていたからです・・・・。


「エピローグ 小豆島にて:亜矢との再会」

 柴又に帰った満男は、新たな面接を受けるべく家を出ようとしていました。それを押し止め、勝負ネクタイを渡したのは、父親の博(前田吟さん)でした。「満男、心に染まないことを言う必要なんかないからな。自分の考えていることを話して来い」


 そして、新春がやってきました。友人と一緒に出かけようとした満男を後から目隠しする人物がいました。葉子でした・・・・。さくら(倍賞千恵子さん)の顔に笑みが浮かびます。島での出来事を葉子から聞いたようです・・・・。


 その頃、寅次郎は小豆島でバイをしていました。新たな恋人を連れた亜矢と目が合います・・・・。


(追記) 講談社版「寅さん」シリーズにつきましては、あとわずかになりました。既に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側の"ブログ内検索"欄に、"つらいよ全集"と御入力ください。