第５０２６回「名探偵ポワロ中短編、その４２、コーンウォールの毒殺事件、ネタバレ」

　第５０２６回は、「名探偵ポワロ中短編、その４２、コーンウォールの毒殺事件、ネタバレ」です。この事件では、ポワロは依頼者の命を救うことはできませんでした・・・・。

「その４２　コーンウォールの毒殺事件」

　ポワロのもとに、ペンジェリー夫人という５０歳ほどの"初老"の婦人が依頼に来ます。「村で噂になっていることがありますの。歯科医をしている夫が私を毒殺しようとしているって・・・・」、夫のエドワードには、歯科助手を勤めるミス・マークスとの不倫の噂もありました。そのことが、噂に一層火をつけました。

　ペンジェリー夫人は、最近胃痛を訴えていました。しかも、夫が居る時に限って痛むのです。ポワロが見る限り、ペンジェリー夫人にヒステリーの徴候は見られません。ヘースティングスと共に、列車で５時間かけてコーンウォールに向います。

　ところが、わずか３０分前に亡くなっていたのです。ポワロは、ペンジェリー夫人の家族から、事情を聞きます・・・・。疑惑の事件関係者は、次のとおりです。

①　エドワード・ペンジェリー・・・・　歯科医をしている小資産家です。歯科助手(②)とは、確かに不倫状態にあった様です。彼の唯一の身内が、姪のフリーダ(③)です。

②　ミス・パークス・・・・　エドワード(①)が経営しているクリニックで働いています。彼との不倫の噂は、村中に拡がっています。

　ですが、ポワロはペンジェリー氏とミス・パークスには会わずにロンドンに帰ることにしました。その直前に会ったのが、次の二人です。

③　フリーダ・スタントン・・・・　エドワード(①)の姪ですが、永年住んできたペンジェリー家を１週間ほど前に退去しています。ペンジェリー夫人とトラブルがありました。フリーダの話では、「５０歳のペンジェリー夫人が、２０歳年下のジェイコブ(④)にのぼせていた」と話します。真偽のほどは・・・・？

④　ジェイコブ・ラドナー・・・・　フリーダ(③)の婚約者、３０歳ほどの青年です。アパレル関係の仕事をしていますが、資金繰りには窮しています。

　早い段階で、重要な証言をしたのは、次のふたりです。

⑤　メイド・・・・　しゃべらないと言いながら、最も情報をもたらしてくれた人物です。「ペンジェリー夫人はオートミールを食べて、しばらくした後、急死しました。棚には、除草剤が置かれていました」

⑥　アダムス医師・・・・　あくまで、ペンジェリー夫人は病死だと断定しています。エドワード(①)は、妻を殺すような男ではないとも主張しています。彼の死亡診断に基づき、自然死として処理されたのですが・・・・。

　ロンドンへの帰還に際して、ポワロはヘースティングス大尉にこう語っています。「民衆の声(噂)がこのままには済まさないさ」、ポワロの予言は当ります。３ヵ月後にペンジェリー夫人の発掘命令が出たのです。遺体からは、致死量のヒ素が検出されました。エドワード(①)が逮捕され、起訴されます・・・・。

　以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。

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　公判は、被害者の夫であるエドワード(①)が圧倒的に不利な状態で進みます。ポワロも、ジェイコブ(④)も傍聴していました。ジェイコブはポワロたちが宿泊しているホテルのバーに行きます。ポワロはジェイコブに告げます。「エドワードが罪を免れる道は唯一つ、あなたが、この書類にサインすることです」

　それは、自白書でした。ペンジェリー夫人に積極的に近づき誘惑したのも彼なら、ヒ素をオートミールに入れたのも彼です。もちろん噂を広めたのも・・・・。すべて、疑惑が夫のエドワードに行くように仕向けたのです。婚約者のフリーダは、エドワードの唯一の相続人です。アパレル事業に失敗したジェイコブには、新規まき直しの資金が必要だったのです・・・・。

　「サインをすれば２４時間の猶予を与える。外にはふたりの刑事が待機している。今すぐの逮捕を選ぶか、それとも２４時間の猶予か、好きなほうを選べ！」、愚図ったジェイコブも、結局サインしました。もちろん、外にいたふたりの男性は、刑事ではありません・・・・。

(蛇足)　アガサ・クリスティは同性には厳しい作家です(男性にも厳しいのですが)。５０歳のペンジェリー夫人は、最後の恋を２０歳若いジェイコブに求めたという設定になっています。

(追記)　名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロでは、一部しか検索できません)。