第5016回「名探偵ポワロ中短編、その39、マーケット・ペイジングの怪事件、ストーリーネタバレ」 | 新稀少堂日記

第5016回「名探偵ポワロ中短編、その39、マーケット・ペイジングの怪事件、ストーリーネタバレ」

 第5016回は、「名探偵ポワロ中短編、その39、マーケット・ペイジングの怪事件、ストーリー、ネタバレ」です。


 この第四短編(短編集「教会で死んだ男」に収録)も、第二短編「潜水艦の設計図」と同じく、他の作品と同種のトリックとプロットが使われています。ただ、「潜水艦の設計図」ほどそっくりではありませんが・・・・。文末に、その作品名を記しておきます。


「その39 マーケット・プレイジングの怪事件」

 この短編で、ジャップ警部が植物に大変な関心を示していることが紹介されています。「老後は、田園地帯に家を買い、のんびり暮らしたい」、ジャップ警部なら、そのとおりに実践したかもしれません。ポワロ、ヘースティングス、ジャップの三人は、休暇を利用して、仕事から離れて田舎町のマーケット・プレイジングにやってきていたのです。


 三人は男だけで、旅館に宿泊します。もちろん、のんびりするためです。ですが、この三人に怪事件が報告されました。廃墟とも言うべき広大な屋敷の中で、密室状態で自殺死体が発見されたというのです。ただ、完璧な密室ではありません、鍵が発見されなかったからです。そのため、頑丈なドアを壊して入りました。窓も中から施錠されていました。


 では、なぜ単なる自殺にジャップ警部が呼ばれたのでしょうか。死体は、右手に拳銃を持っていました。ですが、撃ったのは左耳の後でした。自殺者が、そんな箇所を撃つはずがありません。ジャップ警部が逮捕したのは、被害者を脅迫していたパーカーという男です。招かれざる客として屋敷に宿泊していました。


 被害者のプロザローは、亡くなる直前、パーカーと言い争っていました。近所を通りかかった浮浪者が目撃しています。プロザローは海軍に大尉として勤務していました。巡洋艦メリーソート号の撃沈事件に関与していたようです・・・・(撃沈事件の詳細は語られていません)。脅迫されたのは、その事件のためです。


 事件関係者は、ごくわずかです。脅迫者パーカーとその妻、そして永年召使いとして働いてきたミス・クレッグの3人だけです。パーカーは、予審審問の場に引き出されます。ポワロは、既に解決に至っていました。ある人物を呼び出すために、手紙を出します・・・・。


 以下、最後まで書きますのでネタバレになります。


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 ポワロが着目したのは、灰皿に多数の吸殻があったのですが、煙草の臭いがしなかったことです。窓は開けられていたのではないか・・・・。以降の推理は極めて単純です。もともと殺人ではなかった、自殺を偽装したものだと・・・・。


 その偽装を施したのは、プロザロー大尉を尊敬していた召使いのミス・クレッグです。ですが、クレッグの目的は、パーカーを有罪にすることではありませんでした。どこかの時点で、真実を明らかにするつもりでした・・・・・。あくまでパーカーを懲らしめたいと考えたのです。ミス・クレッグは、素直に告白します。


(蛇足) この短編のトリックとプロットは、短編集「死人の鏡」に収録されている「厩舎街(ミューズ)の殺人」と同じです。この作品では、"ガイ・フォークスの夜"も盛り込まれ、小説としても面白い作品に仕上がっています。ただ、「マーケット・ペイジングの怪事件」の方が、先に書いた作品だと思われます(クリスティ作品では、執筆時期と発表時期が大きく異なっています)。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11272882711.html


(追記) 名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロでは、一部しか検索できません)。