第4867回「名探偵ポワロ中短編、その29、ステュムパロスの鳥、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険) | 新稀少堂日記

第4867回「名探偵ポワロ中短編、その29、ステュムパロスの鳥、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)

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 第4867回は、「名探偵ポワロ中短編、その29、ステュムパロスの鳥、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)です。


 『 ステュムパーリデスの鳥は、翼、爪、くちばしが青銅でできていた。ヘラクレスはこの恐るべき怪鳥どもを驚かせて飛び立たせるため、ヘパイストスからとてつもなく大きな音を立てるガラガラ(彼の工房のキュクロプス達の目覚まし用)を借り受け、音に驚いた鳥が飛び立ったところをヒュドラー(ヒドラ)の毒矢で射落としたとも、矢が効かないので彼に襲い掛かってくるところを1羽ずつ捕らえて絞め殺したとも言う。 』(ウィキペディア)


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「ヘラクレス第6の功業 ステュムパロスの鳥」

 30ページほどの短編なのですが、ポワロが登場するのは、最後の数ページだけです。物語は、新進政治家のハロルド・ウォーリング(30歳前後)の視点から語られます。舞台は、日本人にもイギリス人にもなじみのないスロヴァキアの湖畔にあるリゾートホテルです(伏線です)。


 ハロルドは、そこで母娘と出会います。ライス未亡人は、大変な子煩悩な女性です。娘のエルジー・クレイトンは既婚なのですが、実に華奢で繊細な美人です。夫のドメスティック・バイオレンスを怖れている節があり、今回は夫を家に残しての休暇でした。夫の嫉妬深さを切々と語ります。


 ハロルドは、エルジーに魅かれますが、結婚していると聞き、以降は紳士的な態度を取っています。そんな時に、50歳前後の魔女のような黒衣の姉妹が宿泊することになったのです。カラスをイメージさせる不気味な姉妹です・・・・。どうもポーランド人のようです。


 エルジーは、ホテル近くの林の中で、偶然出会ったハロルドに夫に対する不満と恐怖を語ります。そんな様子を、魔女のような姉妹のひとりが、見つめていました。ハロルドと視線が交錯します。その夜、エルジーの夫が、ホテルに乗り込んで来たのです。嫉妬に狂った夫は、エルジーと争います。その時、防御のために、文鎮を投げたのですが・・・・。


 ハロルドが駆けつけたときには、エルジーの夫は倒れていました。「今あなたがここにいるのを見られるとまずいわ。ひとまず部屋に帰って」、日中のこともあり、ハロルドは部屋に戻ります。30分後、ハロルドの部屋をノックしたのは、エルジーの母親であるライス夫人でした。エルジーの夫・フィリップの死を告げます・・・・。


 謀殺ではないとはいえ、旅先でエルジーは困った立場に立たされました。そのことは、政治家を志すハロルドにとっても、一挙にスキャンダルに巻き込まれたと言えます。思いつきで、ハロルドは、ライス夫人に死体を埋めようと提案します。もちろん、ライス夫人が応じるわけがありません。


 ライス夫人は、3人の中では、最も語学が堪能でした。そんな夫人が、現地警察、ホテル関係者にもみ消し工作をしようと言い出したのです。"幸い"ここはスロヴァキアです。金をばら撒けば、簡単に事件性をもみ消し、単なる転倒事故にできるであろうと・・・・。そのためには、先ず金が必要です。ハロルドは急遽イギリスから送金させます。


 ホテルの部屋に警官たちが押し寄せます。贈賄すべき人間は、ホテル関係者を含めると10人以上に達しました。ハロルドは、交渉はライス夫人に任せ、自宅に閉じこもります・・・・。そして、事件は、汽車からの転落事故で片づけられることになりました。事件解決を祝って、3人はホテルのロビーで祝杯を上げます。


 ところが、あの魔女のような女がやってきたのです。ポーランド語で話す"魔女"に対応したのは、ライス夫人でした。ポーランド女性が立ち去った後、ライス夫人はあの姉妹が金を要求していると告げます・・・。一難は去ったものの、"ステュムパロスの鳥"(脅迫者)が新たに現われたのです。


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 もともと、ハロルドは陽気なタイプです。ですが、さすがのハロルドも参っています。あらためてイギリスから送金させます・・・・。落ち込んだハロルドは、林を散策します。実に憂鬱な気分です。そんな彼に声をかけた人物がいたのです。大きなヒゲを生やしたポワロと名乗る人物でした。「明日の今頃には、すべてが解決しているでしょう」


 翌日、ニコニコしているポワロが、ハロルドに語ります。「あのふたりは、もう悪事を働くことはできないでしょう。警察が身柄を確保しました。大陸を荒らしていた詐欺師です」、ハロルドは庭に視線を移します。あの黒衣の姉妹が歩いているではありませんか。ハロルドは、ポワロに疑問をぶつけます。


 「あの黒衣の姉妹は、ふつうの旅行客ですよ。あなたが、ライス夫人とエルジーと考えている二人は、これまでに数多くの詐欺を働いてきました。エルジーの夫なども実在していません。ライス夫人が演じていたのです」、たしかにライス夫人とフィリップが当時に現われるシーンはありません。


 事件後駆けつけた警官たちも、別件でライス夫人が呼び寄せたものだと、ポワロは断定します。例えば、部屋の中で貴重品が盗まれたとか・・・・。全ては、ハロルドが外国語に興味を示さなかったからです。イギリス人は、(日本人と同様に)外国語に興味を示さない国民性だとクリスティは語っています・・・・。ハロルドは、もちろん英語しか分かりませんでした。


(補足) 2枚の写真は、ウィキペディアから引用しました。


(追記) 「ヘラクレスの冒険 全12編」は、スーシェ主演ではドラマ化されていません。なお、名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロでは、一部しか検索できません)。