第4860回「名探偵ポワロ中短編、その25、レルネーのヒドラ、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険) | 新稀少堂日記

第4860回「名探偵ポワロ中短編、その25、レルネーのヒドラ、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)

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 第4860回は、「名探偵ポワロ中短編、その25、レルネーのヒドラ、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)です。ヒドラ(ヒュドラー)は、ギリシア神話中でも、最高に魅力的なキャラクターです。


 『テューポーンとエキドナの子で、ヘラがヘラクレスと戦わせるために育てたとされる。犬のような巨大な胴体と9つ(5から100までの異説がある)の首を持ち、一本の首を切り落としても、すぐにそこから新しい2本の首が生えてくる。絵画などでは前足と後ろ足、翼を持った姿で表される事も』(ウィキペディア)


 冒頭の絵画は、ギュスターヴ・モローが描いた「ヘラクレスとレルネーのヒドラ」です。実にイマジネーションをかき立てる絵です・・・・。ヘラクレスは、ヒドラの首を刎ねますが、増殖します。彼を助けたのが、甥のイオラーオスです。続けて、ウィキペディアから引用します(写真もウィキから引用)。


 『 ・・・・ イオラーオスは、首の切り口を松明の炎で焼き焦がす方法を思いついた。ヘラクレスが首を切り落とし、イオラーオスが次々にその切り口を焼いた。ヒュドラーを殺すには、真ん中にある1つの不死身の首を何とかしなければならなかったが、ヘラクレスはその首を巨大な岩の下敷きにして倒した。


 そしてヒュドラーはうみへび座となった。一説によると、ヘラクレスの死を願うヘラはこの戦いで、彼の足を切らせるために化け蟹を送り込んだという。しかし、ヘラクレスはヒュドラーとの戦いの中にあったため、全く気付かずにこれを踏み潰してしまっていた。そしてこの蟹がかに座となった。・・・・ 』


 ポワロは、ヒドラの増殖性と"人の噂"を結び付けます。「人の噂も七十五日」ですが、イギリス郊外の田園地帯では、そういうわけにもいきません。


「ヘラクレス第2の功業 レルネーのヒドラ」

 依頼者は、バークシャー州の田舎町で開業医をしている、チャールズ・オールドフィールド医師でした。ある噂のために、患者が激減し、村を歩いていても人々が避けるようになったとこぼします。何かいい対処方法がないか、というのがチャールズの相談でした。


 チャールズの妻は、5歳年上なのですが、最近胃潰瘍のために亡くなりました。噂の内容は、毒殺ではないかというものです・・・・。確かに、チャールズは、妻の遺産として3万ポンド(現在価値3億円?)を相続しています。


 ここで、ポワロはお引取り願いたいと言い出します。「女がらみの話でなければ、そもそも噂になどはなりません」、不承不承、チャールズはジーンについて話し始めます。「ジーンは、私の診療所で薬剤師をしています。私とは相思相愛の仲なのですが、噂のため、結婚は流れようとしています」


 村に着いたポワロは、ジーンと話し合います。検死のため、遺体の発掘を彼女に提案したのですが、ジーンは消極的です。何か隠しているようです。結果的に、発掘は実行されることになりますが・・・・。


 では、チャールズと関係があるのは彼女だけでしょうか。ポワロは、ジーンの紹介で村一番のゴシップ・ハンターであるス・レザランを紹介してもらいます。ミス・レザランの口は止まりません・・・・。ポワロは、噂話の元をたどっていきます。こんなことで解決できるのでしょうか。


 そして、たどり着いたのが、解雇された召使いのベアトリスでした。どうも彼女が、噂の源のようです。一方、村では遺体の発掘が行われていました。そんな中、ジーンの下宿先から、ヒ素入りのコンパクトが発見されたのです。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 ポワロは、召使いのジョージも同行させていました。そして、ある人物をマークさせていたのです。看護師のミス・ハリソンでした。彼女が、ヒ素入りのコンパクトをジーンの部屋に置いたのです。ミス・ハリソンも、チャールズを愛していたのです。一部始終をジョージは目撃していました。


 ジーンは、薬剤師の立場から、ヒ素が減っていることに気付いていました。「チャールズがもしかしたら、妻にヒ素を・・・・」、そう考えたジーンは、発掘に反対しましたし、劇薬の台帳も辻褄を合わせていました。


 ミス・ハリソンにも同情すべき点がありました。気難しいチャールズの妻を看護し続けたのですから・・・・。そして、最後にはヒ素を盛りました。ポワロは、ミス・ハリソンをこう評します。「ミス・ハリソンは、こんなことをしなかったら、良き妻となり、良き母親になったでしょう。あわれなことです」


 ポワロは、しあわせそうなチャールズと恥らう若いジーンを、見つめます。


(追記) 「ヘラクレスの冒険 全12編」は、スーシェ主演ではドラマ化されていません。なお、名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロでは、一部しか検索できません)。