第4859回「名探偵ポワロ中短編、その24、ネメアの谷のライオン、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険) | 新稀少堂日記

第4859回「名探偵ポワロ中短編、その24、ネメアの谷のライオン、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)

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 第4859回は、「名探偵ポワロ中短編、その24、ネメアの谷のライオン、ネタバレ」(ヘラクレスの冒険)です。ポワロのファースト・ネームであるエルキュールは、ヘラクレスのフランス語読みです。そのことを真っ向からあてこすったのが、ポワロの知人であるバートン博士でした。小男のポワロとヘラクレスとは違いすぎると・・・・。


 ですが、バートン博士の露骨な指摘は、引退を考えていたポワロに新たな冒険をもたらすことになります。引退までに「ヘラクレスの12の功業」に匹敵するような12の事件を解決しようと・・・・。ポワロは、持ち込まれた事件を、ヘラクレスの偉業に擬(なぞら)えていきます。


 当然、この短編集には、導入編を除くと12編の短編が収録されています。20ページから40ページ程度の短めの短編です。


「ヘラクレス第1の功業 ネメアの谷のライオン」

 この功業は、『ネメアの獅子は刃物を通さない皮を持っていたが、ヘラクレスは棍棒で殴って悶絶させ、絞め殺した。この獅子は後にしし座となった。以後、彼は殺した獅子の皮を頭からかぶり、よろいとして用いた」(ウィキペディア)というものです。


 ポワロに持ち込まれた事件は、ライオンならぬチンの誘拐事件でした。「なんたる侮辱」、しかし、ポワロはチン探しの仕事を請けたのです。ライオンには、人気者という意味もあったからです。依頼者は、ジョーゼフ・ホギン卿でした。卿に内緒で妻が、犬の身代金に200ポンド払ったことが、卿の自尊心を大いに傷付けたようです。


 身代金を送付後に犬は戻ってきました。ジョーゼフ卿が依頼してきたことには理由がありました。友人も、同様の被害にあったことが判明したからです。ポワロは、卿の自動車で屋敷に向います。夫人を紹介すると、さっさと卿は立ち去ります。ポワロは、誘拐当時の状況と身代金の受け渡し方法を聞きだします。


 当時、ミス・カーナビ(老嬢)が、公園でチンを散歩させていました。偶然乳母車を押す見知らぬ婦人に出会いました。赤ちゃんの可愛さのあまり、乳母車の中をのぞき、婦人と立ち話をしました。気付くと紐(リード)が切られており、犬は消えていました。公園中を探しましたが、犬は見えませんでした・・・・。


 そして、脅迫状が届いたのです。「1ポンド紙幣200枚を小包にして、某所のカーティス大尉宛に送られたし。万一、警察に届ければ、犬の尻尾と耳が切り取られるであろう」(要旨)と書かれていました。指示通りにすると、犬は戻ってきました。脅迫状は手元にあるかと聞くと、犯人は小包と同封するようにとの指示があったそうです。


 ポワロは、某所のカーティス大尉の元に向います。簡単な事件だと思われたのですが・・・・。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 発送先の住所は、ホテルでした。ホテルでは、宿泊者と宿泊予定者の郵便物を預かっていたのです。ただ、ある期間を過ぎると郵便局に、宛先人不明で返していたようですが・・・・。カーナビ中尉宛の郵便物は確かにありましたが、中味は200ポンドはなく、新聞紙でした。


 しかし、ポワロは、全ては公園にあったと考えます。犬が誘拐されたと証言しているのはミス・カーナビの証言だけでした。そして、カーティス宛の身代金の入った小包を発送したのも、彼女でした。200ポンドは抜き取り、新聞紙を発送していたのです。


 ミス・カーナビは、既に初老でした。老後を心配していたのです。彼女は、老嬢たちの互助グループを結成していました。犬の身代金は、老後の資金でした・・・・。


 ポワロは、依頼者であるジョージ卿と面会します。「私は警官ではありません。今回のことを事件化しなければ、お支払いになった身代金は戻ってきます。いかがなさいますか」、ジョージ卿の自尊心は満たされました。事件を闇に葬ることにします。戻ってきた200ポンドは、ポワロへの報酬として、そのまま支払われます。


 ポワロが手にした200ポンドは、老嬢たちのグループに寄附されました。現在日本にも通じる問題です。


(追記) 「ヘラクレスの冒険 全12編」は、スーシェ主演ではドラマ化されていません。なお、名探偵ポワロ・シリーズについて、過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください(ポ"ア"ロと入力しますと、一部しか検索できません)。