第4848回「名探偵ポワロ中短編、その22、二十四羽の黒つぐみ、ネタバレ」(CPの冒険) | 新稀少堂日記

第4848回「名探偵ポワロ中短編、その22、二十四羽の黒つぐみ、ネタバレ」(CPの冒険)

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 第4848回は、「名探偵ポワロ中短編、その22、二十四羽の黒つぐみ、ネタバレ」(CPの冒険)です。タイトルにつきましては、若干の説明が必要です。二十四羽の黒ツグミは、マザー・グース「6ペンスの唄」の一節で歌われています。ウィキペディアから、冒頭部分を引用します。


 『 6ペンスの唄を歌おう  ポケットにはライ麦がいっぱい  24羽の黒ツグミ  パイの中で焼き込められた ・・・・』


 この後、パイを切り分けようとしますと、黒ツグミが飛び出します。そして、侍女の鼻をつつきます・・・・。黒つぐみは、黒いちごのパイのメタファー(隠喩)になっています。黒いちごのパイこそ、犯人の鼻をつつくことになったのです。


「その22、二十四羽の黒つぐみ」

 芸術家街とも言うべきキングス・ロードにあるレストラン"ギャラント・エンデヴァ"で、ポワロは友人であるボニントンと食事を取ります。その食事の時に出た話題が、事件の契機になりました。


 ボニントンは語ります。「毎週、火曜日と木曜日に、必ずひとりの老人が、あの席で食事を取っている。ところが、先週は月曜日にもやってきたのだ。何か心配事でもあったのか、好き嫌いのはっきりしていた老人が、嫌いなはずのキドニー、黒いちごのパイ、濃い目のスープなど、全て嫌いなメニューをオーダーしたんだ」


 翌火曜日も、いつもどおり来たそうです。住所・氏名すら分からない常連客の老人の特徴は、特に際立っていました。画家らしく時代遅れの衣服を着ており、ヒゲなども目立っていました。身なりにも関わらず、妙に威厳のある老人でした。


 ところが、翌週からパッタリとレストランに来なくなったというのです。老人に何かあったのでしょうか、ボニントンは自らの推理を語ります。一方、ポワロは翌日から行動を開始します。地区の死亡者名簿を洗います。どうも、ヘンリー・ガスコインという69歳の男性が、あの常連客だったようです。


 ヘンリーには、金持ちの双子の兄・アンソニイがいました。調べると、双子の兄弟は同じ日に亡くなっていました。兄のアンソニーは明らかに病死でしたが、ヘンリーについては階段からの事故死だと、警察は断定しています。甥のジョージ・ロマリーが出した手紙の消印から、ふたつのことが判明しました。


1. アンソニーの亡くなったのは、ヘンリーの死より、数時間ほど先でした。ヘンリは生きていれば、弟以外に身寄りのないアンソニーの遺産は全額ヘンリーに渡ったはずでした。


2. 結局、アンソニーの遺産は、全額ヘンリーを経由して甥のジョージに流れることになりました。ただ、ジョージには磐石のアリバイがありました。


 ヘンリーの死亡日時は、遺体の検視所見、手紙の消印から推定された配達時間、ヘンリー老人のレストランでの食事時間などから総合的に判定されています。ポワロは、甥のジョージに会うことにします。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 ジョージは開業医でした。夕食後、診療室で会います。ポワロは、ずばり指摘します。「あなたは、伯父に変装し、月曜日、ギャラント・エンデヴァに行きましたね。変装はばれずに済みましたが、最大の失敗を犯しました。伯父さんの嫌いなものをオーダーしたことです。伯父さんが亡くなった時、歯は白かったのです。黒いちごのパイを食べていれば、歯は黒ずんでいたはずです。手紙の消印を消したのもあなたですね?」


 追いつめられたジョージは簡単に自白します。ところで、ヒゲは、特徴がありすぎて本来の個性を消します。そのことをジョージは逆手に取ったのです。そして、犯行当日、もう一度ギャラント・エンデヴァに出かけ、完璧なアリバイを作りました。ですが、ジョージのアリバイを崩したのは、「二十四羽の黒つぐみ(黒いちごのパイ)」でした。歯が真っ黒になるそうです。


(補足) 黒つぐみの写真は、ウィキペディアから引用しました。


(追記) 短編につきましては、デアゴスティーニ社の「1話1巻」方式に不満を感じていますので、購入は差し控えています。場所を取るだけに、「2話1巻」方式で出してもらいたかったというのが本音です。


 なお、スーシェ主演でドラマ化された作品につきましては、短編についても、原作に基づき、以降順次取れ上げていくつもりです。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください。