第４８４７回「名探偵ポワロ中短編、その２１、負け犬、ネタバレ」(CPの冒険)

　第４８４７回は、「名探偵ポワロ中短編、その２１、負け犬、ネタバレ」(CPの冒険)です。ポワロは、吠える犬は噛み付かないと話しています。そして、本当に怖いのは、吠えずに怒りを溜めている犬だと・・・・。それが、タイトルの「負け犬」になっています。負け犬は、怒りを蓄積した結果、キレて噛み付くと・・・・。

「その２１、負け犬」

　この短編集では、最も長い作品です。正直、水準作とは思えません。ですが、面白いおばあさんが登場します。彼女は"直感"に従い、逮捕されている容疑者は無実だと断じ、さらに"直感"によって犯人を指摘しています。ずばり、被害者の秘書であるトレファシスだと・・・・。老婆の指摘は正しかったのでしょうか。

　ポワロが依頼されたのは、ルーベン・アストウェル卿殺人事件の調査です。容疑者は簡単に発見されました。相続人のひとりであるレバースンでした。現場で、被害者のものと思われる血痕つきの指紋が残されていたのです。ミラー警部によって、早い段階で身柄を確保されています。

　それに対し、アストウェル夫人は、直感によってレバースンを信じると言い出したのです。さらに、直感によって、犯人は秘書だと断定しています。彼女の依頼を取り次いだのは、コンパニオン(職業としての話し相手)のリリー・マーグレイブでした。ですが、リリーは、夫人は認知症ぎみだとも付け加えています。「私は、直感など信じない」とも・・・・。

　ここで、ルーベン卿殺しに多少なりとも動機のある者を列挙しておきます。

①　チャールズ・レバースン・・・・　ルーベン卿の甥にあたり、相続権があります。現在拘束中の容疑者です。

②　アストウェル夫人・・・・　ルーベン卿の妻であり、レバースンと遺産を二分することになっています。リリーが言うように、認知症でしょうか。出身は、決して高い身分ではありません。

③　リリー・マーグレイブ・・・・　夫人(②)のコンパニオンですが、ルーベン卿からは解雇を言い渡されています。

④　ビクター・アストウェル・・・・　ルーベン卿の弟、喧嘩早い人物です。よく"吠え"ます。相続権はありません。

⑤　オーエン・トレファシス・・・・　ルーベン卿の秘書です。長年、卿からは罵られてきました。彼が、ポワロの言う"負け犬"でしょうか。夫人(②)は、彼が犯人だと断定しています。

　ポワロの捜査は、のんびりしたものでした。館の人間は、居心地のいい館に満足し、ポワロが居つくのではないかと揶揄したりしています・・・・。

　ポワロが滞在中にやったのは、関係者全員の指紋を取ったり、庭の足跡を追ったり、専門の医師を呼んでアストウェル夫人に催眠術をかけたりと、埒(らち)のあかないことばかりでした。そして、露骨に容疑者全員の部屋の中をかき回したのです。

　しかし、ある日、ロンドンに行って来ると言い出します。今日中に帰るから、全員を殺害現場に集めておくように、召使いに指示します。そして、・・・・。以下最後まで書きますのでネタバレになります。アストウェル夫人の"直感"は当っていたのでしょうか。そして、"負け犬"は誰だったのでしょうか。

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　ポワロの露骨な調査は、すべて"負け犬"をあぶりだすものでした。やはりアストウェル夫人(②)の直感は当っていたのです。犯人は、ルーベン卿に苛め抜かれたトレファシス(⑤)でした。蓄積されたストレスは、犯行時に最大に高まりました。そして、最後の言葉をルーベン卿は投げつけます・・・・。

　レバースン(①)は、トレファシスの犯行後に部屋に入っています。死んでいるとは夢にも思わなかったルーベン卿の肩に触れると、卿の体は崩れました。指紋の付いた血痕はその際に着いたものです。あわてて、レバースンは逃げ出します。こうして、第一容疑者となりました。

　トレファシスは、犯行を自供します・・・・。

(蛇足)　催眠術をかけられた際、アストウェル夫人は、カーテンの後ろに人がいたと指摘しています。それは、トレファシスが忘れ物を取りに来た際、夫婦が言い争っていましたので、入るに入れず、カーテンの後ろで待っていたのです。犯人指摘の証拠としては弱いものです。

(追記)　短編につきましては、デアゴスティーニ社の「１話１巻」方式に不満を感じていますので、購入は差し控えています。場所を取るだけに、「２話１巻」方式で出してもらいたかったというのが本音です。

　なお、スーシェ主演でドラマ化された作品につきましては、短編についても、原作に基づき、以降順次取れ上げていくつもりです。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください。