第4837回「名探偵ポワロ中短編、その19クリスマス・プディングの冒険、ネタバレ」(CPの冒険) | 新稀少堂日記

第4837回「名探偵ポワロ中短編、その19クリスマス・プディングの冒険、ネタバレ」(CPの冒険)

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 第4837回は、「名探偵ポワロ中短編、その19、クリスマス・プディングの冒険、ネタバレ」(CPの冒険)です。


 短編集「クリスマス・プディングの冒険」には、ポワロもの5編とミス・マープルもの1篇が収録されています。なお、ポワロものは、中編3篇と短編2編という構成になっています。クリスティ円熟期の作品ですので、安心して読めます。


「その19 クリスマス・プディングの冒険」

 今回の依頼者は、外務省高官のジェスモンド氏です。事件を起こしたのは、東洋の某国の王子です。ロイヤル・ウェデングが近い王子は、ロンドンで破目を外しました。いかがわしいダンサーに、家宝とも言うべきルビーを盗まれたのです。


 王子が多数の宝石をロンドンに持参したのには理由があります。昔風の台座から外し、現代的な意匠に切り替えたかったからです。当然、そのルビーは、見る人が見れば、某国の王宮から流出したものだと分かります・・・・。イギリス政府としても、某国に波乱・動乱が起きてほしくなかったのです。


 かくして、ポワロは、すこぶる快適なキングス・レイシイの屋敷でクリスマスを迎えることになりました。もちろん、寒さに弱いポワロが泊まる屋敷には暖房が完備されています。


 ポワロがまず最初に会ったのは、レイシイ老夫人でした。古風な人物ですが、両親のいない孫娘には、今風の放任主義で育ててきました。言葉の端々から孫娘への愛情が感じられます。そして、セアラは賢く優しい娘に育ったのですが・・・・。ところが、つまらない男と付き合っていたのです。


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 レイシイ老夫人は、レイシイ家での古風なクリスマスについても語ります。今なお、クリスマス・プディングには、何がしかの物を入れて家族と客に出すと・・・・。ただ、誰に何が配られるかは分かりません、ランダムに出されるサプライズ演出です。


 クリスマス当日、レイシイ家に一族の者と古い友人が集まります。異例の客としては、セアラが現在付き合っているデズモンド・リーウォトリイという青年も訪れています。セアラが呼んだのです。デズモンドは妹も連れてきたのですが、病気のために部屋から一歩も出ていません。


 ポワロは、老夫人によって、全員に紹介されます。もちろん、探偵さんだと・・・・。それを聞いて喜んだが、子どもたちでした。探偵さんのために殺人事件を作ろうと言い出します。天気は、クリスマスらしい空模様です。ホワイト・クリスマスになりそうです。


 そして、2時から正餐が始ります。最後にはクリスマス・プディングが配られます。しかし、ポワロは警告を受けていたのです。「クリスマス・プディングには手をつけてはならない」、どういう意味でしょうか、そして何者が寄こしたのでしょうか。短いメッセージは、ポワロの部屋に置かれていました。


 大きなプディングを切り分けたのは、レイシイ老夫人でした。ポワロのプディングからは、"生涯独身"を暗示するボタンが出てきました。当っています。レイシイ老大佐のプディングの中から出てきたものを見て、老人は激怒します。「けしからん! ガラス片など入れて」、赤い色をしていました。


 そっと、ポワロは赤いガラス片をポケットに入れます・・・・。出席者の中で、ポワロの行動を見ていたのは、デズモンドだけでした。パーティは、続きます。コリンという少年が引いたのは、"ブタ"でした。子どもたちがはやし立てます。「コリンにブタが当った!ブタだ、ブタだ!」 一方、金貨が当った子もいます。


 その夜、ポワロの眠っている部屋に、ひとりの侵入者がいました。部屋中を調べますが、見つからず、部屋を去ります・・・・。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 正餐後、ポワロは食堂で、ロスおばあさんから確認しています。「いつもクリスマス・プディング作りのために使っていた型が壊れていたの。新しい型は間に合わないので、正月用の型で今回は間に合わせたの」、ポワロにとってはすべてが一つにつながりました。


 翌朝、ポワロは子どもたちに起こされます。ブリジットという名の少女が、雪の上で倒れているというのです。雪が赤く染まっていると・・・・。子どもたちは、自分たちの推理をポワロに語ります。「雪に残された足跡は、三つある。ブリジットのものと、犯人が往復して残したものと」


 セアラも、デズモンドも駆けつけてきます。ポワロは、極力足跡を乱さないように、森側からブリジットに近づきます。「死んでいる」、しかし、子どもたちもデズモンドも信じません。近づいてきたデズモンドに、ポワロは脈の有無を確認させます。「ない! 死んでる」


 ポワロは、ブリジットの固く閉じた手のひらを開けます。ルビーが握られていました。デズモンドは、ルビーをもぎ取り走りだします。「警察を呼んでくる」、しかし、戻ってきませんでした。王宮のルビーを奪ったのは、デズモンドと妹と称する共犯者でした(妹が問題のダンサーだと暗示しています。そのため、病気を理由にして一歩も室外に出なかった・・・・)。


 当分の隠し場所に選んだのが正月用のプディングの型の中でした、正月用なら時間が稼げるはず・・・・。ですが、クリスマス用が壊れたために、食堂では急遽正月用でプディングを作りました。それが全ての破綻の原因になりました。ポワロの部屋の中を調べまわったのも、デズモンドでした。


 もちろんブリジットは死んではいません。ポワロは、子どもたちの打ち合わせを漏れ聞いていたのです。そして、犯人のあぶり出しに、子どもたちの計画を利用したのです。雪の上で横たわっている間、ブリジットは止血帯をつけられていました。そのため、脈が途絶えたのです。ブリジットも、ポワロから打ち明けられた時、喜んで協力を申し出ています。


 デズモンドと犯行に直接関わったダンサーの逮捕には、ポワロも依頼者も興味はありませんでした。高度な政治的な問題だったからです。何より、セアラの目も覚めました・・・・。そして、何よりもポワロを喜ばせたのが、ブリジットの一言でした。「ポワロさん、ヤドリギの下に立ってください。そうすれば・・・・」


 「ヤドリギの下にいる人には、誰でもキスをしていい」、古い伝承です。


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(補足) クリスマス・プディングとヤドリギの写真は、ウィキペディアから引用しました。


(追記) 短編につきましては、デアゴスティーニ社の「1話1巻」方式に不満を感じていますので、購入は差し控えています。場所を取るだけに、「2話1巻」方式で出してもらいたかったというのが本音です。


 なお、スーシェ主演でドラマ化された作品につきましては、短編についても、原作に基づき、以降順次取れ上げていくつもりです。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください。