第4826回「名探偵ポワロ中短編、その17&18、チョコレートの箱ほか、ネタバレ」(ポアロ登場) | 新稀少堂日記

第4826回「名探偵ポワロ中短編、その17&18、チョコレートの箱ほか、ネタバレ」(ポアロ登場)

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 第4826回は、「名探偵ポワロ中短編、その17&18、チョコレートの箱ほか、ネタバレ」(ポアロ登場)です。今回で、第一短編集「ポアロの冒険 全14篇」を紹介し終わったことになります。短めの短編で構成されていますので、円熟期のクリスティの特徴である"読み応え"には欠けています。


 その中でも面白かったのは、ファラオの呪いをモチーフとした「エジプト墳墓の謎」と、依頼者の魅力が際立っていた「謎の遺言書」でした・・・・。


「その17、消えた廃坑」

 ポワロとヘースティングスは、資産運用について世間話をします。その際に出たのが、ポワロが所有しているビルマ鉱業の株式についてでした。事件解決の報酬としてもらったものです。ポワロは、自らの言葉で、ヘースティングスに事件を語ります・・・・。


 ところで、"ノックスの十戒"というものがあります。この掟を破るとミステリーとして破綻すると、推理作家を戒めたものでした。その中に、「中国人を登場させてはならない」というのがあります。この短編にも中国人が登場しますが、残念ながら、ノックスの指摘が正しかったことを証明しています。


 中国人によって、ビルマ(ミャンマー)で長い間、銀を採掘してきましたが、現在では廃坑になっています。しかし、拙劣な鉱山技術で開発してきた経緯がありますので、鉱山としての価値は減じていません。そこに眼をつけたのが、イギリスの企業、ビルマ鉱業でした。鉱山の現オーナーである呉齢を、ロンドンに呼び寄せます・・・・。


 ところが、契約当日に呉齢は失踪し、2日後に死体となって発見されたのです。契約に関する書類は、身辺から発見されませんでした。そこでビルマ鉱業が雇ったのが、ポワロでした。ピアスンという重役と共に、ポワロは捜査を進めます。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 先ず、ポワロが行ったのは事実関係の整理です。ビルマ鉱業のピアソンとミラー警部から情報を得ます。呉齢失踪には、ロンドン在住の中国人たちの影が色濃く反映していました。ポワロが重い腰を上げます。ピアソンと一緒に行ったのは、阿片窟でした・・・・。


 翌日、ピアソンの身柄は、ミラー警部によって確保されます。中国人を使って、呉齢から書類を取り上げたのですが、中国人が暴走したのです。呉齢を中国流に処理してしまったのです。まさか殺すとは、ピアソンは思わなかったのです。ミラーの自宅から、呉齢の書類が発見されます・・・・。


 やはり失敗作です。


「その18、チョコレートの箱」

 嵐の夜、ポワロはベルギー時代の失敗談を、ヘースティングス大尉に語ります。


 休暇を取ったばかりのポワロを、ひとりの女性が訪れます。3日前に急死したフランス人代議士ポール・デルラールの死の真相を調査してほしいというのです。デルラールは、亡き妻の遺産をベースにのし上がってきた野心的な政治家でした。


 デルラールがなくなった夜、彼の自宅にいたのは、召使いを除くと

① デルラール老夫人・・・・ 亡きデルラールの母親、そこひ(白内障?緑内障?)を患っており、視力に障害がある未亡人です。散瞳のため、硫酸アトロピンを使用しています。


② ミス・メラール・・・・ 今回の依頼者です。デルラールの家に住み込んでいます。亡きデルラールを愛していたようです。修道院に入り、尼僧として生涯を送る決意をしています・・・・。


③ サン・アラール・・・・ デルラールのフランス人の友人です。のんびりした性格のようです。近くに住んでいます。


④ ジョン・ウイルソン・・・・ デルラールのイギリス人の友人です。狭心症のためか、デルラール夫人(①)と同じく、硫酸アトロピンを服用していました。


 ポワロは、仮に謀殺であると仮定すれば、毒殺だと推理します。使用されたのは、硫酸アトロピン・・・・。さらに、ポワロが注目したのが、残されていたチョコレートの箱でした。箱本体はピンクなのですが、何故か蓋は青でした。召使いに調べさせると、青の箱にピンクの蓋をした"チョコレートの箱"が見つかります・・・・。


 以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 ポワロは、ここで違法捜査をします。サン・アラール(③)の家に侵入したのです。そこで、床下に隠されていたジョン・ウィルソン(④)のために調剤された硫酸アトロピンの空き瓶を発見します・・・・。この段階で、ポワロは、"チョコレートの箱"の謎を無視していました。


 デルラール老夫人は、ポワロを呼び出し、捜査結果を問い質します。ポワロは、サン・アラールが犯人だと指摘します・・・・。老婦人は、意外な反応を示します。「ポワロさん、あなたは間違っています。犯人は私です。ほとんど目の見えない私ではありますが、息子が妻を突き落とし、殺した現場をはっきり目撃しました。さらに、息子はもうひとりの女性を不幸にしようとしていました。私は息子を許せまんでした・・・・」


 ポワロは、すべての答えは"チョコレートの箱"にあったとヘースティングスに告白します。晴眼者であれば、あのような間違いを犯さなかったであろうと・・・・。


(追記) 短編につきましては、デアゴスティーニ社の「1話1巻」方式に不満を感じていますので、購入は差し控えています。場所を取るだけに、「2話1巻」方式で出してもらいたかったというのが本音です。


 なお、スーシェ主演でドラマ化された作品につきましては、短編についても、原作に基づき、以降順次取れ上げていくつもりです。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください。