第4824回「名探偵ポワロ中短編、その15&16、ヴェールをかけた女ほかネタバレ」(ポアロ登場) | 新稀少堂日記

第4824回「名探偵ポワロ中短編、その15&16、ヴェールをかけた女ほかネタバレ」(ポアロ登場)

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 第4824回は、「名探偵ポワロ中短編、その15&16、ヴェールをかけた女ほか、ネタバレ」(ポアロ登場)です。


「その15 謎の遺言書」

 ヴァイオレット・マーシュという実に聡明な女性が依頼者です。賢明な女性なのですが、その知性を証明したのは、名探偵ポワロに依頼したことです(ポワロ本人も、そう言っています)。


 ヴァイオレットは、子どもの頃から自立心の旺盛な女性でした。そのことが、小金もちの叔父との衝突の原因になりました。「女などに学問は必要ない」、それが叔父の信念でした。両親を幼くして亡くしたヴァイオレットは、嫌でも叔父の世話にならざるを得ませんでした・・・・。


 叔父の信念をめぐり、長年にわたって二人は言い合ってきましたが、お互いが嫌いだったわけではありません。妻子のいない叔父は、それなりに姪を愛していたのです。ですが、表面上は、亡くなっても姪に相続させる気はない、全額福祉施設に遺贈すると、遺言書にはそう書かれていました・・・・。


 その一方で、「山りんご荘と家財道具は、私の1年間、姪に預ける。その間に賢明なヴァイオレットなら、自分の聡明さを証明するであろう」とも書かれていました。その遺言書を否定する別の遺言書が存在するのではないか、それがヴァイオレットの依頼内容です。


 "女だてらに"学問を通してきたヴァイオレットに、俺の挑戦を受けて見ろ、叔父はそう言い遺しているのです・・・・。果たして、そのような遺言書が存在するのでしょうか。ポワロは、山れんご荘に出向き、捜査を開始します。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 ポワロが最初に会ったのは、故人の世話をしていたベイカー夫妻でした。夫妻は遺言状の証人になった経緯を語ります。書き損じたために、書き直したとも話しています。その後、ヴァイオレットの叔父は、村の駄菓子屋に行っています。3年前のことですが、記憶に鮮明に残っているようです。そして、叔父は亡くなる前に、職人を呼んでいました。


 職人は、壁のレンガに細工をしていました。ですが、中には灰だけしかありませんでした。叔父が仕掛けたトラップだったのでしょうか、それとも第三者が遺言書を燃やしたのでしょうか。「やるべきことはやったから」と言って、ポワロは汽車に乗ります・・・・。


 突然、ポワロは汽車を乗り換え、山りんご荘に引き返します。閃いたのです。全ての謎は駄菓子屋にありました。ツケの明細を入れていた封筒を引き伸ばします。そして、ロウソクを近づけると・・・・。字が浮き上がってきたのです。「全ての財産を姪のヴァイオレットに遺贈する」と書かれ、証人として駄菓子屋夫妻が副署していました・・・・。


 同行していたヘースティングス大尉は、今回の件は、アンフェアだったと言い出します。「姪は解けなかったじゃないか」、それに対するポワロの回答は明快でした。「聡明であり、高等教育を受けた効果は、明確に現われているじゃないか。ポワロに頼んだことさ、餅は餅屋!」


 第一短編集「ポアロ登場」では、最も好きな短編です。ヴァイオレットのキャラクターも、当時の女性としては際立っています。


「その16 ヴェール(ベール)をかけた女」

 ポワロは退屈し、ねこのくしゃみのような溜息をついていました。そんなポワロに、ヘースティングス大尉は新聞記事を紹介します。ボンド街での宝石強奪事件、オランダでのイギリス人殺害事件など・・・・、ですが、ポワロには興味が感じられない事件ばかりでした。


 そこにやってきたのが、ヴェールをかけた女です。ミリセント・カッスル・ヴォーンだと自己紹介します。サウスシャー公との婚約で有名になった女性です。依頼の内容は、脅迫者ラヴィントンに一通の手紙を握られていることです。


 ポワロは、ラヴィントンに直談判します。ですが、一筋縄ではいかない男でした。逆に、ラヴィントンは自宅の住所を教えた上で、ポワロを挑発します。「火曜日まで留守にしている。探せるものなら、探してみろ」、ポワロは強硬手段に訴えます。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 ポワロは、留守宅に侵入します。明らかに違法行為です。推理を駆使して、手紙の在処を探し当てます。隠されていたのは、夏には使われるはずのない薪の中でした。叩くと真っ二つに割れました。手紙は箱の中に隠されていました。


 依頼者であるミリセント嬢を呼びます。手紙を返した上で、報酬として箱を頂きたいと、ポワロが告げますが・・・・。ミリセントの手が伸びたのです。ポワロは二重底の下から宝石を取り出します。冒頭で、ヘースティングス大尉が読み上げていたボンド街宝石強奪事件の"ブツ"でした。


 自称ミリセントも、脅迫者ラヴィントンも、仲間割れした強奪犯から宝石を取り戻すための芝居だったのです。オランダでのイギリス人殺害事件も、今回の事件の延長上にありました(やはりヘースティングスが新聞記事として読み上げています)。ジャップ警部が、影から現われ、偽ミリセントの身柄を確保します。


(追記) 短編につきましては、デアゴスティーニ社の「1話1巻」方式に不満を感じていますので、購入は差し控えています。場所を取るだけに、「2話1巻」方式で出してもらいたかったというのが本音です。


 なお、スーシェ主演でドラマ化された作品につきましては、短編についても、原作に基づき、以降順次取れ上げていくつもりです。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"名探偵ポワロ"と御入力ください。