第4793回「名探偵ポワロ中短編、その1、厩舎街の殺人、ストーリー、ネタバレ」(死人の鏡) | 新稀少堂日記

第4793回「名探偵ポワロ中短編、その1、厩舎街の殺人、ストーリー、ネタバレ」(死人の鏡)

新稀少堂日記


 第4793回は、「名探偵ポワロ中短編、その1、厩舎街(ミューズ)の殺人、ストーリー、ネタバレ」です。短編集「死人の鏡」には、中編3篇と短編1編が収録されています。やはり、中編は読み応えがあります。


「その1 厩舎街(ミューズ)の殺人」

 殺人とか、強盗には、「相応しい」夜があります。たとえば、チャイナタウンの旧正月、爆竹が激しく打ち鳴らされます。また、ハローウィンの夜、子どもだけでなく多数の大人が、本人の顔が分からないほど仮装しています。そして、日本の冬、老若男女を問わず、多くの人々がマスクで顔を隠しています・・・・。


 17世紀初頭の人物に、ガイ・フォークスという反逆者がいました。火薬を使った反乱を企てたのですが、逮捕されました。処刑されたのが11月5日、へんな話ですが、この夜をガイ・フォークス・ナイトと呼び、イギリスでは祝われてきたのです。街では花火が打ち上げれ、爆竹が大量に鳴らされます・・・・。


 ポワロたちが厩舎街(ミューズ)を通りかかったのも、その夜でした。「こういう夜には、爆竹の音にまぎれ、銃声がかき消される。殺人には、これほど相応しい夜はない」、ポワロの予言どおり、翌朝、ミューズで殺人遺体が発見されました。


 被害者は、若き美貌の未亡人アレンでした。当初、拳銃自殺だと思われていたのですが、他殺だと断定されました。理由は簡単です。撃ったのは頭の左側ですが、拳銃を握っていたのは、死者の右手でした。右手で、左の側頭部を撃つなど、多少の可能性があっても、不自然すぎます。


 第一発見者は、ルームシェアをしていたブレンダーリース嬢です。ふたりは、エジプト観光中に知り合いました。アレン夫人はインドからの帰途、ブレンダーリース嬢は休暇中のことでした。そんな第一発見者のブレンダーリース嬢は、昨晩は知人宅に泊まっていました。早朝、部屋に戻ったときに発見したのです。


 殺された部屋は、準密室とも言うべき状況でしたが、鍵は部屋の中では発見されていませんので、密室とは言えません。事件関係者は、3名です。


① ジェーン・ブレンダーリース・・・・ 第一発見者ですが、知人によって、完璧なアリバイが成立しています。率直に、バーバラの近況を語ります。ポワロとジャップ刑事が得た情報の多くは、彼女からでした。被害者には、自殺するような理由はなかったと断言しています。


② レイヴァートン=ウェスト・・・・ 野心的な青年政治家です。被害者のバーバラと婚約していました。


③ ユースタス少佐・・・・ 被害者であるバーバラが、インドで出会った青年です。1年ほど前から、ジェーンとバーバラの部屋に現れるようになりました。


 どうも、少佐は被害者の過去の愛人関係を理由にして、恐喝していたようです。そのトラブルから、少佐が犯行に及んだのでしょうか。ジャップ警部は、ユースタス少佐の身柄を確保します。


 以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。ホワイダニットものの傑作です。


―――――――――――――――――――――――――――――――












 ジャップ警部はじめ警察がユースタフ少佐(③)犯人説に傾く中、ポワロの灰色の脳細胞が活性化します。現場に残されたささいな遺留品から、ジェーン・ブレンダーリース(①)の知性に注目したのです。極めて聡明なお嬢さんでした。


 ユースタフ少佐が、被害者のバーバラを恐喝していたのは事実でした。ガイ・フォークス・ナイトの翌朝、知人宅から帰宅したジェーンは、ルームシェアをしている友人の自殺死体を発見します。ジェーンは、友人の幸せを破壊しようとした"あの男"を、決して許せませんでした。


 ジェーンは、左手に握られた拳銃を、右手に持たせます。そのあと、警察に連絡しました。そして、殺人犯=ユースタフ少佐に誘導していきます・・・・。


(追記) 短編につきましては、デアゴスティーニ社の「1話1巻」方式に不満を感じていますので、購入は差し控えています。場所を取るだけに、「2話1巻」方式で出してもらいたかったというのが本音です。


 なお、スーシェ主演でドラマ化された作品につきましては、短編についても、原作に基づき、以降順次取れ上げていくつもりです。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります「ブログ内検索」欄に「名探偵ポワロ」と御入力ください。