第4032回「名探偵ポワロ全集、第21巻、メソポタミア殺人事件、その2、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第4032回「名探偵ポワロ全集、第21巻、メソポタミア殺人事件、その2、ストーリー、ネタバレ」

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 第4032回は、「名探偵ポワロ全集、第21巻、メソポタミア殺人事件、その2、ストーリー、ネタバレ」です。ドラマは、深夜の発掘現場から始ります。ふたりの男が、ある取引を行っています。約束が違うのか、ひとりの男が怒り始め、もうひとりを絞め殺します・・・・。


 画面は変り、一台の自動車が荒野を走っています。乗っているのは、ヘースティングス大尉とポワロです。ヘーステイングスが、遺跡に案内していたのです。ポワロは、宿泊する部屋に案内されます。ただ気になるのは、蚊が出ることです。砂漠ですので、多くはないのですが、一匹でも気になります・・・・。


 話題は、昨日の殺人事件に及びます。被害者は、麻薬の売人でもあり、盗品の取引にも関係していた人物です。発掘チームのリーダーは、エリック・ライドナー博士です。ポワロの来場を祝して、記念撮影を取ります。さらに、その夜、会食が行われます。


 会食の場を取り仕切ったのは、ライドナー博士夫人のルイーズです。40歳前後の美人です・・・。ですが、その話し方を聞いていますと、敵も少なくないようです。その夜、早速トラブルが起きました。ルイーズが、窓から男の顔の"面"が、見えたと騒いだのです。最近、何度か驚かされたようです。その際、ラドニー神父は、発掘品の保管庫にいました・・・・。


 翌日、ポワロは発掘現場に行きます。ポワロはライドナー博士に語ります。「あなたと私の仕事は、よく似ています。いずれも、過去を掘り起こし調べることです。対象は死者・・・・」 ライドナー博士には、アン・ジョンソンという優秀な助手がいました。アンは、ルイーズに対する不満を洩らします・・・・。


 ルイーズは、ポワロに自分の過去を話します。ライドナー博士とは再婚でした。初婚の相手ボズナーは、スパイ罪で死刑宣告を受けました。ボズナーは、処刑直前に脱走に成功しますが、列車事故のため亡くなります・・・・。それ以降、ルイーズが男性と付き合い始めると、死んだはずのボズナーからのものらしい匿名の脅迫状が、送られて来るようになりました。


 ライドナー博士の結婚に当っては、一端途絶えましたが、再度送られてくるようになりました・・・・。筆跡は、ルイーズの字に極めてよく似ています。ルイーズ本人は、ボズナーの弟ウィリアムの仕業だと考えていますが、ポワロは何も語りません。


 発掘チームのの宿舎は、建物が中庭を取り囲む形になっています。建物自体が、城壁の機能も併せ持っています・・・・。そんな宿舎の一室で、ルイーズが殺されたのです。中庭を通らないと夫人の部屋には入れません。また、外部の仕業であるとすれば、門を通る必要があります。


 ですが、誰も門を通り、中庭を通ったものがいないのです。門の外には、数名の男たちがいました。中庭では、ラドニー神父と少年が作業していました。夫人の部屋には誰も入らなかったと証言します。夫人の殺された部屋の窓は、締め切られ、中から施錠されていました。窓からの進入も不可能です。


 第一発見者は、ルイーズの夫であるライドナー博士です。顔を持ち上げたが、遺体などは動かしていないと明言しています。直接の死因は、鈍器による撲殺ですが、凶器は発見されていません。ルイーズは、密室状況の中で、殺されました・・・・。


 ポワロの捜索活動が始ります。ポワロの捜査は、発掘チーム内に数々の波紋を引き起こしていきます。チームの一員であるマーカードが拳銃自殺したのです。ポワロは、精神的に不安定なマーカードは、麻薬中毒者だと推理していました。サソリだと称して、腕を捲り上げさせると、多数の注射痕が残されていました。


 マーカードは、遺書を残していました。アラブ人を殺したのは、自分だと書き残していました。さらに、博士の助手であるアンは、ルイーズ殺害にあたり、犯人の侵入方法が分かったポワロに告げたのですが・・・・。詳細を語ろうとはしません。博士が近づいてきたからかもしれません。


 その夜、アンは自室で悲鳴をあげます。水差しに入れてあった塩酸を、寝起きに飲んでしまったのです・・・・。アンは亡くなります。その頃、ラドニー神父は、仲間と一緒に逃亡していました。偽神父だったのです。ポワロの手が伸びることを予測しての逃亡でした。


 翌日、アンのベッドの下から、石臼が発見されます。石臼は、遺跡では多数発見されています。直径50センチ厚さ7センチほどの円盤です。中心に四角い穴があいています。複数枚使って、小麦を引いていたようです。アンの私室に置かれていた石臼には血痕が残されていました。ルイーズ殺しの凶器だと推理されます。


 アンが虫の息で、ポワロに話したのは"窓"でした。ポワロの顔に、光が射します。全員を一室に呼び集めます。以下、最後まで書きますのでネタバレになります。その前に、重要容疑者4名を列挙しておきます。なお、ポワロは、自殺したマーカードと偽牧師については、容疑者リストから外しています。


① ビル・コールマン・・・・ 明るく気さくな青年です。ポワロなどの送迎を含めて、気軽に雑用もこなしています。ボズナーの弟ウィリアムが、発掘現場に来ているとすれば、年齢的にはピッタリの人物です。ルイーズが殺害された時には、バグダッドにいたと証言しています。


② リチャード・ケアリー・・・・ 女性に人気のある中年男性です。ライドナー博士のパートナーであり、友人ですが、夫人のルイーズとは不倫関係にあったようです。ただ、ルイーズに対する嫌悪感を隠していません。複雑な人物です。ルイーズが殺された時には、発掘現場にいたと話しています。


③ エリック・ライドナー博士・・・・ ヒゲ面の発掘隊長です。殺されたルイーズを熱愛していました。事件当時は、ルイーズの私室の屋上で、発掘物の整理をしていました。屋上からルイーズの私室に行けば、外階段ですので、必ず牧師か少年の目に触れます。


④ フレデリック・ボズナー・・・・ ルイーズの初婚相手です。スパイ容疑で死刑宣告を受けましたが、逃亡中に列車事故で亡くなったとされています。ですが、殺されたルイーズは、脅迫状はボズナーが書いたものだと確信していました・・・・。果たして、ボズナーは生きているのでしょうか、生きていれば最大の容疑者です。


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 容疑者の中には、警視の娘のシーラという元気なお嬢さんもいれば、看護師のレザランも入っていますが、あっされポワロは否定します。ただ、ポワロの口調は、発掘チーム内の人間関係については辛らつです。ビル(①)の犯行でもなく、さらにケアリー(②)が犯人でもないと否定します。


 ポワロが言いたかったのは、全員にアリバイがありながらも、そのアリバイは確たるものではなかったということです。ライドナー博士(③)については触れず、フレデリック・ボズナー(④)こそ犯人だと指摘します。ボズナーは、列車事故で死んでなどいなかった・・・・、事故を利用して新たな人物に生まれ変わったとポワロは話します。


 凶器が石臼であったことは間違いありません。ルイーズの血痕が残されていたからです。ここで、ポワロは、アンの最後の言葉"窓"を指摘します。当時、ルイーズの部屋の外には、お"面"の男(?)が出現していました。その日も、面が現われたのです。日中ですので、上から吊るされている紐が見えます。


 ルイーズは、窓から首を出し、上を見上げます。その時、石が落下してきたのです。ルイーズの額を直撃します・・・・。石臼には、紐が通されていました。犯行後、石臼は紐によって回収されます。そして、犯人はルイーズの部屋に行ったのです。窓を閉め、血痕のついたカーペットを死体と共に移動させ、窓から遠ざけます。そして、第一発見者として人々をよびます・・・・。


 犯人ボズナーに該当するのは、当時屋上にいたライドナー博士以外には考えられません。ポワロは、アンのサジェスチョンによって、密室トリックを解明したのです。ライドナー博士は、ルイーズを熱愛していたことを告白します。ルイーズは誰にも渡さないと・・・・。犯行を自供したライドナー博士は連行されていきます。


(蛇足) ライドナー博士が、ルイーズに再接触したのは、列車事故から15年後のことでした。顔には皺が増え、顎ひげを生やしていました。そのため、ルイーズはボズナーだと気付かなかったという設定になっています。また、最初の結婚は、第一次世界大戦中であったため、ごく短期間であったとも、ポワロは指摘しています。


 この事件の期間中、ポワロはロシアの伯爵夫人に振り回されています。最後には、ホテルの宿泊費を支払わされる破目になっていました。ラスト、ポワロはヘースティングスに言います。「モナミ、このことについては、何も言ってはいけませんよ」、ポワロはペンギン・ウォークで去って行きます。


 密室トリックとしては、機械的密室と心理的密室の見事な融合になっています。好きな作品です。


(追記1) 感想につきましては、"その1"に書きました。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11070378519.html


(追記) デアゴスティーニ版「ポワロ コレクション」につきましては、順次ブログに書いていく予定です。過去のブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"ポワロ全集"と御入力ください。