第3967回「名探偵ポワロ全集、第20巻、鳩のなかの猫、その1、感想」 | 新稀少堂日記

第3967回「名探偵ポワロ全集、第20巻、鳩のなかの猫、その1、感想」

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 第3967回は、「名探偵ポワロ全集、第20巻、鳩のなかの猫、その1、ポワロが寄宿制女学校に潜入?」です。全65巻で敢行予定されているデアゴスティーニ版ポワロ全集も、本巻で20巻となります。ほぼ1/3なのですが、長編を優先出版していますので、私の興味は、2/3ほど満たされていると思います。


 長編の刊行が終了した時点で、短編の刊行に踏み切るようですが、どうも短編も1冊1話で出版するようです。そうなりますと、私は買おうとは思いません。商業倫理としては、短編2話を1冊として敢行すべきです。そうしないのであれば、値下げすべきです。


 そう言いながらも、長編は10篇ほど残されています。当面、刊行順にしたがい、ブログで取り上げていきたいと考えています。


 本作は、1959年に発表されたクリスティの同名小説をドラマ化したものです。デビッド・スーシェ主演のドラマ・シリーズは、1930年代を舞台とすることをドラマ・コンセプトの中心に据えています。そのため、設定に細かい変更が加えられています。


 『 中東の王国で起きた革命騒ぎのさなか、莫大な価値をもつ宝石が消え失せた。一方、ロンドン郊外の名門女子校、メドウバンクにも事件の影が忍び寄る。新任の体育教師が何者かに射殺されたのだ。ふたつの謎めいた事件の関連は?女子学生の懇願を受けて、ついに名探偵エルキュール・ポアロが事件解決に乗り出した。 』(文庫カバーの作品紹介から)


 原作が書かれた前年(1958年)には、イラク革命が起きています。明らかに、"ラマット"はイラクをモデルにしていますが、ドラマでは中近東としながらも、インドをイメージさせる王女が登場します・・・・・。


 そして、最大の違いは、原作では、ポワロは物語の終盤に登場し、あっという間に解決に導きます・・・・。一方、ドラマでは、校長の招聘により、当初から女学校に滞在するという設定になっています。このため、読んだイメージと、観た印象とは大きく異なるのではないでしょうか。


 このシリーズの特徴は、アガサ・クリスティへのリスペクトが原点にあります。ドラマによっては、原作に大きく手が加えられています。それでも、原作が放つ独得の雰囲気は失われていません。1930年代は、ポワロが、最もポワロらしくありえた時代ということでしょうか・・・・。


 鳩の中の猫は、実に凶暴です。そして、猫だけでなく、鳩の群れの中には、ポワロもいました・・・・。次回、ドラマ版に従い、ストーリーを書く予定です。ラストのエピソードは、実に楽しい内容になっています。