第3826回「名探偵ポワロ全集、第17巻、白昼の悪魔、その2、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第3826回「名探偵ポワロ全集、第17巻、白昼の悪魔、その2、ストーリー、ネタバレ」


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 第3826回は、「名探偵ポワロ全集、第17巻、白昼の悪魔、その2、ストーリー、ネタバレ」です。本作の映画化作品である「地中海殺人事件」につきましては、既にブログに書いています。ドラマでは若干設定が変えられていますが、再掲いたします。原作のキャラクター設定との違いにつきましては、文末に記します。


 冒頭、ヒースの生い茂る荒地で、ひとりの女性が殺されます。ヒッチハイカーが発見します。場面は変わり、ポアロ(ピーター・ユスティノフ)は、荒地での殺人事件にかかっていた生命保険に関する調査と、損害保険に関する依頼を受けます。偽造ダイヤに保険が掛けようとした富豪ホレイス卿の内偵を頼まれます。ポワロは、地中海でクルージングを楽しむ富豪に会いにいきます。ポワロの気分は、リゾート半分、仕事半分です。富豪は、ブロードウェイ女優のアルリーナがすり替えたと主張します。


 ポワロと富豪は、アルリーナが滞在する地中海のリゾート・アイランドに向かいます。ここで、主要登場人物を紹介します。


①    ホレイス卿(男、富豪)

②③④ アルリーナ(女、女優)、ケネス (男、アルリーナの夫)、リンダ (女、ケネスの娘、いまだ少女)

⑤    ダフニ(女、ホテルのオーナー)

⑥⑦  オデル(男、舞台劇のプロデューサー)、マイラ (女、オデルの妻)

⑧    レックス(男、作家)

⑨⑩  パトリック(男、ラテン語教師)、クリスティン(女、パトリックの妻)

そして、われらがポワロです。


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 映画は、リゾート生活を描いていきます。そして、アルリーナに対する恨みも、描いていきます。ホレイス卿は、アルリーナにダイヤを奪われています。アルリーナは浮気性で奔放な女性です。教師のパトリックは、アルリーナに積極的に接近しています。妻のクリスティ、亭主のケネスが面白い訳はありません。


 ホテルのオーナー・ダフニは、ブロードウェイ時代の確執が消えていません。アルリーナは、オデル(夫妻)の要求するブロードウェイ復帰も、作家レックスが書きたいとする伝奇も拒否しています。いまだ少女のリンダにも、継母であるアルリーナへの恨みはあります。


 そして、各人がリゾート生活をエンジョイする中、惨劇が起きます。サンタン中のアルリーナが、絞殺されたのです。容疑者は、ホテルの宿泊客全員とホテルのオーナー、全員にアリバイがあります。犯行時間は、午前11時30分から12時まで。はたして犯人は・・・・。


 サンタン中のアルリーナの遺体を発見したのは、 パトリックとマイラです。ボートで楽しんでいた際、湾内のビーチで見つけます。アルリーナは、大きな日よけ用の帽子で顔を覆っています。マイラがモーターボートで、ホテルに緊急を伝えるため、帰っていきます。


  犯行時間は、11時30分から12時まで。ポアロの調査が始まります。リンダとクリスティンは、アルリーナが一人でサンタンしていた湾とは反対側のビーチで、スケッチをしていました。クリスティンは、リンダに時間(12時5分前)を確認し、約束があるため、急いでホテルに帰ります。レックスは、当時足漕ぎボートで海上におり、泳いでいたリンダと、12時過ぎに出会います。足漕ぎボートですので、アリバイ作りのための時間調整は無理に思えます。


 ダフニは、従業員とミーティングをしていました。その際、ケネスがタイプをしているのと、オデルが庭で読書をしているのを目撃しています。ホレイス卿は、着いたばかりだということです。一応、9人全員のアリバイが成立しているように思えます。


 ここまで観て(「白昼の悪魔」を読んで)、次の疑念が生じます。

① 遺体発見時、マイラは死を確認せぬまま、現場を離れます。アルリーナが死んでいなかったとの推理も成り立ちます。マイラが去った後、パトリックが絞殺した・・・・。しかし、この説には、なぜアルリーナが目覚めなかったのかという疑問が残ります。睡眠薬でも投与したのでしょうか。

② クリスティンはリンダに時間を確認しますが、事前に時計の針をいじっていたのでは・・・・。

③ 足漕ぎボートで海上を楽しんでいたと言うレックスは、途中モーターボートから乗り換えたのではないか。その際、レックスは崖からビンが降ってきたと証言します。

④ ホレイス卿は、事件後着いたとしていますが、本当か。後で、嘘だと分りますが、アリバイは成立します。

⑤ ホテルのオーナー・ダフニが証言した、ケネスとオデルのアリバイ証言は本当か。ダフニは、ケネスとオデルをかばっているのではないか。


 いろいろな推理が成り立ちます。ポワロは、9人全員をロビーに集めます。従業員の犯行ではありません。では、犯人は・・・・。以下、完全にネタバレです。


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 ポワロは、ずばり犯人を指摘します。パトリックとクリスティン夫妻の共犯だと指摘します。犯行を説明します。クリスティンは、事前にリンダの腕時計を20分はやめておきます。そして、島の反対側に位置するアルリーナを鈍器で殴打し昏倒させます。そして、アルリーナを洞窟に隠し、自らはアルリーナに扮します。アルリーナはまだ死んでいません。


 パトリックとマイラが乗ったボートが来ます。パトリックは、アルリーナが死んだとマイラに告げます。女性であるマイラは現場に残ることを嫌がり、事件を告げにホテルに戻ります。マイラは、横たわっているのが、アルリーナだと思っています。


 マイラが去ったのを確認したパトリックとクリスティンの夫婦は、アルリーナを洞窟から出し、パトリックが昏倒している彼女の首を絞めます。2人の動機は、アルリーナがホレイス卿から奪ったダイヤモンド・・・・。


 ポワロの話を聞いていたパトリックは、哄笑します。どこに証拠があるのだと・・・・。ポワロには、証拠がなかったのです。2人は、ホテルを出て行くといいます。2人は、着がえて降りてきます。クリスティンは、あでやかなファッションに身を固め、一同を、特にポワロを嘲笑します。ホレイス卿は激怒します。殺人事件の解決も、ダイヤも戻らなかったと。


 パトリックは、チェックアウトのため、小切手にサインをします。これこそ、ポワロの待っていた証拠です。荒地の殺人が繋がってきます。映画冒頭の荒地での殺人事件の第一発見者であったヒッチハイカーとは、クリスティンだったのです。そして、クリスティンによりアリバイを得たパトリックが妻を殺し、保険金を詐取したと・・・・。証拠とするには、少し弱いエンディングでした。もちろん、パトリックは、クリスティンにも保険を掛けています。


(補足) 原作との大きな違いとして、『ガードナー夫妻が登場しない、マーシャル夫妻の娘リンダが「息子、ライオネル」になっている、ヘイスティングス、ミス・レモン、ジャップ警部らが重要な役回りを演じる、など原作との相違が見られる。』(ウィキペディア)


(追記) デアゴスティーニ版「ポワロ コレクション」につきましては、順次ブログに書いていく予定です。過去のブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"ポワロ全集"と御入力ください。